以前、どこからか憑いてきていた、若い軍人さんの霊が、部屋の片隅にいました。
私が話し掛けても、何も答えてくれず、黙ってそこに立っているだけでした。
私も、特に気に留めず、いつか勝手にどこかへ行くだろうと思っていたのですが、一か月が経ってもいるのです。
何かを伝えたいわけでも無さそうだし、何でいるんだろうと不思議に思っていました。
たまたまご飯を炊き過ぎた日があり、握り飯を作り置きしようと作りました。
普段は、霊に感情移入はしないのですが、その日は何となくお供えをしてあげようと思い、握り飯と、お椀にお味噌汁を入れ、軍人さんが立っている傍へ置いてみました。
しかし全く手をつけようとしません。
暫くして、私がその場から離れ、別の部屋で用事をしていました。
すると隣の部屋から、物音が聞こえ始め、ソッと覗いてみると、その軍人さんは、座り込み、涙を流しながら、ガツガツと握り飯を食べてくれていました。
人に見られていると食べにくいのか、軍人としての規律があるのか分かりませんが、遠慮をしてたんですね。
食べ終わった頃を見計らい、私が食器を片付けようとした時、その軍人さんが、「ありがとう」とすっきりとした顔をして、光に包まれ成仏していきました。
人は、「人生最後に何が食べたい?」と聞かれると、「ハンバーグ」「焼肉」など好物は言わず、「お茶漬け」や、「白いご飯と漬物」など、シンプルな食べ物を言う人が多いです。
軍人さんも、きっとシンプルにご飯とお味噌汁が嬉しかったようです。
霊に同情は禁物ですが、今回は、結果良ければ全て良しでもいいかなと思える出来事でした。