初めての海外
信仰とは何か?
人は、自分たちが信仰する神様を信じ、崇め、時には宗教戦争まで発展します。
そこまで人間を駆り立てる神様愛は、いったい何なのか?
日本人は、海外ほど信仰心は無く、とりあえずご先祖の代から、この宗派に入っているから入っておこうという人が多いです。
中には無宗派の方も、たくさんいます。
それならば一度、神の住まう土地、タイへ行ってみようと思い、まずはパスポートを取り、飛行機のチケットも取りました。
両親も心配するので、タイでの宿泊先も予約し、出発しました。
私にとって、海外は未知の世界で、行くのは初めてです。
バックパッカーのように、大きなリュックサックには必要最低限の荷物だけ入れ、旅立ちました。
両親は、せめてもと関西国際空港まで見送りに来てくれました。
昔は、病院へ行くだけでも、一人で行くのが怖かった私が、初めての海外を一人で行くなんて、両親も想像していませんでした。
これが出来たのも、添乗員の経験をしたからだと、今では感謝しています。
空港で、両親と別れ、まずはモノレール?
まさか空港内に電車が走っているとは、思ってもみませんでした。
万が一、飛行機を乗り間違えてら、ポジティブに考え、戻って来たら良いやと思い、出発しました。
飛行機の中でも、車内販売?
感心していると、全て無料!?
何て素晴らしいのでしょうと驚いてました。
私が眠っていると、スチュワーデスさんが、タオルケットを掛けてくれたりと、至れり尽くせりで、すごく親切にして下さいました。
無事、タイへ到着し、まずは荷物も置きたいので、ホテルへ直行し、暫し休憩。
それからは、地図を片手に、一人あちこちの寺院を巡りました。
日本のお寺も、建築など凄いですが、タイの煌びやかな寺院にも感動です。
どこの寺院へ行っても、地面に這いつくばり、お祈りを捧げる人達を目にします。
どの人も、生活の一部のように、慣れた動作で祈っています。
トゥクトゥクに乗っていても、信号待ちしているだけで、花売りの人がやってきて、運転手は当たり前のように、それを購入し、バックミラーへ掛け、手を合わせてお祈りします。
タイの人達は、どこへ行っても、どの人も信仰深く、生活の中に、いつも感謝の気持ちが存在しているのだと感動しました。
私が行った時期が、雨季の季節だったので、突然のスコールは当たり前。
その日の夕方、私が屋台でジュースを買っていると、突然のスコールがやってきました。
これも名物の一つかなと、軽い気持ちで雨宿りしていると、日本でも見た事が無いくらい、激しい稲光が走りだし、壁に穴が空くのを目の前で見ました。
タイでは、日本で起こる普通の自然災害が、命取りになるくらい激しいのだと知りました。
暫く避難していると、小雨になってきたので、空を見上げると、日本では狐の嫁入りだったのかなと思うくらい、綺麗な晴天が見えてきました。
あまりの綺麗さに、暫く地面に腰を下ろし眺めていると、中学生くらいの男の子が一人、私の傍へやってきて、何やら話し掛けてきます。
私は日本語以外、話せません。
意味が分からず、首を傾げていると、その男の子は、自分の持っていた、コッペパンを半分に割り、私へ差し出してきたのです。
私は思わず、受け取りました。
え?もしかして私、浮浪者に間違われた!?
確かに綺麗な恰好ではありません。
服装もジーパンにTシャツ。
反対にタイの街中を歩いている女性は、赤いスーツを着た人など、綺麗な恰好をしているのに気が付きました。
私は、覚えたての言葉で、「コップンカー」(ありがとう)と返しました。
男の子は、ニコニコと笑顔で去って行きました。
私は、手にあるパンを眺めていました。
その男の子も、決して裕福とは言えない、汚れた服を着ていました。
しかも半分に千切るという事は、一つしかない貴重なパンだったに違いないのです。
自分もお腹が空いていてるにも関わらず、その貴重なパンを、私がお腹を空かせ座り込んでいると思い、半分も分け与えてくれたのです。
私は、涙が止まらなくなりました。
私は、タイまで来て、やっと気が付いたのです。
本当の神様は、人の心の中に住んでいるのだと。
どんな素晴らしい建築のお寺があっても、どんな煌びやかな建物があろうと、神は、その建物に存在するのでは無く、人の心を寝床として住んでいるのです。
私は、日本へ帰る事にしました。
帰りのタイの空港で、私は喉が渇き、コーラを注文しようと、黒人の店員さんに「コーク、プリーズ」と必死に伝えると、始めは「Why?」と返されました。
日本語しか分からない私は、言い換える事も出来ません。
困りながら、もう一度ゆっくりと、「コーク、プリーズ」と言うと、「Oh!コカ・コーラ♪」とご機嫌に返してくれました。
何だ~コカ・コーラで通じるんだと、何だか恥ずかしくなりました。
やっとの思いで注文出来たコーラを片手に、重い大きなリュックを背負い、ゲートまで向かっていると、今度は、日本の大学生風のような二人組の女の子が声を掛けてきました。
しかも片手に辞書を開いています。
必死にタイ語で話してくるのですが、「私、日本人です」と言うと、「良かった~」と笑顔で返されたものの、何とも複雑な気持ちです。
度々ハプニングには会いましたが、タイへ来れて本当に良かったと思えた旅でした。