当局と旅役者の関係は相変わらず悪化の一途を辿るばかりだったが、何事も人は環境に順応する能力を持っている。
官憲も人の子である。
日々同じ場所で一定の時間を過ごし、観客に情熱の全てを傾け思いの丈をぶつける役者たちの渾身の演技は傍らで監視を続ける憲兵らの感情にも少しづつ変化を与えた。
悲しい物語には時に鼻をすする仕草を見せ、
粗忽者の失敗には肩を僅かに震わせて笑いを堪えているのが見てとれた。
いつも警戒し釣り上げていた眉が下がり、強張っていた口元が緩くなっていく。
こうなったらしめたもんである。
役者のターゲットは前の観客ではなく、斜め向かいの審判員だ。
ちょっとづつ、確実に照準を絞り、憲兵へのイジリ攻撃の手を緩めなかった。