昭和19年東京大空襲が激化する直前、利三太は九州の各地を転々としていた。
この頃は若者はほとんど戦地に取られ、なおも不足している兵士を補う為40代以上の健康的な男性も次々と招集されていた。
定住せず、移動を続ける利三太はそのおかげ(?)か、招集令状の網の目をかいくぐってきた。
しかし何処の地も"よそのもの"であるため人情は希薄であった。
ある芝居小屋では開演中突然空襲警報が鳴り響いた。客も憲兵も一斉に近くの防空壕に避難を始めた。
一座の座員たち数人と壕へとむかうが皆が我先にと押しかけてすぐにいっぱいとなってしまう。
やっと見つけて入ろうとするとあとからやってきた兵隊が「ここは定員になった。お前たちは別の所に行け」と追い出された。
利三太は「あんた達こそ他所にいけば人数が確保できるじゃないか」と、抗議した。
が、「俺等は国民を守るため壕には最低でも一人は番をする必要がある。
お前たちゃ他所モン「よそもん」の旅役者じゃろが!
こん非常時に国の為に糞の役にもたたん非国民が!早く外へ出んか!」
利三太は家族を連れて外へ出るしかなかった。
歯を食いしばり耐えることだけが武器だった。
俺(おい)達が間違うとっか、おまい達が間違うとっか、今んま(いんま)見とれ!