高校生を対象にしたアートセミナー「大阪芸大 Art lab. 特別工芸セミナー」が、10月17日と18日の2日間、開催されました。参加した高校生らは工芸学科の4コースの学びを体験し、ものづくりの楽しさを体感していました。<伊藤 望、狭間 翼、古川知樹、木下由翔>

(写真:金属工芸コースの様子)

 10月17日と18日に行われた第2回「大阪芸大 Art lab. 特別工芸セミナー」は、芸術に関心を持つ高校生などを対象に、美術館や博物館、ギャラリーなどと連携して、見学や制作体験を行う今年度から始まった特別セミナーで、4月に続いて今回で2回目です。
初日は大阪高島屋で日本伝統工芸展の鑑賞ツアーが、2日目は大阪芸大キャンパスでワークショップが行われました。

 2日目に行われたワークショップでは、金属工芸、陶芸、ガラス工芸、テキスタイル・染色の4グループに分かれ、各コースの教室で作品制作を体験しました。
時間をかけて作品制作に取り組み、教授陣による講評の時間も設けられ、大学の授業に近い体験講座になりました。

 各コースに分かれ、まずは教授や学生らによるデモンストレーションが行われました。
ガラス工芸では高温の酸素バーナーを使って、硬質ガラスを曲げて成形するバーナーワークによるとんぼ玉の制作実演や、熱を使わずに整形するコールドワークの「切子」で器に模様をつける技法などを披露し、高校生たちは興味深そうに見入っていました。
 制作体験では「コンテナ」を課題に、中に入れたいもの、運びたいもの、保管したいもののコンセプトを考え、スケッチ。
「木を軸にして氷を枝葉にしたい」「バーナー溶接するのもいいなぁ」などと、教授や学生たちと表現方法を話し合いながら、粒状のガラスや、板、棒など、好きな素材を選び、入れ物として各自が製作したガラス容器にあしらっていました。
 ガラス工房では、電気焼成炉を使った本格的な制作にもチャレンジ。教員や学生らの熟練の技術を見ながら、熱したガラスに息を吹き込むなどして、一つの作品を完成させました。


(写真:電気焼成炉を使った本格的な制作を体験する高校生)

 金属工芸コースでは違う金属同士を接着して一つの作品を作る、切り嵌め象嵌(きりはめぞうがん)の技術を用いた、オリジナルブローチの製作が行われました。
 ナマケモノや蛾など、各々の考えたモチーフを描き、図柄の通りに、糸ノコや金属用のヤスリを使って金属を切断し整えます。
ろう付けをして、バーナーで熱し、金属同士を接着させます。
最後にやすりがけなどをして仕上げると、それぞれのモチーフがひとつのブローチになりました。


(写真:バーナーを使い接着させている様子)

 陶芸コースでは、壺とタコをテーマに作品制作に挑戦。
それぞれの思い描いたアイデアスケッチを元に、まず電動ろくろを使って粘土で壺を制作。手びねりの製法で作ったタコを壺に接着させると、生き生きとした、壺とタコをテーマにした作品が完成していました。


(写真:筆を使い造形をしている様子)

 テキスタイル・染色コースでは、バンダナを好きな模様に染める、「藍染」の制作を体験。
染めたい絵柄を描いた紙を切って作った型紙を、バンダナに敷いて、溶かしたロウで防染していきます。
 防染が完了すると、藍の染料でバンダナを染めて完成。初めて藍染を経験した経験した高校生らは目を輝かせていました。


(写真:染色を行っている様子)

 ガラス工芸コースに参加した高校3年生(大阪府内から参加)は「吹きガラスはもっと時間がかかるのかと思ったが、案外早くできるんだなというところが印象に残りました」と話していました。

 学校の美術科の授業で最近立体作品を作る機会があったという高校1年生(同)は「金工に興味が湧いた。最初赤色だった銅が薬品で色が黒に変わったその瞬間がすごく感動した」と、金属工芸コースならではの作品制作の楽しさを感じていました。

 高校1年生(同)は、陶芸コースに参加した印象を、「先生の作品はタコの足が特別な感じになっていて、生物の特徴を一点だけ出すことが大切ということを学びました。実際にみんなと作業ができたことと、先生方の作品を見られたことがとても楽しかったです」と話し、体験セミナーを通して新たな学びを得ていました。

 テキスタイル・染色コースで製作した高校1年生(同)は「染める体験は初めてだった。新しいことができて楽しかったし、大阪芸大に初めて来ましたが楽しかったです」と、大学という新たな世界を体験して満足した様子でした。

 私は何がやりたい、何が好きだというのを見つけるのが今日の講座だったという、工芸学科長の山野 宏さんは、「⽣徒のみなさんの顔を⾒ていると楽しそうにやっているかなと感じた。創作というのは自分がやっていて楽しい、やりたい、というのが根本なので、そこを大事にしてほしい。ものづくりを通して楽しい人生につなげていってほしい」と話しました。

 作品制作終了後には各コースで講評が行われ、完成した作品を元に教授や学生たちがアドバイスや感想を語り合っていました。


(写真:ガラス工芸コースで行われた講評の様子)