レヴィーンのショパン《ノクターン》Nr.3 Op.9-3
Frédéric François Chopin
Fryderyk Franciszek Chopin
《Nocturne》Nr.3 H-Dur Op.9-3
今日採り上げるのは、ショパンの《ノクターン》第3番 ロ長調 作品9-3です。
此の曲は、ポーランドの作曲家フレデリック・ショパンが1831年に作曲し、翌1832年に出版が為されたピアノの為の夜想曲で、プレイエル社の社長夫人でベルリオーズの元婚約者のマリーに獻呈されています。
ショパンのノクターンの中で初めて明瞭な中間部の展開を試みた作であり、作曲技法の成長が見られると共に、夜想曲の中では數少ない明るい曲想の作品であもあります。
樂曲は、ロ長調、アレグレット、8分の6拍子の複合三部形式で書かれていて、
右手はシチリアーノのリズムで始まり、左手はオクターヴの單純な伴奏で、作品9の他の作品と同樣に右手の装飾音附きの變奏が繰り返されるだけと成っています。
其の後、2分の2拍子のロ短調、アジタートに移行し、左手は3連符の組み合わさった音形で、右手はシンコペーションを取り入れた轉調の多い旋律と成っています。
軈て再び最初の主題が現れ、リゾルートの後は非常に華やかな半音階下降音形のコーダで曲が閉じられます。
今日紹介させて頂くのは、ヨーゼフ・レヴィーン(1874.12.13 - 1944.12.02)のピアノ獨奏で行われたセッション録音です。
ウクライナの音樂家の家庭に生まれたユダヤ系ロシア人ピアニストで、20世紀前半に活躍し、ゴドフスキーやホフマン、ローゼンタール、ラフマニノフと並んで完全無欠のテクニックを誇ったジョセフ・レヴィーンの演奏スタイルは、史上最高クラスの完成度を誇り、其れは技術的な事だけでなく其の貴族的で格調高い纖細な音樂性と素晴らしい品の良さに由りあらゆる作品で高水準の演奏を聽かせてくれます。非常に情熱と冷静さのバランスが良く、技術的な苦勞は微塵も感じさせず、難曲を難曲として聽かせないピアニズムは、時に狂おしい程に情熱的なホフマンや常に冷静沈着なラフマニノフの演奏とは一線を劃したもので、より凄みを感じさせます。そして、豪快な演奏でありながらも、荒っぽくてやたらとガンガン彈きまくるショパンで無い事は確かです。
因みに、レパートリーは廣かった樣なのですが、レヴィーン自らが録音に積極的では無かったが為に、殘された録音が稀少であるのが殘念でなりません。
演奏メンバーは以下の通りです:
Josef Lhévinne (Klavier)