ストコフスキーのプロコフィエフ《シンデレラ》

 

Sergei Sergejewitsch Prokofjew

Сергей Сергеевич Прокофьев

«Золушка»

Cendrillon

"Cinderella” Suite Op.107-109

 

 

  今日採り上げるのは、プロコフィエフの《シンデレラ》組曲です。

 

  《シンデレラ》は、ロシアの作曲家セルゲイ・プロコフィエフがフランスの詩人シャルル・ペローの童話集の中の童話である『シンデレラ』に基づき作曲したバレエ音樂及び其れを用いたバレエ作品で、其のバレエ音樂からプロコフィエフ自らに由って3つないし4つの管弦樂組曲及び3つの獨奏用組曲其の他が編まれています。

 

  1940年、《ロメオとジュリエット》の成功を受けて、キーロフ劇場からプロコフィエフへの作曲依頼が為されたものの、ドイツの蘇聯侵攻やオペラ《戰爭と平和》の作曲に由って作業が中斷を餘儀無くされ、完成は1944年、初演は1945年迄ずれ込んでしまいます。

  そして、1945年11月21日、モスクワのボリショイ劇場で初演が行われて大成功を收め、プロコフィエフは1946年に交響曲第5番、ピアノソナタ第8番等と併せてスターリン賞を受けています。

 

  バレエ音樂《シンデレラ》作品87は、《ロメオとジュリエット》と同樣に、複數のライトモティーフを用いた場面描寫や登場人物の性格描寫が行われている其の一方で、《ロメオとジュリエット》と比較して劇的な要素の少ない脚本と謂う事も有って、プロコフィエフはチャイコフスキーの系譜を繼ぐ形で、「踊りの要素で滿たされた」、クラシック・バレエの傳統を意識した作曲を行っているが故に、抒情的なナンバーが多く、パ・ド・トゥ、ヴァリアシオンが多く配置され、亦たガヴォット、パスピエ、ブレー等の古風な舞曲が複数含まれています。

  尚、此のバレエ音樂 作品87に關しては、後日改めて別篇にて採り上げさせて頂く預定です。

 

  上述の通り、此のバレエ音樂《シンデレラ》作品87を基に、プロコフィエフは3つの組曲を編んでいる以外に、他の作品からの樂曲をも交えた《ワルツ組曲》をも編んでいて、バレエの初演から間も無い1946年から1947年に掛けて相次いで初演が為されています。そして、《ロメオとジュリエット》の場合と同樣に、バレエ全曲から只單に曲を拔き出すのではなくして、曲順の配列や各曲の構成、オーケストレーションが大幅に變更されています。

 

  3つの演奏會用組曲の内容は以下の通りです:

《シンデレラ》組曲第1番 Op.107

1946年11月12日、モスクワでスターセヴィチの指揮により初演。

  1. 導入部(序曲)
  2. ショールのステップ(パ・ド・シェール)
  3. 義姉たちの喧嘩
  4. 仙女のお婆さんと冬の精
  5. マズルカ
  6. 舞蹈會へ赴くシンデレラ
  7. シンデレラのワルツ
  8. 真夜中

《シンデレラ》組曲第2番 Op.108

  1. 舞蹈會を夢見るシンデレラ
  2. 踊りのレッスンとガヴォット
  3. 春の精と夏の精
  4. ブレー
  5. 宮廷のシンデレラ
  6. ギャロップ

《シンデレラ》組曲第3番 Op.109

1947年9月3日、モスクワでスターセヴィチの指揮により初演。

  1. パヴァーヌ
  2. シンデレラと王子
  3. 3つのオレンジ
  4. 南國(誘惑)
  5. 東洋
  6. 王子とシンデレラの再會
  7. 緩やかなワルツ
  8. 愛を込めて

ワルツ組曲 Op.110

1947年初演。第2、4、6曲が《シンデレラ》から取られてれています(バレエ版の「グラン・ワルツ」「緩やかなワルツ」「舞蹈會へ赴くシンデレラ」)。尚、第1、5曲はオペラ『戰爭と平和』第4幕と第2幕から、第3曲は映畫『レールモントフ』の為に書かれた音樂から取られていて、題名通りにワルツばかりが集められています。

  1. 出逢った時から
  2. 宮殿にて
  3. メフィスト・ワルツ
  4. お伽話の終わり
  5. 大晦日の舞蹈會
  6. 幸福

 

  今日紹介させて頂くのは、レオポルド・ストコフスキーの指揮するニューヨーク・フィルハーモニー交響樂團に由り1958年に行われたセッション録音です。

 

  因みに、上述の3つ乃至4つの演奏會用組曲は、纏まった形での演奏よりも寧ろ其れ等の中から拔粹して為されるケースが多い樣で、茲に紹介させて頂くストコフスキーの拔粹に由る演奏は以下の樣な構成と成っています:

 

  1.春の精と夏の精(組曲第2番 Op.108 の第3曲)

  2.舞蹈會へ赴くシンデレラ(組曲第1番 Op.107 の第6曲)

  3.宮廷のシンデレラ(組曲第2番 Op.108 の第5曲)

  4.シンデレラと王子(組曲第3番 Op.109 の第2曲)

  5.シンデレラのワルツ、真夜中(組曲第1番 Op.107 の第7曲と第8曲)

  6.愛を込めてー終曲(バレエ音樂 Op.87のフィナーレ)

 

  茲でも案の定、ストコフスキーならではの聽かせ上手な演奏を滿喫できます。

 

  演奏メンバーは以下の通りです:

 

  Leopold Stokowski (Dirigent)

    New-Yorker Philharmonisches Symphonie-Orchester

 

(1958)

 

  ※ ジャケットにはニューヨーク・スタジアム交響樂團と記載されていますが、此れは覆面オーケストラで、實體はニューヨーク・フィルであるとされています。