チェリビダッケのルーセル 《組曲 ヘ長調》Op.33

 

Albert Roussel

Suite en fa》Op.33 L.39

 

 

  今日採り上げるのは、ルーセルの《組曲 ヘ長調》作品33 L.39です。

 

  此の曲はフランスの作曲家アルベール・ルーセルが1926年に作曲した管弦樂の為の組曲で、日本語では《ヘ長調の組曲》や《管弦樂組曲 ヘ長調》とも標記されます。

 

  1926年にセルゲイ・クーセヴィツキー及びボストン交響樂團からの委囑に由って作曲が為され、極短期間で完成されています。

  初演は翌1927年の1月にボストンでクーセヴィツキーの指揮する同交響樂團に由って行われ、そしてパリに於ける初演も同じくクーセヴィツキーが指揮を擔當しています。

  

  第一次世界大戰後のヨーロッパの藝術思潮は新古典主義に向かっていたが為に、ルーセルも其れに影響されて此の組曲を作曲してはいるものの、自らの藝術的本性を生かす事を目的として書かれています。

  樂譜は同年にデュラン社から出版され、同時に委囑者であるクーセヴィツキーに獻されています。

 

  樂曲は以下の3曲から為るものです:

 

  第1曲 前奏曲 Prélude

    ヴァイオリンとヴィオラの齊奏で主要主題が呈示され、性格的にはパスピエ舞曲を思わせる輕快な者と為っています。

 

  第2曲 サラバンド Sarabande

        主題がサラバンド固有のリズムとアクセントを伴い、バロック舞曲の面影を留めています。

  第3曲 ジーグ Gigue

    ニ短調の序奏で始まり、ヘ長調の主部に成るとロンドの樣に發展するものの、全體は寧ろむしろ輕い音樂に仕上がっています。

 

 

  今日紹介させて頂くのは、セルジュ・チェリビダッケの指揮するミュンヒェン・フィルハーモニー管弦樂團に由り1990年9月20日と22日に行われた演奏會におけるライヴ録音です。

 

      チェリビダッケの手に掛かると、ルーセルの構築性がルーセルの意圖其の儘に完璧に再現されているのではないかと覺えるのですが、餘りに完璧過ぎて小さな組曲には聽こえず、立派に組み上がった交響曲の樣に想えて來ます。

  ルーセルの旋律と謂うのは、本来諧謔的でキッチュな魅力に滿ちている筈であるのに、チェリビダッケは其れをすっかり灰汁拔きにしてしまっていて、其れが却って何處かに武骨さを殘している感が有るのを否めません。惟、斯う迄立派に遣られると、天晴れとしか云い樣が無く、就中第1曲と第3曲の律動は決してドイツ的な重さを感じさせない潑溂として前進する力と漲る氣合を透明で且つ美しい響きに託していて、ついつい其の美しさに醉い痴れてしまうというのが本音です。

  惜しむらくは、些か説明的過ぎると謂うのが難點で、フルトヴェングラーに私淑していたベルリン時代の樣に、もう少しすっきりとしたテンポでリズムの切れが有った方が良かった氣がします。

 

  演奏メンバーは以下の通りです:

 

  Sergiu Celibidache (Dirigent)

    Münchner Philharmonisches Orchester

 

(1990.09.20&22 Live-Aufnahme)