セバスティアンのラロ 《ナムーナ》Nr.1&Nr.2
Édouard Lalo
《Namouna》Suite Nr.1&Nr.2
今日採り上げるのは、ラロの《ナムーナ》組曲 第1番及び第2番です。
《ナムーナ》は、フランスの作曲家エドゥアール・ラロの作曲に由るバレエ作品です。
此の作品は、1879年にオペラ座の総裁に就任した作曲家ヴォーコルベイユ(Auguste-Edouard Vaucorbeil 1821年‐1884年)からの依頼で、1881年11月から1882年2月までの4ヶ月間で作曲されたもので、其の間、ラロは過勞が原因で倒れてしまい、第2幕のオーケストレーションに就いて、グノーの助言を貰い乍ら、何とか期日通りにプロローグ附きの2幕3場の全曲を完成させています。
初演は、オペラ座に於いて1882年3月6日に、シャルル・ニュイッテルの臺本、リュシアン・プティパの振附、利他・サンガッリ、ルイ・メラントの主役に由り行われています。初演當時、未だ19歳であったドビュッシーは《ナムーナ》を「色彩とリズムの最高傑作」と高く評價し、餘りに夢中に成り過ぎて劇場で騷ぎを起こしが為に退場處分と成ったと云います。併し、バレエ自體は成功せず、主役がラロの音樂を嫌ったと謂う事も有っての故か、僅か15回の公演の後、演目から外されてしまったそうです。
原作はカサノヴァ傳説に基づくミュッセの詩で、ギリシャのイオニア海に浮かぶコルフ島が舞臺と成っています。
物語の粗筋は以下の樣なものです:
プロローグ
コルフ島の賭博場。アドリアーニとオッタヴィオは賭けを行うが、アドリアーニは勝利の女神に見放され、ことごとく負けてしまう。とうとう自分の持ち船と秘蔵の女奴隷ナムーナを賭けるが、それでも負けてしまい財産を失う。だが、オッタヴィオはナムーナを奴隷の身から解放しただけで、賭けで得た残りの財産は全てアドリアーニに返却して鷹揚なところを見せる。それにもかかわらず、アドリアーニはオッタヴィオに対して恨みを持つ。
第1幕
コルフ島の朝の広場。オッタヴィオが許婚であるヘレナと一緒に窓辺でセレナードを歌っていると、アドリアーニが登場、賭けの恨みからオッタヴィオに決闘を申し込む。そこへヴェールを被った女(実はナムーナ)が現れ、妖艶な踊りで決闘を止めさせてしまう。オッタヴィオはヘレナから邸に入るよう誘われるが、アドリアーニに雇われた刺客に襲われる。刺客は撃退したが、命が危ないことを悟ったオッタヴィオは、再度登場したナムーナにしたがって、船で海へと旅立つ。
第2幕
ナムーナは奴隷商人アリの島にオッタヴィオを匿う。ヴェールを脱いだナムーナの美貌にオッタヴィオは魅かれるが、まもなくアドリアーニと部下が島へ上陸する。ナムーナは酒と踊りで彼らを酔わせて島を脱出しようとするが、アドリアーニが酔いから覚めナムーナ達を追い詰める。その時、ナムーナの従僕アンドリスクがアドリアーニを刺し殺し、オッタヴィオとナムーナは船に乗って旅立って行く。
ラロは舞臺初演後、全23曲の中から3つの管弦楽組曲を編曲していて、此のバレエからの組曲(もしくは、それらからの指揮者の抜粋)が屡演奏され、亦た録音も為されています。其れ等の内容は以下の通りです:
第1組曲
- 前奏曲(Prélude)
- セレナード(Sérénade)
- 主題と変奏(Themè varié)
- 市場の行列(Parade de foire)
- 異国の祭り(Fête foraine)
第2組曲
- モロッコ舞曲(Danse marocaine)
- マズルカ(Mazurka)
- 昼寝(La Sieste)
- シンバルの踊り(Pas de Cymbales)
- プレスト(Presto)
第3組曲
- メヌエット(Menuet)
- タンブーラン(Tambourin)
- 速いワルツ
今日紹介させて頂くのは、ジョルジュ・セバスティアンの指揮するパリ音樂院管弦樂團に由り1950年代後半に行われたセッション録音です。
ジョルジュ・セバスティアン(フランス名)は、1903年にブダペストで生まれたハンガリー出身の指揮者で、マジャール名はシェベシュテイエーン・ジェルジュ(Sebestyén György)です。
ブダペスト音樂院に進學してバルトーク及びコダーイに師事し、1922年にミュンヒェンの歌劇場でブルーノ・ワルターに師事し、1927年にベルリン市立歌劇場の首席指揮者に就任します。そして、1946年にパリに遷り、オペラ座の首席指揮者に就任し、爾後オペラ=コミック座、フランス国立放送管弦樂團等も指揮しています。1989年にパリ近郊で歿しています。
《ナムーナ》組曲に關しては、アンセルメやマルティノンが演奏し且つ録音を殘している以外は、餘り演奏される機會は無い樣です。
其のアンセルメやマルティノンですが、前者は天性のリズム感が素晴らしく、後者は輝きに滿ちたサウンドが賣り物と云って良いでしょう。
此のセバスティアンの演奏は、歌劇場で經驗を積んだ指揮者に相應しく、此の曲の聽かせ所をしっかりと摑み切った躍動感溢れる演奏で、しかもオケがパリ音樂院管弦樂團とあって、フランス的色彩にも事欠かないものです。上述の兩録音が何れもステレオ録音であるのに對して、此方はモノで而も録音年代も古いので、少々分が惡くはありますが、音樂性という點でも決して引けを取らない名演と云い得るのではないでしょうか。隱れ名盤として、是非とも聽いて頂きたい演奏です。
演奏メンバーは以下の通りです:
Georges Sebastian (Dirigent)
Orchestre de la Société des Concerts du Conservatoire
Suite Nr.1 第1組曲
Suite Nr.2 第2組曲
(1950's)