クレンペラーのバッハ   《管弦樂組曲》Nr.2 

 

Johann Sebastian Bach

Orchestersuite Nr.2 h-moll BWV 1067

 

 

 

  今日採り上げるのは、バッハの《管弦樂組曲》第2番 ロ短調 BWV1067です。

 

  合奏協奏曲的な第1番に對して、第2番はフルートが主に活躍するフルート協奏曲と云っても良い形式が採られていて、今日に於いてはフルート奏者にとって極めて重要なレパートリーと成っています。

 

  第2番の樂曲構成は以下の通りです:

 

  1.序曲 (Ouvertüre)4/4 - 2/2 - 3/4

  2.ロンド (Rondeau) 2/2

  3.サラバンド (Sarabande)3/4

  4.ブーレ (Bourrée) I - II - I 2/2

  5.ポロネーズ (Polonaise)3/4 

           中間部はドゥーブルとされ、主部の旋律がバスに移り、フルートがオブリガー

     ドを奏でます

  6.メヌエット (Menuet) 3/4

  7.パディヌリー (Badinerie) 2/4

 

  

  第1曲はフランス風序曲で、全曲の半分近くを占める長大な樂章です。先ず附點リズムとトリラーが特徴的なグラーヴェで始まり、中間部ではテンポを速めてフルート獨奏の入るフーガと成り、獨奏フルートが愁いを帶びたソロを展開して行きます。

  第2曲はガヴォット風のロンドで、哀愁を帶びたメロディーがリトルネッロ(反復樂句)として繰り返し現れ、フルートパートは數小節を除いては第1ヴァイオリンと同じ旋律を奏でています。

  第3曲サラバンドは、少し物悲しい雰圍氣に包まれたゆったりとした舞曲で、此處でもフルートは第1ヴァイオリンと同じ旋律を奏で乍らカノン風の展開を見せています。

  第4曲ブーレは、一轉して速度を速め、活き活きとした曲調に變わり、ブーレⅠに続くブーレⅡでは再び獨奏フルートが活躍し、其の後再びブーレⅠが繰り返される三部形式と成っています。

  第5曲ポロネーズは、「ポーランド風」と謂う語源を持つ舞曲で、附點のリズムが特徴的な旋律が演奏された後、バスに繰り返された旋律の上を獨奏フルートがその旋律を装飾する樣に變奏します。

  第6曲メヌエットは、フルートが終始弦樂合奏と旋律を共にすると謂う穩やかな雰圍氣の曲と成っています。

  第7曲のバディヌーリは、「冗談」と謂う語源を持つ音樂で、快活に跳び跳ねる樣な獨奏フルートが印象的なフルート奏者の腕の見せ場となる素晴らしいフィナーレです。

 

      今日紹介させて頂くのは、オットー・クレンペラーの指揮するアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦樂團に由り1957年2月7日に行われた演奏会のライヴ録音です。

 

  クレンペラーは1954年にフィルハーモニア管、1969年にニュー・フィルハーモニア管と二度に亙るセッション録音を行っていて、前者は重くなり過ぎない響きの深さ、嚴格に成り過ぎない端正さと謂った樣にバランス感覺に秀でた演奏で、後者は晩年ならではの異常な程のスローテンポの重厚で恰幅の良い演奏で、聽き手の好みに由って夫々に評價の異なる所ではあります。今回紹介させて頂くのは、コンセルトヘボウ管を指揮したライヴ演奏で、臨場感溢れる正にクレンペラーの全盛期というに相應しいものです。特に印象的なのが此のオケの首席フルート奏者のフベルト・バルワーザーがスタッカートを效かせつつ繰り廣げているクレンペラーの意圖を見事に体現した演奏で、淀み無く亦た格調高く旋律を歌わせ乍ら音色のニュアンスに陰翳を施し、滲む樣な餘韻を殘している緊密なオケのアンサンブルも實に聽きものです。

  

  獨奏フルートに關しては、ブッシュ盤のマルセル・モイーズ、リヒター盤のオーレル・ニコレ、カラヤン盤のカールハインツ・ツェラーと並ぶ名演であると云えましょう。

 

 

  演奏メンバーは以下の通りです:

 

  Otto Klemperer (Dirigent)

  Hubert Barwahser (Flöte)

    Concertgebouw-Orkest Amsterdam

 

 

 

 

 

 

 

(1957.02.07 Live-Aufnahme)