カラヤンのシェーンベルク 《ペレアスとメリザンド》

 

ARNOLD SCHÖNBERG

Pelléas et Mélisande

Sinfonische Dichtung "Pelleas und Melisande" Op.5

 

 

 

  今日採り上げるのは、シェーンベルクの交響詩《ペレアスとメリザンド》作品5です。

 

  此の曲は、オーストリアの作曲家アルノルト・シェーンベルクが1902年から1903年に掛けて、メーテルランクの『ペレアスとメリザンド』に基づき作曲した管弦樂曲で、シェーンベルク唯一の交響詩です。

 

  最初の構想ではオペラを書く預定であったのだそうですが、ドビュッシーが先に同じタイトルでオペラを作曲して成功を收めたが故に、最終的に交響詩に落ち着いたのだと云われていて、フォーレ、シベリウスの劇附随音樂(何れも組曲に編曲)とと共に知られています。

 

  シェーンベルクが無調時代に入る以前の作品で、後期ロマン派風の交響詩ではあるものの、複雜な對位法の驅使、四度和音の使用、交響曲を單一樂章に收めた樣な形式等と謂った樣々な試みが為されています。

 

  初演は1905年1月25日に、ウィーンにてシェーンベルク自の指揮するウィーン演奏協會管弦樂團に由って行われています。

 

  樂曲は、大規模な4管編成が採られていて、全曲は648小節で、ソナタ形式に由るものですが、展開部にスケルッツォと緩徐樂章に相當する部分とが挿入される形と成っており、此の形式は《室内交響曲第1番》でも蹈襲されています。又、此の曲に於いて初めてドミナントの「sus4」の解決しない形の「4度和聲」が用いられたと云います。

  曲は4つの部分で構成されていて、切れ目無しに續けて演奏されます。

 

  今日紹介させて頂くのは、ヘルベルト・フォン・カラヤンの指揮するベルリン・フィルハーモニー管弦樂團に由り1974年1月に行われたセッション録音です。

 

  カラヤンは、1973年から74年に掛けて、BPOを指揮してシェーンベルク、ベルク、ヴェーベルン、即ち新ウィーン樂派の作品の録音を一氣に手掛けていて、此の時期にはマーラーの交響曲の初録として話題に成った第5交響曲やメンデルスゾーン(1971年)、シューマン(1971年)の交響曲全集等、餘り演奏しなかった作曲家に果敢にチャレンジしています。中でも、1973年12月録音の《淨夜》は其の美しさ故に忽ちの内に名盤に擧げられ、そして其の1か月後の1974年1月24-27に録音された《ペレアスとメリザンド》も、カラヤンの研ぎ澄まされた感性とBPOの優れた機能性を感じさせるものです。つまり、此の曲に於いては、他の追隨を許さぬカラヤン美學の真骨頂とも云うべき存在なのです。

  因みに、カラヤンは、同年8月31日にルツェルン音樂祭で、又翌9月25日には本據地ベルリンのフィルハーモニーで此の曲を演奏しています。1974年と云えば、BPOの最盛期に當たっている事も有り、カラヤン美學が餘す所無く發揮されていると云えるのではないでしょうか。

 

  演奏メンバーは以下の通りです:

 

  Herbert von Karajan (Dirigent)

    Berliner Philharmonisches Orchester

 

(1974.01.24-27)