デルフォーのサン=サーンス《ファエトン》Op.39

 

Camille Saint-Saëns

Phaéton

Sinfonische Dichtung”Phaethon

 

 

 

  今日採り上げるのは、サン=サーンスの交響詩《ファエトン》作品39です。

 

  此の曲は、カミーユ・サン=サーンスが1873年に作曲した2作目と為る交響詩で、ギリシャ神話に登場するヘーリオスとクリュメネーの息子ファエトン(パエトーン)の物語を題材としたものです。

  初演は作曲年の12月7日、國民音樂協會に於ける演奏會でエドゥアール・コロンヌの指揮に由って行われています。

  前作である《オンファールの絲車》に比べると演奏される機會は決して多いとは云えない樣ですが、曲自體の構成は重厚なものです。

 

  マエストーソの序奏は、金管樂器の旋律に弦と木管が上昇音階を提示し、トゥッティで終わります。主部はハ長調、4分の4拍子、アレグロ・アニマートで、非常に急速なテンポが指定されていて、第1主題が弦楽器によって奏でられ、ファエトンの乘った馬車が疾走する樣子を表しています。此れは弦により3回反復された後、木管に受け渡されます。すると、間もなくトロンボーンとトランペットがゼウスの聲を表した第2主題が提示されますが、徐々に馬の主題に遮られます。

  中間部ではゼウスの悲しみを表した第3主題が現れ、其の後クラリネットも入って來ます。やがて弦が第2主題の變形を奏するものの、太陽の戰車はゼウスの聲に聽く耳を持とうとしません。第1部の再現が現れて再び高まって行くと、ファエトンはゼウスの逆鱗に觸れ、雷に打たれて絶命してしまいます。速度を緩めたコーダでは、ゼウスの嘆きを暗示した第3主題の變形がホルンとチェロに由って表わされ、フルートとクラリネットが第2主題を提示し、ピッツィカートで靜かに終わると謂う構成と為っています。

 

  今日紹介させて頂くのは、ピエール・デルフォーの指揮するバリ管弦樂團に由り1971年に行われたセッション録音です。

 

  ピエール・デルフォーは、1917年にジュヴィシ=シュ=ロールズで生まれたフランスの指揮者で、1945年にパドルー管弦樂團を指揮して初の公開演奏を行い、1947年委オペラ=コミック座の指揮者に任命され、1953年迄務めます。そして、1956年から1972年迄パリ・オペラ座の常任指揮者、1968年から1975年迄ケベック交響樂團の藝術監督、1971年にはロレーヌ國立管弦樂團の首席指揮者、1979年から1982年迄ニース・フィルハーモニー管弦樂團の首席指揮者と謂うキャリアを持つ傍ら、1964年から1986年エコールノルマル音樂院の教授を務める等、後進の育成にも力を注ぐと共に、フランス音樂の偉大な擁護者として、幅廣い録音活動を通じてダンディやピエルネの作品を普及させるのに貢獻し、1992年にマルセイユで亡くなっています。

  

  サン=サーンスの魅力はと云えば、其れは矢張りフランス特有のロマンの香りが豊かに織り込まれている所に在ります。此の作品に關しても然りで、其れにピッタリなのが何と云ってもフランス生まれのデルフォーであると云い得ましょう。其れに加えて、パリ管も充實したアンサンブルを繰り廣げると共に、管樂器も個性豊かに妙技を披露しているのが聽き者です。

 

  演奏メンバーは以下の通りです:

 

  Pierre Dervaux (Dirigent)

    Orchestre de Paris