レーマンのオベール    《黒いドミノ》

 

Daniel-François-Esprit Auber

Le Domino noir

Ouvertüre zu "Der schwarze Donmino"

 

 

  今日採り上げるのは、オベールの歌劇《黒いドミノ》の序曲です。

 

  《黒いドミノ》は、ダニエル=フランソワ=エスプリ・オベールが作曲し、1837年12月2日にパリのオペラ=コミック座で初演された全3幕から成るオペラ・コミックです。

 

  本作の作曲家であるオベールは、1828年初演の《ポルティチの啞娘》でグランド・オペラの先驅者としての名聲を確立したのですが、其の後はより小規模なオペラ・コミックへと向かう事で、オペラ=コミック座に新たな息吹を與えました。

  此の《黒いドミノ》は《フラ・ディアヴォロ》等と並ぶオベールの最大の成功作の中の1つで、初演から70餘年で、パリでの總上演回數が1,209回に達しています。

  又、「オベールの音樂のスタイルはオペラ・コミックには非常に相應しく、輕快で、旋律は豊かで、小味が效いていて、勿體ぶった所が無い」と云った評價も為されています。

 

  物語は、意に反して修道女と成る事が決まった若い女性が、假面舞踏會に黒い假装用マスクを着けて現れ、スペインの貴族の男性と結婚する事に成るという話です。

  因みに、當時のオペラ=コミック座は良家の子女の見合いの場と成っていた事から、ハッピーエンドが必須と成っていたそうです。

 

  今日紹介させて頂くのは、フリッツ・レーマンの指揮するミュンヒェン・フィルハーモニー管弦樂團に由り1950年代に行われたセッション録音です。

 

  レーマンはフンパーディンクの童話を題材にしたメルヘン・オペラ《ヘンゼルとグレーテル》の名録音を殘していますが、此の《黒いドミノ》も同時期の同じオケに由る演奏で、兩者には何處かした共通する何かが有る樣な氣がしてなりません。

  バッハのカンタータで定評の有るレーマンですが、斯うしたオペラに於いても持ち味の實直さで以って、音樂性に富んだ味わいの有る演奏を聽かせてくれています。

  又、此の時期と謂うか、チェリビダッケが就任する以前のミュンヒェン・フィルにはドイツ的な土の匂いを感じさせるものが有ります。

 

  演奏メンバーは以下の通りです:

 

  Fritz Lehmann (Dirigent)

    Münchner Philharmonisches Orchester

 

 

(1953?)