トスカニーニのチマローザ 《秘密の結婚》

 

Domenico Cimarosa

Ouvertüre zu "Die heimliche Ehe"

 

 

  今日採り上げるのは、チマローザの歌劇《秘密の結婚》の序曲です。

 

  《秘密の結婚》は、ドメニコ・チマローザが作曲した曲で、モーツァルトと並び稱されるオペラ作曲家であるチマローザの代表作で、モーツァルトの作品を除けば、18世紀のオペラ・ブッファとしては、上演され續けて來た數少ない作品の一つでもあります。

  18世紀のパイジェルロ等のイタリア・オペラ・ブッファの傳統をロッシーニらドニゼッティへと引き繼いだ功績は大きく、ロッシーニが登場する迄、イタリアのオペラ・ブッファに於ける第一人者こそ、此のチマローザなのでした。

  又、小説《赤と黒》で有名な19世紀フランスの文豪スタンダールがモーツァルトの《フィガロの結婚》や《ドン・ジョヴァンニ》と共に其の生涯に於いて最も愛したオペラ・ブッファでもあります。

  初演は1792年2月7日にウィーンのブルク劇場で行われ、臨席した皇帝レオポルト2世は此の作品に感動し、同晩にもう一度上演させたと云われています。

 

  此の《秘密の結婚》ですが、モーツァルトの《フィガロの結婚》の樣に、金持ちの邸宅を舞臺としたもので、從僕が令孃と秘密裡に結婚したのを、何とか周圍に認めさせ樣と手を打つのですが、又伯爵が絡んで來てややこしくなるものの、結局は目出度し、目出度し!という筋のラブ・コメディーです。

  そして、その序曲も、とても樂しいもので、何處かモーツァルトの《魔笛》を想起せしめる感じです。

 

  今日紹介させて頂くのは、アルトゥーロ・トスカニーニの指揮するNBC交響樂團に由り1943年11月14日に行われた演奏會のライヴ録音です。

 

  此の演奏も預想に違わず、如何にもトスカニーニらしい速めの快活なリズムとテンポで展開させていますが、オケの編成がやや大き目であるせいか、本來の洒脱な味わいよりかは大柄で、やや勢いに任せた樣な所が無きにしも非ずで、オペラの序曲と云うよりかは、オケのショーピース的な捉え方の樣に思えます。併し、其れでいて、音の斬れが良く、重たい感じが全くしないのが流石はトスカニーニ!と云った感じでしょうか。實にエネルギッシュです。

 

  演奏メンバーは以下の通りです:

 

  Arturo Toscanini (Dirigent)

    NBC-Symphonie Orchester

 

 

(1943.11.14 Live)