ガリミールQのラヴェル
今日採り上げるのは、ラヴェルの弦樂四重奏曲 ヘ長調です。
この曲は、モーリス・ラヴェルが1902年12月から1903年4月にかけて作曲した室内樂曲で、1904年3月5日にエマン四重奏團に由って初演が為され、後に多少手を入れた上で、1910年に出版された作品で、敬愛する師であるガブリエル・フォーレに獻呈されています。
生前には未出版であった遺作のヴァイオリン・ソナタ(1897年)から數えると、ラヴェルにとって2作目となる室内楽作品で、しばしば録音や演奏でカプリングされる事の多いドビュッシーの『弦樂四重奏曲 ト短調』作品10(1893年完成・1894年發表)から丁度10年後の作品で、ラヴェルは先輩のその作品から大いに啓發を受けていました。ドビュッシーはラヴェルのこの作品に熱狂的な贊辭を送り、「音樂の神々の名と我が名にかけて、貴方の四重奏曲を一音符たりとも弄ってはいけません」と進言し、ラヴェルに終樂章を改訂せぬ樣説得したそうですが、ラヴェルは出版に當たって作品全體を改訂し、より構築感が高まる樣にしたと云います。
弦樂四重奏曲は、この時代には難しいとされたジャンルで、作曲家が成熟期を迎える迄にこれを手掛ける事は、先ず滅多になかったそうですが、當時まだ27歳であたラヴェルはその作曲に挑み、この樂種の傑作を示したのでした。
今日採り上げたのは、ガリミール弦樂四重奏團がラヴェル自らの監修の下で行ったセッション録音です。
リーダーで第1ヴァイオリンを擔當しているフェリックス・ガリミールは、ウィーン生まれでウィーン音樂院出身のヴァイオリニストで、カール・フレッシュに師事し、ソリストとしてもデビューしていますが、既に19歳から姉妹と弦樂四重奏團を組織していて、それが家屬を中心とした最初期のガリミール四重奏團の母體となっています。初期から一貫して20世紀音樂の紹介に努め、特に新ウィーン樂派との親密な關係がベルクの『抒情組曲』の録音で知られています。これは其の同じ年の1934年の録音で、當時ガリミールはまだ26歳でしたが、何れ極めて即物的な演奏として特異な位置を占めるものとなります。
1936年當時彼はまだウィーン・フィルに所屬していましたが、ナチの影響で樂團はおろかオーストリアから市民権を剝奪され、フーベルマンの招きで單身イスラエルに向かい、その地で2年を過ごした後、1838年にニューヨークに渡り、ソリストとしてアメリカデビューを果たすと同時に室内樂活動を再始動させ、新たにガリミール四重奏團を結成します。この新ガリミール四重奏團もこの曲の録音を殘していますが、全くと云って良い程別物です。
ウィーン時代のファミリーメンバーに由るこの演奏は、即物的であるとは謂え、又そうであるが故に、この曲を再認識する上で一聽の價値を有するものなのではないでしょうか。録音状態もこの時代にしては實に秀逸です。
演奏メンバーは以下の通りです:
Galimir-Quartett
Felix Galimir (Violine I)
Adrielle Galimir (Violine II)
Renée Galimir (Bratsche)
Marguerite Galimir (Violoncello)
Galimir-Quartett
Satz: I
Galimir-Quartett
Satz: II
Galimir-Quartett
Satz: III
Galimir-Quartett
Satz: IV