シュトロスQのベートーヴェン Nr.8 Op.59-2

 

 

  今日採り上げるのは、ベートーヴェンの弦樂四重奏曲 第8番 ホ短調 作品59-2です。

 

  この曲は、ベートーヴェンが1806年に作曲した弦樂四重奏曲で、依頼主で被獻呈者である伯爵の名前を取ってラズモフスキー四重奏曲という名で親しまれる樣になり、その全3曲中の2曲目に當たる事から、ラズモフスキー第2番とも呼ばれています。

  この第2番は、3曲の中では幾らか小規模なもので、全樂章がソナタ形式である第1番と比べると、第2樂章に緩徐樂章、第3樂章にスケルツォ、第4樂章にロンド・ソナタ形式といった様に簡潔なソナタの形式となっています。又、3曲の中では唯一短調で、形式が壓縮された内省的な作品でもあります。

 

  今日採り上げたのは、シュトロス弦樂四重奏團が1944年8月24日に行った放送用セッション録音です。

  シュトロス弦樂四重奏團は、1934年にドイツのミュンヒェンで結成されたカルテットで、創設時のメンバーは、第1ヴァイオリンがヴィルヘルム・シュトロス(1907~1966)、細2ヴァイオリンがリヒャルト・ヘバー、ヴィオラがヴァレンティン・ヘルトル、チェロがバウル・グリュンマーという顔ぶれでした。リーダーのシュトロスは、父親にヴァイオリンの手解きを受け、7歳でコンサートを開催したという神童で、その後ケルン音樂院のジョセフ・ヨアヒム學生プラム・エルダリングのマスタークラスで學びます。1928年にベルリンに赴き、そこでエドウィン・フィッシャー室内管弦樂團のコンツェルトマイステルとして働き、名ヴェイオリニストのカール・フレッシュとの共演も果たします。1932年にエリー・ナイ・トリオに參加し、室内樂での活動を開始。そして、1934年にミュンヒェン音樂大學のドイツ最年少のアカデミー教授として招かれ、シュトロス弦樂四重奏團を結成する事となった譯です。

  ブッシュ四重奏團とは全く異なる道を歩ぶ事となりはしたものの、その演奏スタイルは古き良きドイツ古典スタイルを繼承していて、内省的且つ思辯的とも云い得るものです。ベートーヴェンの弦樂四重奏曲に關しては、第2番、第3番、第4番、第6番、第8番と第11番の録音が存在していて、何れもドイツ的で素晴らしい演奏ですが、中でもこの第8番は、内省的な曲であるという一點に於いて、特に秀でた演奏であると思います。纎細で優しく且つ温かく、表情豊かに歌い上げられ、それでいて故意的な感傷さを微塵も感じさせません。とりわけ、内省的な内容の第2樂章は、第1、第2ヴァイオリンの應對とそれぞれの樂器の調和が見事で、當を得たポルタメントが活きていて、フレージングも美しくあります。又、第3樂章は主部が悠揚迫らぬテンポでしかもリズミカルに奏されているのが新鮮で、抑揚が効いていて、緩やかに滑る樣な感じがとても印象的です。

 

  演奏メンバーは以下の通りです:

 

  Stross-Quartett

      Wilhelm Stross (Violine I)

      Franz Schmidtner (Violine II)

      Valentin Härtl (Bratsche)

      Rudolf Metzmacher (Violoncello)

 

 

Stross-Quartett

(1944.08.24 RRG)