××と呼ばないで | 降ればどしゃ降り CAT&DOG

降ればどしゃ降り CAT&DOG

『青の軌跡』萌え語りメイン
時々、二次創作。多分にBLネタを含むのでご注意ください

何度フリーズすれば気が済むんだっ!  

お久しぶりです!

三四郎並みの放置プレイの乙都です。
 

もう6月、そうですね、2018秋のリンクスフェアの小冊子が発送される予定の月です!

予定通りに発送されればいいのですが……

全く余談ですが昨年、発売一ヶ月後に注文したジムニーがようやくラインに乗りそうです ( ;∀;)
小冊子が来るのが早いか、ジムニーの納車が早いか……w

 

と、いう書き出しで5月に書き始めた訳ですがw

小冊子の発送は7月下旬、そしてジムニーは約11か月待ちの7月5日に納車が決まりましたww

なんてこったい……

 

 

以下の記事

 

 

 もし乳児の頃にカイの手元に来たとしたら、泣きぐずる自分に手を焼いたカイは胸を吸わせてくれただろうか、太一君の親ばかぶりにうっかり淡い望みを見出してしまう藍。ところが勘の良い三四郎にあっさりとそれを見抜かれ呆れられてしまう。

 

 『なんだオヤジの乳首吸ってみたかったのか』

『冗談じゃない、オヤジ・……どうして三四郎なんだ、ろくに月にいもしないで僕をカイに丸投げしているあんたが赤ん坊の世話なんかやるわけないだろう』

DNA上の父親であっても『父』と認める気のない藍のあんた呼ばわりも三四郎は気にしていない。見下したような物言いを咎めもせず、言外にカイの乳首を吸いたかったと自白していることに気付かない藍を面白がっていた。

『乳首吸いたかったなんてカイに言うなよ、電撃かまされるぞ。まあ俺もそこまで赤ん坊相手にパニくってるカイなら見てみたいけどな』
そう忠告し軽く眉を上げた。

『こう見えてもおふくろの代わりに紅子の世話をしてた時もあったから赤ん坊の世話は経験してるんだ。ミルク作るのもおしめの世話も手慣れたもんだ』

切れ者と名高い上官の思わぬ過去に藍色の目が丸くなった。今の彼女を知る彼には火のように泣き叫ぶ乳児の紅子・マキノの姿が想像できなかった。否、子どもの顔をした彼女さえ想像の範囲外だ。
『……』

何とも言えない表情で視線を泳がせた藍の顔を面白そうに眺めていた三四郎が不意に真顔になった。子どもっぽく映るおおらかな笑顔はほんの少し口元を引き締めるだけで信じられないほど大人びたそれに変わる。その変化に戸惑いを浮かべた我が子の頭を幼子を宥めるように柔らかく叩いた。

『カイの乳首より、間違いなくおまえにおっぱいを吸わせていたデリラのことを思い出してやってくれくれないか』

デカいバストでなく、乳首でもない、『おっぱい』という表現を使った三四郎は父親の顔をしている。

『俺はともかく、おまえのおふくろはデリラなんだからさ』

泣き叫ぶ藍に乳を含ませたいと彼女は最期まで願い続けていたはずだ。
『赤ん坊のおまえが欲しがっていいのはデリラのおっぱいだけだ』

 

 「捨ておいて今更あんな風に言われても」
憤懣やるかたないというように口を尖らせて訴えた藍をカイは困ったように見詰めた。
 三四郎のデリラへの愛情を感じ取ったことのあるカイにとって三四郎の言葉は納得のいくものであると同時に、藍のわだかまりも理解できた。それ故にすんなりと肯くことができないのだ。

「父親ヅラされるのも御免だけど、死んだ母さんを今でも好きみたいに言うのは許せない」

きつい視線で床を睨んでいた藍が顔を上げ態度を決めかねているカイの目を覗き込んだ。そこにあったのは期待していた赤ではなく戸惑いのブルーグレイだ。

 三四郎とよく似た吊り上がった眦が更に吊りがった。

「なんで怒っていないの、カイがいるのに他の女を好きだって言ってるのも同然なのに」

 三四郎を『父親』と認識しないように、記憶のない『母親』を藍は実感できていない。そのために血の繋がる両親を見る彼の目は他人行儀だ。藍にとって最も親いのは養育者のカイなのだ。それ故に彼は本気でカイのために腹を立てている。

 しかし両親に愛され『幸せな子ども』を自認するカイは自分がそうだったように、両親の愛情を藍に感じて欲しいと望んでいる。定期連絡を三四郎に課したのは彼の為だけではなく、黒幇で幼少期を過ごした藍に少しでも『親』の愛情を知って欲しかったからだ。

 正直なカレイドスコープアイズに銀色の翳りが挿した。

「カイ?」

藍色が目を見開く。

「この件に関して私には三四郎に怒りを感じる理由がありません」

「どうして、浮気と同じだろ」

「三四郎は浮気はしません」

きっぱりと言い切って顔を顰める藍を正面から見つめ返すカレイドスコープアイズに翳りはなく、いつもの美しいオパールブルーの煌めきを取り戻していた。
「三四郎は常に交際相手に対して本気です、それがたとえ一夜限りだとしてもその時の気持ちに偽りはありません」

「……」
カイの唇に不思議な柔らかな微笑が浮かんでいる。

「三四郎は目の前にいる相手のことしか考えられない男です。あなたの実母とは別れることになりましたが間違いなくあなたは愛し合う二人の間にできた子供です」
穏やかな優しい口調は藍の憤りを宥めるというより三四郎の恋を喜んでいるように聞こえた。

「目の前の人間のことだけしか考えられないのなら私はそれでいいと思っていますし、そうであって欲しいと願っています」
幼い頃、羽毛よりも軽い気持ちでその場限りの付き合いを繰り返してきたカイは、そういった恋愛遊戯が心を満たさないことを知り尽くしていた。飽くことがないのではない、満たされないから繰り返せるのだ。その虚しさを知るからこそ月を離れた三四郎が過ごすであろう真摯な気儘さも否定しない。

 軽薄な恋などして欲しくない、時間と距離の向こうで起きる三四郎の恋愛事情に嫉妬はない。

 相手のために自分の命も顧みないという他愛的なバディの側面が彼らのありように少なからぬ影響を与えているのだ。

 三四郎の背を追う切ないような瞳の色と全く異なる、複雑な色調で瞳をきらめかせ微笑むカイを藍は憮然とした目で一瞥し鼻を鳴らした。

「そういうのって心変わりっていうんだろ。浮気よりタチが悪い」

「そうでしょうか」

心変わりではなく、一つ好きなものが増えたに過ぎないと考えるカイは不思議そうに首を傾けた。藍の視線が強くなる。

「いい加減でだらしなくって、ここにいる間はガキみたいに散らかしてその辺で寝てるか、酒飲んでるかでカイだっていつも怒ってるじゃないか。それなのに他所でオンナに夢中になってるのは許せるって、変だろ。そんな奴のどこがよくって何年も待ってられるのか解からない」
今まで目にした人間の誰よりも美しく、誰もが認める聡明で明晰な月の若き元首がなぜ、苛立ち険しい表情でここにいない三四郎を睨んだ藍は、一瞬だけカイのブラックオパールの瞳が濁ったのを見逃がさなかった。

「カイ……?」

優しい微笑こそ浮かべた顔がこれまでになく悲し気に見えた。

「三四郎はあなたの言うように欠点の多い男です。あなたをああならないように私は育てました」
「僕も育ててくれたのが実の親じゃなくてカイで良かったと思っているよ」

あの三四郎と黒幇の女に育てられたとしたら自分は全く違う人間になっていた、本心そのものの藍の言葉にカイは僅かに唇を引き上げただけだった。

「ありがとう、そして私のために三四郎に怒ってくれて」
心の中を色にしたスコープアイズは藍の期待に反してただ煌めくばかりだった。

 

 

 士官学校の寮に戻って来た藍の塞ぎ込んで口を噤む様子にリリアンは軽く眉を上げた。いつもであれば煩いくらい久しぶりに会ったカイのことを喋り続けるというのに今回は不気味なまでに静かだ。

「どうしちっゃたの、三四郎に邪魔されて除け者扱いされたの」

性の多様性が容認される世相を反映し、寮は中庭を囲むようにそれぞれに別棟が割り当てられいる。彼らの交流は中庭とそこを取り囲むように設えられたラウンジホールでもっぱら行われていた。

 カイが託した小さな贈り物をいつも落ち合うベンチで受け取った彼女は藍の消沈ぶりに好奇心を隠さない。

「三四郎は月をさっさと出て行った、僕が戻るよりずっと前から月にいたらしい」

「……なるほどね」

滅多に会えない恋人たちは二人だけの時間をたっぷりと取ってから藍に連絡を寄こしたのだ。

「だから拗ねてるの」

「違う!そんなことじゃない………」
目を伏せ項垂れて尻尾を下ろした子犬の風情にリリアンは彼が口を開くのを辛抱強く待ち続ける。言いたくないことがあると分っているが、ここで素直に退いてやるほど彼女は善人ではない。

 何よりも感情感応者のカイが藍の動揺に気付かないはずがない、彼女の懸念は本人よりもカイの受ける影響にあった。

 無言で隣に座り続けるリリアンをちらりと横目で睨んで藍は深い溜息を吐いた。彼もまた長い付き合いから優秀な狙撃者でもある彼女が標的を撃ち取るまで動かないことをよく知っていた。

「カイを……傷付けた」

「は………?」

一瞬、あらぬ想像をしかけた彼女を一睨みし彼は吐き捨てる。

「笑っていたよ、いつもと同じ。でも目が違ったんだ、あんなのは初めてだ」

どうして、どうして、何が間違っていた?             なんど思い返しても考えても間違ったことは言っていない、唇を引き締め手入れの行き届いた芝生を藍は睨む。
「僕は三四郎みたいないい加減な人間になりたくないから、三四郎と黒幇の女じゃなくてカイに育てられてよかったって言ったんだ。カイだってありがとうって言った……!」

でも少しも喜んでなかった、口を尖らせた少年の顔をまじまじと見上げたリリアンの肩が溜息と共にがっくりと落ちた。

 

 地球と月のタイムラグはほとんどないと言ってよかった、なによりも高性能の通信装置は距離が作る微妙な画像と音声のズレを自動修正し、まるですぐ傍に相手がいるように3D画像を等倍率で投射してくれる。そのためまるで直に向かい合っているような感覚を与えた。

 そして今、月面政府官邸のプライヴェートリビングには自宅の書斎で寛いでソファに座るロードが映し出されている。

 ロードの姿がこの場所に投射されるのはこれが初めてではない。場所も時間もバラバラに過ごすかつてのセカンドクルーは三四郎を除いて時折この方法で連絡を取り合い旧交を温めてきた。
 科学の進歩が彼我の距離をかつてよりずっと縮めていた。

「リリアンにいつもありがとう、今回もすごく喜んでいたよ」

藍に託した品の礼を述べたロードにカイは軽く頷いた。

「礼には及びません、娘のいない私が手元に置き続けていても仕方のないものばかりですから」

「君のお母さんの形見の品を使っているんだろ、それをいくつも譲ってもらって君はいいのかい」

「形見と呼べる品は本当のところそんなにないんです」

カイの苦笑の意味を察してロードがほっと息を吐く。

 娘に届けられた高価な天然貴石で作られたアクセサリー類がカイにとって思い入れのないものだとわかったからだ。

「では遠慮なく受け取っておくよ」

リリアンの婚約者は三男とはいえ名家の出自だ。伴侶になるリリアンにはそれなりの支度が要求されることになる。もちろんロードの社会的地位も決して低くはないが差が開きすぎているのだ。それを知るカイは母の求愛者達が贈った宝飾品をリメイクしリリアンに譲ってきた。

「リリアンには大佐と幸せになって欲しいですから。協力は惜しみません」

8才からの初恋を頑固に貫き通した娘に対する複雑な思いに苦笑したロードが見慣れたハイチェアーに背筋を伸ばして座るカイに物のついでのようにこの通信の本題を切り出した。

「そのリリアンが気にかけていたよ、藍と少し食い違いがあったんだってね」
一瞬、引き結ばれた唇がらしくない溜息のあと、乗船時代には絶対に口にしなかった弱音を吐きだした。

「……三四郎の欠点を藍に蔑まれたのは堪えました……」

さんざん三四郎の欠点を叱責し、『事実だ』と言って擁護もしてこなかったカイにとって先日の藍の言葉は衝撃的だった。
 他の誰が、たとえ同じ遺伝子同じ組成で構成された凱であっても三四郎を蔑みどう非難しようとこれまで気にしたことはなかった。言葉通りそれは『事実』だったからだ。しかしそれを藍に言われたのは鉛を飲み込まされたような気分だった。

「欠点ばかりが目に付く三四郎ですがそればかりではないとあの子も分かってくれていると思っていたんです………」

途方に暮れたように告白したカイは自嘲気味に続けた。

「……分かって欲しいというのは我儘でしょうか」
乗船勤務が長く共に過ごす時間が限られた中でサンドラはしっかりとリリアンと親子の絆を結んでいる。彼女たちに淡い憧憬を抱いているカイは、それを可能にしたロードに自分の取るべき指針を求めてフォログラムを見詰めた。

「そうだね……確かに藍に三四郎を『父親』だという認識はないと思う、それは一緒にいる時間が足りないんじゃなくて月の文化がそうさせている部分があるんじゃないかな」
月育ちだからだ、という指摘にカイは表情を強張らせた。

「勘違いはしないでくれ、そういう意味じゃなくて君の視点が藍に対しても君のままで変わらないっていうことだよ」

「私の視点……?」

顔を強張らせたまま眉を寄せたカイに軽くロードが頷いた。

「僕もサンドラもお互いを呼ぶときは名前で呼び合うけど、リリアンに対してはパパとママだろ」

「………」

「君は藍に対して三四郎をパパとは言わない、藍の視点になって三四郎を表現していないってことだよ」

考えてもみなかった指摘にバイザーの下で大きくカレイドスコープアイズが見開かれる。

「名前を大切にする習慣のせいかな、月の住人は親子でも名前で呼び合うだろ」

喉で笑ってロードは顎を引いたままのカイに微笑む。

「リリアンが平均よりも知能と精神年齢が高いことが分かった時、サンドラと話し合って決めたんだ。僕たちはどんなことがあっても彼女のパパとママであろうって」

子ども扱いしないで、と一人前の女性扱いを求めた彼女に対してロード達は『子ども』として接していた。

「いつか彼女が僕たちを追い越してロード、サンドラと呼ぶ日が来ても僕たちはパパとママでいる……そういうことだよ」
穏やかな、しかし、固い決意を覗かせる言葉は不思議なほどカイの心の深い部分に納まった。そして、今は亡き養父の『君は自慢の息子だよ』という言葉の重みを知る。

「ふ………そんな風に考えてもみませんでした」

親子の概念を頭が理解していてもカイの心は未だ追いつていないのだ。

「君は藍と三四郎より親いからね、君の三四郎に対する厳しさを受け継いでしまったんだろう。そういう点では間違いなく藍は君の息子だよ」

「そのようですね」

自分のようにはなって欲しくないと願っていたカイは苦笑するしかなかった。

「とはいえ、あの男のどこを褒めたらいいものか……」

平和な環境にある三四郎はだらしのない怠け者に過ぎない、嘆きに近い自問にフォログラムのロードが破顔した。

「無理に褒めなくてもいいんじゃないかな、君がどれだけ三四郎が好きかっていうことを解ってもらえればいいんだから」

「私に藍相手に惚気ろと言うんですか!?」

驚愕のあまりハスキーヴォイスが上ずった。

「だって君は藍に三四郎を好きになって欲しいんだろ」

気持ちを言葉にして伝えるのを昔も今も不得手とするカイの動揺を喉で笑ってロードは胸の内で呟く。

      僕のほうが聞いてみたいくらいだけどね……・

 

 

 寄宿舎とはいえ連邦軍に所属する士官学校では外部との通信は厳格に管理されている。たとえそれが外交特権に守られた相手だとしても例外はなく、通信は全てモニターされ記録された。プライヴェートと言えど半ば公開されているに等しい。

 軍事機密、戦略作戦に携わる者の義務を学生のうちから叩き込まれるということだ。そしてマキノ一族に所属する三四郎が士官を嫌う『無償』の責務の一つでもあった。
 その三四郎がコンソールに着いたカイと並んでモニターに映し出されている。椅子に座るカイの背後からモニターを覗き込むように顔を並べている三四郎の、机に突いた机に手にカイの指がさりげなく重なっている。

 呆気に取られて藍はモニターの二人を見詰めた。

 これまで公の通信に三四郎が姿を見せたことは一度もなかった。国家元首の伴侶としては不適格な傭兵の三四郎の存在は公然の秘密とされてきたのだ。存在をないものとされる『存在』、それが三四郎のポジションだった。
 月人だからこそスキャンダルを警戒し続けていたカイが三四郎との仲睦まじさを監視者に晒すなど想定外だ、それどころか藍にとっても手を重ねる二人を見たのは初めてだと言っても過言ではない。

 言葉のない藍にモニターの中で眩いような光の粒を虹彩に散りばめるカイが微笑んだ。

      パパが帰ってきました、この週末は月に帰ってきなさい。

「パパぁぁぁぁ????」
月と地球の距離を越えてバリトンとテノールが絶妙な和音でユニゾンした。驚愕に強張ばる二人の表情はまるで鏡に映したようだ。

「……パパ……」
モニターの向こうとこちらで同時に呻くように呟いた親子は微妙に視線を逸らし互いを見られないでい.る。

 そんな二人に満面の笑みで頷くカイは楽し気で、本気で藍にそう呼ばせたがっているようだった。

 だがいくらそう望まれようと三四郎をパパと呼ぶのは御免の藍は前回の帰省の一件があるため黙り込むしかなかった。代わりにげんなりとした表情で三四郎がぼそりと呟いた。

       いくらなんでもここまで育ってるのにパパはねえだろ……もっと他にお父さんとか父さんと

       かいろいろ他にもあるだろ。
嘆くような愚痴はカイの端正な美貌を柔らかく綻ばせた。目を見張って三四郎を振り仰ぐ目元は淡く上気して表情は瞳の色が教える感情とぴったりと重なっている。

       いいのか……? 本当にそう思ってくれているのか?

藍を引き取った機会に再会した兄弟姉妹に対して三四郎は素っ気なかった。全く彼らに関心を寄せなかった三四郎がやがて離れて暮らす藍にもそうしない保証はなかった。そして離れ離れで暮らす家族を繋ぐには定期通信という糸は細すぎるのをカイは藍に突きつけられた。

 時間も距離も関係ないと言いきれるカイ達の絆と『家族』のそれは違うのだ。

       思ってくれてるって……あんた、本気で俺がとんでもない薄情者だと思ってるだろ。

       実妹ですら他人行儀のおまえにそこまでの父親の自覚があるとは考えていなかった。
            自覚があるかと言われると困るケド、ほら兄弟は他人の始まりって言うだろ。

       ガキの頃は紅子も俺の『家族』だったかもしれねえけど今の俺の『家族』はあんたと藍だろ。

そう言って喉で笑った三四郎が不服を隠さない藍を流し見てにやりと唇を吊り上げた。

       藍がどう思っていようと俺は藍のオヤジなんだ

三四郎らしい自己完結した一言で藍の拒絶も、カイの不安もないものにして屈託もなく笑う。親としての不安も迷いもない三四郎の根拠のない肯定は、しかし『家族』のカタチに拘り揺らぐカイをしっかりと支えるだけの力があった。

 そういえばジュール・ヴェルヌの任期を経てもドレイクは私を父として出迎えてくれた      三四郎も無償の愛情を時間と距離の向こうで注ぎ続けているのだ、そしてそれはとても身勝手で強くて優しい。

 カイの指が重ねた節高い三四郎のそれに絡められる。

 藍は私たちの子どもだ、絶対に変わらない事実を胸にモニターカメラに顔を向けたカイは鼻に皺を寄せ辟易としている我が子に微笑んだ。

 絆は結ぶものではなく紡いでいくものなのだ。

      お父さんとあなたの帰りを待っていますよ

 

 藍のスケベ心と、三四郎の親心と、カイの理想のすれ違い というのか 
 本当の両親はどうでもいい藍と、どう思われていようと父親は俺だという三四郎を前に、互いに認め合える親子でいて欲しいカイ。

 家族であっても思いは別々、それをすり合わせていくことが『絆』を紡ぐことかな……?
 一緒に暮らしているから、過ごす時間が長いからだけじゃ『絆』は生まれないのは凱が証明してくれている訳でだし事実、育ての親のカイを藍は『親』だとは思っていない……

ある意味、藍は『親はなくとも子は育つ』を実証しているのかも