『不思議な幻燈館』(テレビ朝日)、『なっちゃん家』(テレビ朝日)、『夜のミステリー』(TBSラジオ)と蛾
昭和のカルトなテレビ・ラジオ恐怖ドラマを取り上げてきたシリーズですテレビ

今回は1978年と1979年の夏に、フジテレビ系列で放送された恐怖サスペンス・ドラマフジTV
『日曜恐怖シリーズ』について特集しますサスペリア

『日曜恐怖シリーズ』

『日曜恐怖シリーズ』(1978~1979年)の傾向としては、それ以前にフジテレビが製作したフジTV
『恐怖劇場アンバランス』(1973年)の路線を受け継いでいると言えるでしょう楳図風

「墓場から呪いの手」や「蜘蛛の女」でも描かれた、死者の亡霊による復讐劇やw
「仮面の墓場」の不条理性、「夜が明けたら」の理不尽な狂気などが受け継がれています血痕
フィルム撮影による濃厚なムードと、個性的な性格俳優をそろえた重厚なキャスティングで魅了されます映画

ただし、円谷プロが製作と特撮を手掛けた『アンバランス』に比べるとSFX的な見せ場は少なく手
三船プロなどが製作を担当しただけあって、ドラマ性を前面に出したサスペンス色の強い番組ですヒッチ

製作のきっかけとなったのは、当時流行していた横溝正史原作の映画・ドラマに近いテイストの作品を…犬神家の一族
という事だったようで、確かにどことなく毎日放送の『横溝正史シリーズ』(1977~1978年)に近いムードがあります八つ墓村

さらに前年に放送を開始した、テレビ朝日の『土曜ワイド劇場』(1977年~)も意識しているらしくスポットライト
愛欲と痴情のもつれが引き起こす殺人、やたら裸がチラチラする官能ムードなどを前面に出しおぱーい
(出演者にも天知茂、萩島真一、中尾彬、宇津宮雅代、鰐淵晴子、松橋登、市原悦子、古手川祐子など土ワイ常連組が)幕
『アンバランス』に比べるとより大人の観客を意識した、アダルトでエロティックな作りになっていますムード3-2

恐らくこの『アンバランス』から『日曜恐怖シリーズ』へと発展したアダルト向けの恐怖サスペンス路線が?
80年代の『現代怪奇サスペンス』(1986年)、『現代恐怖サスペンス』(1987~1989年)につながっていくのでしょうテレビ
そしてフジテレビの恐怖ドラマ路線は『奇妙な出来事』(1989年)を経て、『世にも奇妙な物語』(1990年~)へと発展してゆきますネコ


『日曜恐怖シリーズ』放送作品リスト

「すすり泣く湖」
出演:山口崇、五十嵐淳子、片桐夕子、松橋登、柳生博、内田朝雄

病院院長の娘と結婚するため、愛人だった看護婦を殺した外科医が体験する恐怖の数々。

…という話らしいですが、要するに「四谷怪談」の現代版なんですよね。
こういうパターンは昭和の怪奇映画・ドラマにはやたらと多くて
大蔵怪談映画からテレ朝『土曜ワイド劇場』の「死美人シリーズ」まで
連綿と受け継がれてきたのですが、さすがに今の観客には古いと思われるでしょうね。


「花十字架」
原作:都筑道夫『雪崩連太郎怨霊行』より「花十字架」
出演:黒沢年男、ジャネット八田、待田京介、中川梨絵、須田真冬

転びバテレンの里で逆さ十字につるされた男の死体をみつけた男女の恐怖を描く。

原作は都筑道夫の連作怪奇シリーズ『雪崩連太郎怨霊行』中の同名の短編です。
怪奇事件を追うルポライター雪崩連太郎を、若き黒沢年男が演じているようです。
雪崩連太郎シリーズは怪奇小説の佳作ぞろいなので、連続ドラマ化しても良いでしょうね。
若いころの黒沢年男だったら雪崩連太郎にハマっているのではないかと期待しています。


「首無し島」
原作:ウィリアム・アイリッシュ「死刑執行人のセレナーデ」
出演:天知茂、五十嵐めぐみ、谷啓、ハナ肇、山本紀彦

警視庁捜査一課の刑事・北川駿(天知茂)は、村人が流人の首を落としたという
伝説のある初根島へ静養に訪れた。しかし島を訪れた北川は、不気味な仮面を
被った男・河原権次(谷啓)からおどろおどろしい殺人の予言を聞かされる。

その予言を裏付けるように、北川が宿泊した旅館では泊まり客の首吊り事件が発生。
駆けつけた駐在の沢田(ハナ肇)に、北川刑事は首吊りに使われたはずの
踏み台が低すぎる点を指摘。殺人事件として捜査を開始する。

はっきり言って、アイリッシュの「死刑執行人のセレナーデ」のムードは出ていません。
どちらかというと『横溝正史シリーズ』に近い雰囲気で描かれており、アイリッシュの
ファンとしては正直言って微妙…。でも天知茂がかっこいいのでそれなりに楽しめます。

どうやら『土曜ワイド劇場』の天知茂の明智小五郎シリーズがあまりにも好評だったので
フジテレビでも一丁、天知茂の探偵ドラマをやってみようということで、とりあえず
有名なウィリアム・アイリッシュを原作に即席で作った推理ドラマのようです。

土ワイでは文代さんを演じた五十嵐めぐみも天知茂の助手役で出演。
さらに毎日放送の横溝正史ドラマでの刑事役・ハナ肇と谷啓まで出ている豪華版。
キャストは超豪華なのに内容はあんまりおもしろくないよ。


「怪しの海」
監督:中川信夫
原案:千束北男(飯島敏宏)
出演:太地喜和子、田村正和、吉行和子、清水紘治、白木真理

カメラマンの松木(田村正和)はヨットで漂流して、地図にない島に辿り着く。
島には洋館があり、2人の女性(太地喜和子、吉行和子)と1人の男(清水紘治)が
住んでいたが、彼らは吸血鬼だった。

怪談映画の名匠・中川信夫が演出した吸血鬼ドラマです。
「太地喜和子と吉行和子が銀髪のカツラに白いマントという出で立ちで
吸血鬼役を大真面目に演じていたのが妙だった。」というビミョーな感想が見つかりました。
太地喜和子、吉行和子、清水紘治なら雰囲気のある吸血鬼を演じられそうなもんですけど…。


「白髪鬼」
『白髪鬼』

原作:黒岩涙香『白髪鬼』(マリー・コレッリ『復讐鬼』の剽窃)
出演:中村敦夫、大谷直子、石井ひとみ、森次晃嗣、杉山とく子

「白髪鬼」は江戸川乱歩原作として、たびたびドラマ化されていますが、
今回は黒岩涙香が原作として表記されています…って、本当の原作者
マリー・コレッリの名をなぜ誰も出さないはてなマーク

1969年テレビ朝日の「怪奇ロマン劇場」では西沢利明、1970年テレビ東京の
「江戸川乱歩シリーズ 明智小五郎」では西村晃、1979年「土曜ワイド劇場」
では田村高廣と、名だたる名優が白髪鬼を演じてきました。

そして「日曜恐怖シリーズ」で白髪鬼を演じたのは中村敦夫でした。
ビデオで見ましたが名演だと思います。毎日放送『八つ墓村』(1978年)での
中村敦夫の田治見要蔵にはガッカリでしたが、こちらの白髪鬼は素晴らしいです。

ちなみに「日曜恐怖シリーズ」では、白髪鬼を「仮死状態から甦った男」ではなく
「幽霊」に変えていますが、この変更はおどろおどろしさが出ていて良かったです。


「女人まんだら」
監督:中川信夫
出演:中尾彬、宇津宮雅代、ホーン・ユキ

愛人(ホーン・ユキ)のいる夫(中尾彬)は、うとましく思っていた
妻(宇津宮雅代)が妊娠したことを知り、殺意を抱くようになる。

妻殺しを企む夫が中尾彬、夫に命を狙われる悪妻が宇津宮雅代という、
良い感じに昭和の土曜ワイド劇場なキャスティングが、濃厚なムードを
期待させて、どうしても見たくてウズウズしてしまいます。
そして演出は『怪しの海』に続いて名匠中川信夫が担当。


「おひな様の亡霊」
原作:山岸凉子「ひいなの埋葬」
出演:ピーター(池畑慎之介)、神保美喜、志垣太郎、荒木道子

川島弥生(神保美喜)は、遠縁の梨本家で開かれる雛の節句に招待される。
元華族という由緒正しい梨本家の古い屋敷には、当主である老婆(荒木道子)、
その孫娘の静音(ピーター)、主治医の青年・影尾雪(志垣太郎)が住んでいた。
静音は弥生と同じ16歳、和服の似合う楚々とした美人である。

夜、トイレに起きた弥生は広い屋敷の中で迷ってしまい、大きく立派な
段飾りの雛人形を見つけた。
彼女はそこでシズオ(ピーター、二役)と名乗る静音にそっくりな少年に出会う。
だが彼は「自分に会った事は言わない方がいい」と不可解なことを言って去って行った。

翌日、家政婦に聞いてみるが、「この家に男の子はいない」と冷淡に告げられる。
しかしその晩も、弥生は雛人形のある部屋でシズオ少年と再び出会うのだった。
弥生は夜ごとシズオ少年と会話を交わすが、シズオには何らかの病気があるらしい。

3月3日の雛祭りの席で、静音と影尾雪医師の婚約が発表される。
しかしその直後、弥生は静音とシズオが同一人物であることを知る。
なぜ男同士での婚約を?シズオの口から一族に伝わる忌まわしい伝説が語られる。
因習に縛られた旧家の言い伝えによって、男として生まれたシズオは
静音という女として偽り育てられたのだった。

静音の出世の秘密が明らかになった雛祭りの晩、悪夢のような惨劇が…。

山岸凉子の「ひいなの埋葬」を幻想的な映像でドラマ化した、番組中でも随一の人気を誇る作品。
悪夢のようなラストシーンが、トラウマに近い強烈なインパクトを視聴者に植えつけたそうです。

クライマックスでは炎上する屋敷の中で、ひな人形と一緒に焼かれてしまう主人公。
炎の中でひな人形が衣装はそのままで白塗りの人間の姿となり、横たわるピーター
の周りで、怪人化したおひな様やらお内裏様やら三人官女やら多数が笑いながら
踊り狂うという、悪夢のようなラストシーンが評判。

子供の頃に見たという方によると「とても綺麗でかつ怖かった」とのこと。
原作の世界観とは違うかも知れませんが、キワモノ的な魅力がありそうで見てみたいです。


「怪猫 すすり泣く怨霊」
『怪猫 すすり泣く怨霊』

脚本:宮川一郎
出演:古手川祐子、荻島真一、森田健作、長門裕之、小林千枝、早川絵美

夫に殺された妻が、死んだはずの妹と猫の姿を借り、次々と復讐をしていく。

病院のっとりを企む久保(荻島真一)は、愛人の看護婦・信子(早川絵美)
と共謀して妻・美沙子(小林千絵)を殺害。また、信子の姉・三津子は
美沙子の愛猫タマを殺害する。

美沙子の葬儀の夜、久保の後輩・島崎(森田健作)が腹痛で苦しむ
幸子(古手川祐子)という若い女性を連れてくるが、幸子とは
五年前に死んだ美沙子の妹だった。

怪談の定番・化け猫もの…というか、土曜ワイド劇場の「死美人シリーズ」に
対抗したような現代風怪談ドラマですね。キャストも土曜ワイド劇場常連の
古手川祐子・荻島真一・長門裕之だし。脚本は怪談ものの名手・宮川一郎。


「悪魔の住む館」
出演:森下愛子、永島敏行、中条きよし、吉田義夫、田中筆子、三谷昇

寝たきり老人の世話のアルバイトを始めた女子大生が、
地下室からの不気味な泣き声に気づく。

このエピソードに関してはネット上でもほとんど情報が見つかりません。
なんだか怖くておもしろそう…地下室にはいったい誰がいたんでしょうはてなマーク
このドラマ、ぜひ見てみたいですねえ。


「夢殺人」
原作:ロジャー・マンベル「呪いを売る男」
出演:宮下順子、横内正、伊藤雄之助、児島美ゆき、殿山泰司、三島ゆり子、大久保鷹

その夢を見たら殺される。復讐心に燃える男の呪いの連鎖。

小さな町の郵便局員である千枝子(宮下順子)は、窓口から
差し出された手に奇妙な刺青があるのを見てぎょっとする。
相手は見慣れない男(大久保鷹)で用が済むとそのまま帰って行った。

その夜、千枝子は夢を見る。ピンクのネグリジェ姿のまま
不気味な場所を何かに導かれるように歩いている夢。
行く手にはぽっかりと大きな穴が空いていて、その中へと
引きずり込まれる場面で目を覚ます。

恐怖に駆られた千枝子は夢の内容を下宿の夫婦(殿山泰司、三島ゆり子)
に話す。すると今度は、下宿の夫婦が夢の続きを見てしまう。

眠ると悪夢の続きを見てしまう。誰かに話せばその人の夢に悪夢が伝染する。
夢の先には言い知れぬ恐怖が待ち構えている。複合的な恐怖により
小さな町の住人は夢の恐怖に怯えるようになっていく。
連鎖する悪夢の恐怖に町はパニックとなる中、ついに夢と同じ状況で殺人が…。

ナチス・ドイツの研究家としても知られる作家ロジャー・マンベルの怪奇小説
「呪いを売る男」を、舞台を日本に移してドラマ化した怪奇スリラー。
宮下順子、伊藤雄之助、殿山泰司、大久保鷹という濃厚なキャスティングが最高ですね。

夢の中で得体の知れない恐怖に襲われるというアイディアが充分に活かされているとは
言い難いのが惜しいですが、昔の怪談映画らしい妖艶な怪奇ムードはたっぷりと楽しめます。
悪夢が連鎖してゆく不条理な恐怖劇を、陰影の効いたフィルム撮影で楽しめるのが良いです。


「呪われた大時計~ネジの叫び」
原作:山岸凉子「ネジの叫び」
出演:田中健、風吹ジュン、奈良富士子、にしきのあきら

山崎コンツェルンの令嬢・景子(風吹ジュン)は譲次(田中健)と
結婚する。景子はロマノフ王朝時代の大時計を分身のように愛していた。
その大時計は景子の財産目当てに結婚した譲次の野心を見抜いていた。

譲次は陰気な景子を内心では疎んじるようになり、景子の派手な従姉妹の
華枝(奈良富士子)と愛人関係に陥る。挙げ句の果てに、譲次は海で
景子が溺れ死ぬのを見殺しにする。

「あの際は仕方なかった。助けていたら俺まで死ぬかもしれなかった」
と言い訳しながら景子を弔い、今後の金持ち独身生活に思いを馳せる譲次。

しかしその翌朝から、景子の幽霊が現れる。毎朝10時に居間に現れては
大時計のネジを巻くのだ。
譲次は数日でノイローゼ状態になり、華枝の元に逃げ込む。
しかし、華枝の心はすでに譲次から離れていた。

「ちくしょう今に見てろ」と譲次はとりあえず家の金目の物を車に積めて
夜逃げを計る。しかし運転中に、背後からキリキリと時計のネジを巻く音が…。
バックミラーを見るとあの大時計が映る。
「あんなもん持ってこなかった」と驚いた譲次が振り返ると、後部座席では
水浸しの景子が笑いながら大時計のネジを巻いていた…。

『ひいなの埋葬』に続いて山岸凉子の恐怖マンガをドラマ化した一本。
評判によると山岸凉子のマンガの怖さには、ドラマは及んでいないとの
ことです。それは仕方ないですが、それでも陰影を活かしたフィルム撮影
でのドラマ化作品はぜひ一度見てみたいです。


「江利教授の怪奇な情熱」
原作:アレクサンドル・ベリャーエフ「ドウエル教授の首」
出演:中尾彬、萩尾みどり、下元勉、志垣太郎

天才と呼ばれた学者である恩師(下元勉)が亡くなった後、
彼の遺した論文に記された実験を行った江利教授(中尾彬)は、
恩師の蘇生に成功する。
首だけで生き返った恩師は、江利教授に対して威圧的な態度で
彼の首をつなぎ合わせるのにふさわしい胴体を持つ人間を
探し出すように命じる。

丁度その頃、頭痛を訴える若い女性が教授の診察を受けに来ていた。
さりげなく首回りのサイズを調べると恩師の首を乗せるのにぴったりな
首回りのサイズであり、しかも彼女は脳腫瘍だった。
男の首と女の胴体をつなぎ合わせる奇怪な人体実験の顛末ははてなマーク

「日曜恐怖シリーズ」中でも随一の傑作として名高い怪奇SF。
江利教授役の中尾彬は、土曜ワイド劇場などで殺人者や
偏執狂を演じて数々の怪演を残した名優です。恐らくこのドラマでの
マッド・サイエンティストの演技もさぞかし素晴らしいのでしょう。

下に↓ドラマをご覧になった方の感想を引用させて頂きます。

「己の欲のために人体実験をする話なのだが、その中には名誉を取るか、
命の尊さを取るかという教授の葛藤が描かれている。もしも実験を
成功させればそれは世界でも類を見ない画期的な功績であり、一躍
教授の名は世界に広まる。しかし果たしてその栄誉のために若い命を
奪っても良いものかという葛藤が生じる。この葛藤の末、教授が
どんな決断を下すかがこのドラマの最大の見所となっている。」


※以上は「玉虫色のインク」『江利教授の怪奇な情熱』からの引用です。


「死霊の島」
原作:西村京太郎「死霊の島」
出演:清水健太郎、新井春美、山谷初男、浜村純

300年前に死んだ女が、妊娠して故郷の島を訪ねる。島の一族にまつわる奇怪な伝説の物語。

というあらすじをネット上で見つけたのですが…300年前に死んだ女が…妊娠はてなマーク
ど、どういう話なんだはてなマークちなみに原作は西村京太郎です。


「危険な誘拐」
原作:小松左京
出演:鰐淵晴子、立川光貴、大谷照彦、椎名健治、藤木悠

息子を誘拐された夫婦の苦悩を描いた怪奇サスペンス。

一見何の変哲もない平凡な夫婦の京子(鰐淵晴子)と邦夫(立川光貴)、
夫婦の息子・良夫(大谷輝彦)には秘密があった。
彼らは、決められた時間に薬を服用しなければならない体質だった。

夫妻は一人息子の良夫に必ず薬を服用するようにと言い含めてから
学校へ送り出した。ところがその日、良夫を誘拐したと男から連絡が入る。

息子を誘拐された夫妻と誘拐犯の間に、緊迫感に満ちた応酬が続く。
息子に薬をしきりと飲ませて欲しいとせがむ夫妻に対して、誘拐犯は
要求を無視してとにかく金を欲しがる。

薬を飲まされないまま放置され、苦しむ良夫。薬を服用する期限の時間が近づく。
そして……緊迫感にみちた誘拐劇には戦慄の結末が待っていた。

途中までは少年誘拐を扱ったサスペンスドラマ仕立てになっているが
クライマックスのどんでん返しでSFホラーに変わってしまうという怪作。
息子を誘拐された夫婦と誘拐犯との攻防をサスペンスフルに描きながら
結末の悪夢のようなどんでん返しでは、スプラッター色を押し出して驚かせます。
原作が小松左京だということを意識していれば奇想天外な結末が楽しめるかも。

特に母親を演じる鰐淵晴子の妖しい存在感が、怪奇スリラーのムードにピッタリ。
「鰐淵晴子が普通の主婦の筈がないよなあ」というキャスティングが効いている…かな?

この当時の鰐淵晴子は「土曜日の女シリーズ」の『鏡の中の顔』(1974年)を始め
NHKで江戸川乱歩の「陰獣」をドラマ化した『夏の恋』(1972年)の小山田静子や
土曜ワイド劇場で高木彬光の怪奇ミステリを映像化した『大東京四谷怪談』(1978年)
さらに毎日放送の横溝正史シリーズ『八つ墓村』(1978年)の森美也子や
映画『悪魔が来りて笛を吹く』(1979年)の椿アキ子を印象的に演じており
浮き世離れした妖艶な美貌を活かし、多くの怪奇ミステリで魅力を発揮しました。


「呪いの館」
出演:秋野暢子、市原悦子、松橋登、村野武憲

新妻(秋野暢子)は夫(松橋登)の海外出張のため、車椅子に座った
夫の姉(市原悦子)とともに、古い洋館に同居することになった。
だが、心臓の弱い新妻に、妄執にとり憑かれた義姉の狂気が襲いかかる。

「火曜日の女シリーズ」で石井輝男が演出した『喪服の訪問者』(1971年)
を思わせる密室型の心理スリラー。市原悦子のサイコ演技がとにかく怖いです。

薄気味悪い人形を抱いて車椅子に腰かけたまま、ヒロインを精神的に
いたぶり抜く狂気の女を怪演する市原悦子がとにかくブキミで怖~い。
今となっては古さを否めない話ながら、市原悦子の鬼気迫る演技を
見ているだけでも、たっぷりと引き込まれます。


「悲しみの山荘」
原作:小林久三
出演:范文雀、内田良平、ホーン・ユキ、小栗一也、直木悠

強盗に押し入った三人組が山荘の持ち主夫婦を殺す。
三年後、殺した女そっくりの女が現れる。

テレ朝『土曜ワイド劇場』の「死美人シリーズ」に通じるような
殺された女の亡霊による復讐譚をエログロで味付けした作品らしい。
出演する女優が范文雀とホーン・ユキ…この時代の女優はゴージャスでしたね。

下に↓見たことがあるという方の感想を転載させて頂きます。

「日曜恐怖シリーズってのがあって昼間にやっていたコレの再放送をよく見てたんだが、
「悲しみの山荘」っていうタイトルの回があってコレがまたトラウマに。

話の細かい筋は覚えてないんだが、確か悪い奴に殺された女の双子の妹(姉?)だかが、
犯人に復讐をするって話だったハズ。
で、終盤で土砂降りの中、犯人が山荘に逃げ込むんだがロッキングチェアに
腰掛けた死体(犯人が話の中で殺したんだと思う)から大量に血が噴出すシーンが
強烈なインパクトで。
全体的に陰鬱な雰囲気漂う作品だったのもあるが子供心にまずいモノ見たなぁって思ってた。」


「お気楽ヲタ人生」“トラウマ”からの引用です。


「穴の牙」
原作:土屋隆夫「穴の牙」
監督:鈴木清順
出演:藤田まこと、原田芳雄、牧冬吉、北村英三、稲川順子

戸倉警部補(藤田まこと)は銀行強盗の犯人・志田(原田芳雄)を射殺してしまうが、
顔面に命中した弾丸は頭蓋骨の中で一周し、傷口から再び飛び出してくる。
事件の責任をとらされて戸倉は辞職するが、ふとしたきっかけで志田が
隠した強奪金の在り処を知る。深夜、戸倉がこの土を掘り返していると、
穴の中から志田の亡霊が出現して…。

ミステリの大御所・土屋隆夫の短編を、鬼才・鈴木清順が演出したカルトな怪作ドラマ。
人工的なセットでシュールな物語が展開する、不条理スリラー劇の傑作として知られています。
始まるや否やレントゲン写真の頭蓋骨から血が噴き出す悪夢的映像が視聴者に衝撃を与えました。
怪奇で不条理なストーリー展開と、甘美な悪夢を思わせるシュールな映像で引き込まれます。


「誰かが見ている」
原作:戸川昌子
出演:宇津宮雅代、中野誠也、池波志乃、福田豊土、西尾麻里

見知らぬ親子が殺害されるのを見殺しにした男に、やがて復讐を誓う女が接近してくる恐怖。

菅原(中野誠也)はある晩、車の中から殺人事件を目撃した。しかし彼は
被害者のルリ子(西尾麻里)とその父親(福田豊土)を見殺しにしてしまう。

犯人は逮捕されたが、菅原は彼を逆恨みするルリ子の母親・敦子(宇津宮雅代)の
視線につきまとわれるようになり、ノイローゼ状態になってゆく。
つきまとう敦子の視線によって精神的に追いつめられた菅原は、妻(池波志乃)の
眼をアイスピックで突き刺してしまう。

…と言うストーリーらしい。原作は異色ミステリの鬼才・戸川昌子の短編小説です。


以上18話のエピソードのうち、僕が見る事ができたのはわずかにビデオテープ
『首無し島』『白髪鬼』『怪猫 すすり泣く怨霊』『夢殺人』『危険な誘拐』黒猫
『呪いの館』『穴の牙』と半分にも満たないのが残念です悪魔の棲む家

レトロな味わいは現代の観客には古臭いと思われるかも知れませんが楳図風
フィルム撮影による妖艶な雰囲気と重厚なキャスティングがたまらない味わいで八つ墓村
個人的には昔懐かしい怪談映画のムードが楽しめたので満足でした?

ちなみに、フジテレビの恐怖ドラマの流れとしてはフジTV

『恐怖劇場アンバランス』(1973年)
   ↓
『日曜恐怖シリーズ』(1978~1979年)
   ↓
『現代怪奇サスペンス』(1986年)
『現代恐怖サスペンス』(1987~1989年)
   ↓
『奇妙な出来事』(1989~1990年)
   ↓
『世にも奇妙な物語』(1990年~現在)
   ↓
『放送禁止』(2003~2008年)
   ↓
『トリハダ』(2007~2009年)『カクセイ』(2011年)
   ↓
『ホラー アクシデンタル』(2013年)『シンドラ~集団住宅の恐怖』(2014年)

大ざっぱにまとめれば上記のような流れがあると思われます(これらの他にも恐怖ドラマはありましたが)マウス

今回取り上げた『日曜恐怖シリーズ』(1978~1979年)は、『恐怖劇場アンバランス』(1973年)と手
『現代怪奇サスペンス』(1986年;後に『現代恐怖サスペンス』)との間に製作されたシリーズでありカチンコ
内容や作風もまた、『アンバランス』と『現代怪奇サスペンス』の中間を行くような作りであったと言えるでしょう楳図風

まず何よりもこれらのシリーズは、後のフジテレビが放送する『奇妙な出来事』(1989~1990年)以降の恐怖ドラマとは違ってタモリ
ターゲットが若者ではなく、恐らく中年男性や主婦を視聴者として想定したと思われる作りでテレビ
既婚者の痴情のもつれによる殺人や、アダルトな官能シーンを取り入れた作風が目を引きますおぱーい

特に『日曜恐怖シリーズ』は、テレビ朝日系で前年に放送を開始した『土曜ワイド劇場』を意識しているらしくスポットライト
昭和の土曜ワイド的な猟奇趣味、不条理な展開、濃厚なベッドシーンなどを取り入れて土ワイ的なムードを出していましたブラックボックス

といっても僕が見ることができたのはほんの一部で、すべてのエピソードを見たわけではないのですがテレビ
不条理なストーリー展開、フィルム撮影による不気味な映像、血しぶきや裸を出したエログロ的な味わいなどサスペリア
どこか懐かしい昔のB級スリラーといった雰囲気は、僕が見た数話でもじゅうぶんに堪能できましたビデオテープ

フジテレビが過去に製作した『恐怖劇場アンバランス』(1973年)から『日曜恐怖シリーズ』(1978~1979年)に引き継がれたと思われるドクロ
ケレン味を効かせながらアダルトな味わいに仕上げたシュールな怪奇スリラー路線は、その後80年代になるとテレビ
『現代怪奇サスペンス』(1986年)、『現代恐怖サスペンス』(1987~1898年)へと引き継がれることになりますブラックボックス