CAMPER とのコラボのこと その1 | テキスタイル獣道

CAMPER とのコラボのこと その1

記憶はちょっと曖昧なのですが多分25年くらい前、私が就職したばかりの頃に雑誌で一つの靴の小さな写真を目にしました。

 

それは風景写真の様な柄が左右の靴にバラバラに分かれてプリントされていて、両方の靴を合わせると一つの絵が完成されるという靴でした。

 

(※イメージです)確かこんな感じ。

 

うちの社長と2人で「超カッコ良いねー」と。

 

今ではそういう非対称なファッションが普通にあるとは思いますが当時としてはあまりにも斬新で驚きと感動で目がハートになり、こんな靴を履いて歩いたらさぞ楽しかろうと妄想したのです。

 

誌面にはカンペールという靴のブランドのものだとクレジットされていました。

 

聞いたことはあったのですがちゃんと認識したのはこの時が最初で、その後この左右非対称の靴がTWINSというシリーズだと知りました。

 

TWINS、双子。なんてカッコいい靴!メンズでこれがあったら絶対買うのに!そもそも経済的に買えないけど!と、仕事がうまく出来ずにうだつの上がらない日々を送っていた当時の私に衝撃を与えた出来事だったのです。

 

もう無くしてしまいましたがこの雑誌は切り抜いてスクラップブック(懐かしい響き!)に貼って眺めていたのでした。

 

その後、カンペールというのはスペインのメーカーで、シューズメーカーだけど製品はとってもプロダクト的で、グラフィックや店舗デザインにその時々の気鋭のデザイナーを次々と起用する超イケてるブランドなのだという事を知り、憧れまくったのでした。

 

でもその憧れのカンペールの靴を手に入れたのはそれからずいぶん後の話。なかなかそこまでお金が回らなかったのよね。

 

 

さらにそれから本当にずいぶん時間が経った2013年、あのカンペールとカバンの企画でコラボする機会に恵まれました。

 

それは本当にひょんなきっかけで実現した事だったので、「人生分からんもんだ」と、当時あの雑誌の靴のことを思い出して一人しみじみとしていたのでした。

 

 

携帯に入っていた2013年の展示会招待状の写真。多分、当時の自分はよっぽど嬉しかったんだと思う。

 

 

その後もカバンの2回目のコラボを行うなど、カンペールとは企画の内容も含めてとても幸せな取り組みをしてきた訳ですが、メインアイテムの靴には手が届かない状態でした。

それはなかなかアンタッチャブルだったのです。

 

実はそれまでにも何回か靴へのデザイン提案をアプローチしていたのですが、なかなか上手く行かず。

ここぞ!という時にもお決まりのロストバゲージが勃発したりと不運が続き、願いは叶わずでした。

 

 

そして2019年、三度目の正直とばかりにコラボの話が持ち上がるのです。

 

今回も基本的にはカバンの企画でしたが担当のSさんと提案するだけ提案してみようということになり

 

昨年の秋から私は採用されるかどうかも全くわからない企画に全力で取り組み始めたのです。

 

提案するならばTWINS。絶対TWINS。それだけは最初から決めていました。

 

 

全集中で取り組んだおかげか天の計らいか、ある日ついに本国の担当者から突然メールが入ってきました。

 

ずっと待ち望んでいたメールだったのですが、電車移動中の京王線の中でそのメールを見た私は

 

「本当に来るんだ、、、」

 

と、どこか人ごとの様な感じでした。電車の中で泣くとか万歳するとかそういう素敵なストーリーは無いのよね。そんなものだよね、まあいつもそうなんだけど。

 

シミュレーションで柄をはめ込んだデザイン案は好評でとりあえず進行することになったのです。とりあえず。

 

でも実際に靴に柄を入れるというのは思っていた以上に難しく、提案時にシミュレーションでデザインをはめ込んだ状態と立体に立ち上がった状態ではまるで違うのだなと、制作が進行していく過程で思い知りました。

靴って難しい、、。

 

本国の担当者が来日する最終的な詰めの段階ではイメージしている物をそのまま落とし込む為に同じ型の靴を用意し、そこに直接イメージする柄を張り込んでいく事でバランスを見てデザインを確定し、データー化させていきました。

 

 

 

 

実際の靴に紙を貼り付けてバランスを見ながらデザインを決めていきました。これが最終のモックアップ

 

このアナログなやり方が結果的には原寸のモックアップまがいのものが出来上がる事になり、私自身も担当者もイメージを把握、共有が出来て一気にデザインが固まっていったのです。

 

 

つづく