建築学概論(★★★★★) | OKINAWA MOVIE LIFE

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沖縄在住の映画ファンの感想文です。

2013/5/25

@Tジョイ福岡


 今年の『サニー』はこれだ!


 サニーと同様に、過去についての記憶を呼び覚ます人物との出会いにより、過去にけじめをつけるタイプの青春映画。大好き。


 映画監督にして脚本家にしてスクリプトドクターにしてブルボニストの三宅隆太さんが去年のワーストムービーに選んでいたのが『サニー』だったわけです。去年一番好きな映画だっただけに、少なからずとまどいがあった。

 ただ、この前「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」という番組におけるコーナー「サタデーナイトラボ」内にて「心霊映画」特集をした際に、その理由がわかった気がしたんですね。

 心霊とはある時点で時間が止まっている者と定義される。そのため、時間を進めている人間をひきずりこむ存在として、恐ろしく描かれる。『サニー』は除霊に失敗しているのだ(それでもぼくは『サニー』好きだが)。


 さて、『建築学概論』。観終わった後、これは三宅監督好きになるんじゃないかと思った。


 この映画にはぼくがいた。


以下ネタバレ。


 この映画は、現在建築士として活躍する主人公と、彼に仕事を依頼しに来た初恋の人のエピソードと彼らが出会った時のエピソードが交互に描かれる。

 この構成だけでもぼくはぐっと来てしまった。あの頃あんなに頼りなくみえた人物も、ひとかどの人物に成長できるのだと。

 ただ、何よりもぼくがぐっときたのは、前述の定義でいうところの「除霊」の方法だった。


 初恋、それはたいてい報われないものだ。

 そして、若かりし頃の恋って要領がわからないゆえにあほうな行動をとってしまうものだ。


 この映画の中で主人公は初恋の人を「クソ女」と言っているようなそぶりがある。

 ただ、この映画を観進めていくと、主人公は一見被害者のように見えて、実は加害者だったんじゃないかと思えてくる。

 要は、過去に再度向き合い、自分が加害者だったということを認めることで過去にけりをつけ、現在に再度向き合うという、実に大人な着地が素晴らしいと感じた。


 それと、90年代を舞台にした青春劇というのは、自分にとってちょっとあこがれていたお兄さんたちの世代なんだなと実感した。