全ては米国が抱えている巨額財政赤字の削減、米企業の国内投資の促進、雇用機会の増大を図るために。
[読売]オバマ大統領、多国籍企業増税へ…租税回避取り締まり強化 オバマ米大統領は4日、米多国籍企業への課税を強化すると発表した。外国子会社への課税を強化するほか、個人の富裕層を含めタックスヘイブン(租税回避地)を活用した課税回避の取り締まりを強化する。
課税制度の「抜け穴」をふさぎ、今後10年で2100億ドルの増収を見込む。
オバマ大統領は、「だれも、この(景気の)悪い時期に増税は好まない。しかし、現在の税制は悪用を許す多くの抜け穴がある」と述べた。多国籍企業の増税に踏み切ることで、巨額の財政赤字を穴埋めし、外国への人材流出も防ぐ狙いだ。
これまで繰り延べなどが認められていた外国子会社の収益に対する課税を強化する。また、4月の金融サミットで、税率を低くして資金を呼び寄せるタックスヘイブンの規制強化で合意したことを受け、取り締まりを強化する。
ただ、企業側からの反発予想のほか、米議会も否定的な意見も多く、法案成立には曲折も予想される。
G20でも合意されたタックス・ヘイブン(租税回避地)の規制強化であるがどの国よりも先んじてオバマ大統領が強化を訴えた。
参考:G20でタックス・ヘイブンの「ブラックリスト」公表が意味するもの
しかも今回さらに踏み込んで米企業の海外投資をも厳格に監視するところが現在米国の置かれた財政状況の厳しさを物語っている。
米国の現行税制では米企業が海外で得た利益は海外で再投資すれば課税を繰り延べることが可能となっている。
オバマ大統領はこれを「とんでもない」不正が行われていると非難しており、海外投資への税制優遇措置を2011年から見直す考えを提案した。
具体的には海外で得た利益の納税先送りを禁じ、利益を計上しない限り経費の控除を認めないとの厳しい内容である。
税制見直しにより2019年までの9年間で601億ドル(約6兆円)の増収となる見通しも示した。
タックスヘイブンの取り締まりでは租税回避地においている海外子会社についての報告義務を米企業に課す。
また米国人の富裕層の税逃れに関与している海外金融機関に対しても、顧客情報の開示義務を厳しくする。
その上で課税逃れの罰則も強化する考えだ。また厳格化するために内国歳入庁の職員を新たに800人増員するとのことだ。
これらの税制改革案により今後10年間でトータル2100億ドル(約21兆円)の税収増につながると試算している。
オバマ大統領はこの改革案に対して以下のように述べている。
「米国企業が世界で競争力を維持することを望むが、それは雇用機会を外国に輸出したり、利益をタックスヘイブン(租税回避地)に移転することで達せられるべきではない」
また税制改革により増えた税収分は「財政赤字の削減、法令を順守している米企業への減税、生活の厳しい世帯への支援」などに充てたいとの考えだ。
加えて国内投資を促進のため国内の研究開発投資の税制優遇として10年で750億ドル分の研究開発減税を目指すことも述べた。
ただ共和党や大企業からは以下のような反発する声も多い。
・今以上に経費の安い海外に拠点を移すことにつながる。
・米国企業の国際競争力を阻害することにつながる。
米国の未来を考えた場合、オバマ大統領が実行しようとしている政策は的確であり合理的であると考える。もしかすると日本の「一億総中流」がモデルなのかもしれない。
資本主義で大きい政府を目指した結果にある日本を反面教師として効率を考慮しなければ改革のスピードの鈍化を招く。
オバマ大統領が最後まで無事に変革を全うできることを期待して。