消える文章
このあいだの日曜日、仲間内の集まりをお台場で開くことになり、午前中に家を出た。10月も後半だというのに、妙に蒸し暑く、不快指数の高い日でありました。
新橋駅で、ゆりかもめに乗るために電車を降りる。時計を見ると若干余裕があったので、ゆりかもめの改札手前にあるスターバックスに入り、アイススターバックスラテのグランデサイズを注文した。本当は最大最強のベンティサイズにしたかったのだが小銭がちょうどグランデサイズの分だけあったので、キリがいいからとこのサイズにしたのである。
アイスラテを片手に、俺はゆりかもめに乗り込んだ。休日のわりには乗客が少なく、余裕でボックス席の窓際に座ることができる。俺は座るやいなやアイスラテを窓際の手すりの上に置き、iPad2を取り出して、Bluetoothのキーボードを接続した。そしてカタカタと小気味いい音を立てながら文章を書き始める。乗車時間が15分ほどあったので、コラムをひとつ書いてくれようと思ったのだ。それが、これの前にアップした“うでむし”のエッセイなのだが、まあそれはいいや。時折アイスラテで喉を潤しつつ、文字を打ちまくる。筆はかなり滑らかだった。
しかし、文章を半分くらい書いたころだろうか。予期せぬ事態が起こる。もともと幅の狭い手すりに置いたのがいけなかったのだろう。ゆりかもめがカーブに差し掛かったときの衝撃で、なんとアイスラテが、
ビシャーーーーン!!
と豪快に落下してしまったのだ! 焦った拍子に落下途中でつかんでしまったため容器がひしゃげ、中のアイスラテがジャボジャボと飛び散る。すでに半分以上飲んでしまったあとだったので大事故にはならなかったのだが、数滴の液体がiPad2のキーボードに引っ掛かってしまったのが見えた。俺のまわりに誰も座っていなかったのが、唯一の救いだった。
俺は慌てて、飛び散ったアイスラテをハンカチでふき取った。幸いそれほど広範囲には散っていなかったのですぐに作業は終了する。ホッ、よかった……。俺はちょっと安心して、再び原稿制作に取り掛かろうとした。ところが!
ビーーーーーーーーーーーーーーーーー!
なぜか知らないが画面のカーソルがすごい勢いで逆走(?)して、俺が書いた文章を消しまくっているではないか!! 慌てて止めようと思ったが、そもそもの原因がわからないのでどうにもできない。俺、ひとりパニックに陥る。
「だ、誰だ!? 俺の原稿を消すヤツは!! やめろやめろ! バックスペースを押すんじゃありません! あああ、消える! 俺が書いた文章が消えるぅぅぅぅぅ!!」
いきなりこんなことになった原因は、たったひとつしかあるまい。
俺がキーボードにこぼしたアイスラテ--。
それほど大量に引っ掛けたわけではなかったが、どうやら内部に、致命傷とも言うべき深刻なダメージを与えてしまったらしい。
俺はキーボードの電源を切り、さらにBluetoothも切断して、ようやくバックスペースの暴走を止めた。しかし、すでに大半の文章は消え去っており、俺は静かに揺れるゆりかもめの中で呆然とするしかなかった……。
新橋駅で、ゆりかもめに乗るために電車を降りる。時計を見ると若干余裕があったので、ゆりかもめの改札手前にあるスターバックスに入り、アイススターバックスラテのグランデサイズを注文した。本当は最大最強のベンティサイズにしたかったのだが小銭がちょうどグランデサイズの分だけあったので、キリがいいからとこのサイズにしたのである。
アイスラテを片手に、俺はゆりかもめに乗り込んだ。休日のわりには乗客が少なく、余裕でボックス席の窓際に座ることができる。俺は座るやいなやアイスラテを窓際の手すりの上に置き、iPad2を取り出して、Bluetoothのキーボードを接続した。そしてカタカタと小気味いい音を立てながら文章を書き始める。乗車時間が15分ほどあったので、コラムをひとつ書いてくれようと思ったのだ。それが、これの前にアップした“うでむし”のエッセイなのだが、まあそれはいいや。時折アイスラテで喉を潤しつつ、文字を打ちまくる。筆はかなり滑らかだった。
しかし、文章を半分くらい書いたころだろうか。予期せぬ事態が起こる。もともと幅の狭い手すりに置いたのがいけなかったのだろう。ゆりかもめがカーブに差し掛かったときの衝撃で、なんとアイスラテが、
ビシャーーーーン!!
と豪快に落下してしまったのだ! 焦った拍子に落下途中でつかんでしまったため容器がひしゃげ、中のアイスラテがジャボジャボと飛び散る。すでに半分以上飲んでしまったあとだったので大事故にはならなかったのだが、数滴の液体がiPad2のキーボードに引っ掛かってしまったのが見えた。俺のまわりに誰も座っていなかったのが、唯一の救いだった。
俺は慌てて、飛び散ったアイスラテをハンカチでふき取った。幸いそれほど広範囲には散っていなかったのですぐに作業は終了する。ホッ、よかった……。俺はちょっと安心して、再び原稿制作に取り掛かろうとした。ところが!
ビーーーーーーーーーーーーーーーーー!
なぜか知らないが画面のカーソルがすごい勢いで逆走(?)して、俺が書いた文章を消しまくっているではないか!! 慌てて止めようと思ったが、そもそもの原因がわからないのでどうにもできない。俺、ひとりパニックに陥る。
「だ、誰だ!? 俺の原稿を消すヤツは!! やめろやめろ! バックスペースを押すんじゃありません! あああ、消える! 俺が書いた文章が消えるぅぅぅぅぅ!!」
いきなりこんなことになった原因は、たったひとつしかあるまい。
俺がキーボードにこぼしたアイスラテ--。
それほど大量に引っ掛けたわけではなかったが、どうやら内部に、致命傷とも言うべき深刻なダメージを与えてしまったらしい。
俺はキーボードの電源を切り、さらにBluetoothも切断して、ようやくバックスペースの暴走を止めた。しかし、すでに大半の文章は消え去っており、俺は静かに揺れるゆりかもめの中で呆然とするしかなかった……。