Evernote | 大塚角満オフィシャルブログ「大塚角満のブログ」Powered by Ameba

Evernote

 先週から"Evernote"を使い始めた。オンライン上にあるデータ保管庫に任意の端末でアクセスし、情報を引っ張ってきたり、修正できたりするというサービス。いわゆる"クラウド"ってやつですね。

 Evernoteの存在自体はずっと前から知っていたが、とくに興味の湧くものではなかった。「便利そうだけど、ま、俺には関係ないナ」と思っていたくらいである。しかし、仕事のスケジュールが複雑になり、使う資料やテキストが増えてくるにつれて「どっかに一括して自分用の情報を溜め込んでおけないものか……」と考えるようになった。所有するコンピューター端末が増えてきたこともそう思うようになったきっかけのひとつで、スマホ、iPod、ノートPCと便利なマシンをいくつも持っていながら機能を1台に集約することができず、「コレはこっちに入ってるんだっけ?」、「アレはどこにしまったかな……」なんて思うことが続発するようになったのだ。

 そんなときに俺の脳裏に閃いたのがEvernoteである。クラウド上に情報をぶち込んでおけば、どの端末からでもアクセスして閲覧、書き込み、上書きなんかができてしまう。それもテキストだけではなく、写真や音声データも簡単に放り込んでおけるというからタマラナイではないか。俺は、隣の席に座っているガジェットマスター、オポネ菊池に意見を求めた。この男は、こういうことにやたらと明るいのだ。

「ねぇ、菊池。Evernoteって使ってたりする?」

 言われた菊池、「何をいまさら!!」と言わんばかりのドヤ顔でつぎのように滔々と語った。

「使っていますとも!! いまや、Evernoteナシでは僕はやっていけませんよ。最近は原稿や議事録といったテキストはもとより、インタビューの質問事項とか行き先の地図なんかもここに入れておきます。万が一、質問や地図を忘れても、Evernoteにアクセスすれば引っ張り出せますからね!」

 おおおおお! それは確かに便利このうえないな!! とくに、“取材用のメモとか地図を忘れる人トーナメント”があったら間違いなく日本でベスト4に入る自信のある俺には、ピッタリのサービスである。「うおお!」、「すげえ!」、「いいね!」を連発する俺の背中を、菊池はさらに押してくる。

「たとえば会議で、白板にいろいろ書いたとします。僕はこれをスマホで撮影して、その画像データを直でEvernoteに入れてしまうのです。そして席に戻ってきたら今度は○※▲αγ□でPDFがυ%#◎※θにしてβω$£△☆という感じですよ!!」

 後半から菊池がガニメデ語で話し始めたため俺は一気にお地蔵さんと化してしまったのだが、話半分に聞いても、俺らのような情報の洪水にさらされている人間にとってEvernoteは格好の便利ツールのようである。

「俺もEvernoteを導入するぞ!!!」

 単純に感化された俺を、菊池はニヤニヤしながら眺めるのであった。

 さっそく俺は、自分の所有するあらゆる端末(会社のPC、自宅のPC、スマホ、iPad2)にEvernoteを入れた。そしてネットに転がっているHow toを眺めながら、ちょこちょこといじくってみる。使いかたはしごく簡単で、基本使用についてはあっと言う間にマスターすることができた。

 そんなある日。俺は取材で外に出た。インタビューがあるのだ。

 その場所に行くのは、このときが初めてだった。インタビュー相手も初めてお会いする人だったので、やはりちょっと緊張する。俺はごそごそとカバンをまさぐり、中に入れたはずの会場地図と、質問事項をプリントアウトした紙を引っ張り出そうとした。

 ところが。

 地図も質問事項も、カバンの中に入っていない……。会社を出る直前に「プリント、忘れないように机の目立つところにおいておこう!」とつぶやきながらその2秒後にまんまと忘れ、空っぽのカバンを持って会社を出てしまったようだ。でも、俺は慌てなかった。

「こういうときのために、俺はEvernoteを導入したのだ!」

 鼻息荒くスマホを取り出し、Evernoteを起動する。そして、クラウド上にあるデータ保管庫をごそごそとまさぐった。しかしそこで、俺は衝撃の事実に気付く。

「あ……。準備したデータを、Evernoteに入れるのを忘れた………………」

 いくら便利なツールでも、それを使う人間のほうが対応していないとまったく意味をなさないのは、自然の摂理というものだ。

「俺はチンパンジーか……」

 きびすを返した俺は、会社に向かってパタパタと駆け出した……。