危機一髪 | 大塚角満オフィシャルブログ「大塚角満のブログ」Powered by Ameba

危機一髪

 家から最寄駅までママチャリで通っているのだが、最近この愛車がヘタれてきた。買ってから3年くらいしか経っていないのでまだまだ現役でいてほしいのだが、前輪の損傷がじつに激しい。壁に突っ込んだとかドブにはまったとか、そういう物理的な事象に見舞われた覚えはまったくないのに、パッと見ただけで前輪が波打っているのがわかるのである。

 まあそれでも、走りに大きな影響はないので気にせず乗っているのだが、こいつが意外なところで悪戯をして持ち主を困らせることがある。

 いまもっとも困っているのが“ライト”である。ダイナモタイプで前輪に取り付けられているんだけど、接触部分が波打っているもんだから過剰接地になったり不接地になったりしているらしく、ほとんどライトの機能を果たしていないのだ。

 そして何より、接触不良から来ているらしい“騒音”がすさまじい。思わず赤面してしまうほど、ダイナモから盛大な音が発生するのである。文字に表すと、

 わよんわよんわよんうぃっく! わよんわよんわよんうぃっく!! わよんわよんわよんうぃっく!!

 こんな感じ。“わよん”の部分は過剰接地のところで、“うぃっく”のところは接触不良のところのようだ。しかもダイナモの金属部分がスポークに接触しているらしく、まるでハードロックの伴奏のように、

 ビンビンビンビンビンビンビンビンッ!!

 という金属音がのべつまくなしに流れている。エンジンを積んでるわけでもねーのによくぞこれだけの大音量を発生させられるもんだ……と感心してしまうほどだ。

 しかもこれ、チャリのスピードが上がれば上がるほど騒音のテンポが速くなり、音も大きくなる。駅から家に向かう途中に急で長い坂があるんだけど、そこを通るときはいつも以下のような音になる。

 わよわよわよわよわよわよわよわよわよわよわよわよ!!!

 バックに流れる伴奏は、「ビビビビビビビビビビビビッッッ!!」というデスメタルチックなものに。もう、恥ずかしいったらない。

 これがあまりにもイヤである日、ついついこの坂の途中で「うるせえっ!!!」と自分のチャリにブチ切れて、ライトを消してしまったことがある。無灯火イクない!! と思ったが、クルマも人影もまったく見えなかったし、時間にして5秒くらいのことなので……と魔が差してしまったのだ。すると……。

「はいはい~! そこの自転車止まって~!」

 暗闇からいきなり声を掛けられ、急停車する俺。その瞬間(あ! もしや……)というある種の確信が脳裏に閃く。恐る恐る振り向くとそこには、思った通りでっぷりと太ったおまわりさんが……。

「ライトつけてね~! ハイ、一応名前聞いとこうか~!」

 この歳になっておまわりさんに注意されるとは……。俺は激しく動揺し、思わず小声で「おおつかか……」とまで言いかける。でも、すんでのところで「はっ!!」と気づき、「おおつかひでゆきでぇす……」と答えることができた。危ないところだった。

 以来、俺はいくら恥ずかしかろうが暗くなったらライトをつけて、「わよんわよんわよんうぃっく!!」とけたたましい音を立てながら自転車を運転している……。