ハイパーレスキューの言葉 | 大塚角満オフィシャルブログ「大塚角満のブログ」Powered by Ameba

ハイパーレスキューの言葉

 毎週買っている週刊誌『FRIDAY』の4月8日号は、東日本大震災関連のニュースでページが埋め尽くされていた。原発のこと、被災者のこと、そして政府を糾弾するもの……。そんな、たくさんの切り口から紡がれた記事の中に、東京消防庁に所属する“ハイパーレスキュー”の決死の活動を振り返った3ページがある。「必ず帰ろう!!」という手書きのメッセージが書かれた消防車の写真をトビラに、涙なしでは読めない勇者たちの活躍が綴られているのだ。

 この記事を読んで、俺は何度も泣きそうになった。そのいくつかのやり取りを紹介したい。

 『FRIDAY』の記者がハイパーレスキューの冨岡豊彦総括隊長に「国民のひとりとして、皆さんの活動に感謝します」と言葉を掛けると、冨岡隊長は頭を振りながらこうつぶやいたと言う。

「俺たちはプロだから--」

 そして、危険な放射線が渦巻く現場での作業を終えた隊員は、記者に向かってこう言ったというのだ。

「私たちは東京の消防隊員です。しかし私たちはそれ以前に、日本の消防隊員であると思っています」

 ぜひぜひ多くの人に読んでもらいたい記事だ。

 そう言えば2004年に起きた新潟県中越地震の折も、ハイパーレスキューは獅子奮迅の活躍をして多くの被災者を救った。そのときの活動を振り返る隊員たちの座談会が週刊ポストに掲載されたのだが、俺はこのときも強く心を叩かれて1本の記事を書いたんだった。それが文書ファイルの中に残っていたので、長いけどアップしたいと思う。

■週刊ポスト 2004年12月17日号

 最近、テレビを観て泣いたことがありますか? 俺は自他ともに認める泣きたがりなので、わりと頻繁にある。「安っぽいヤツだなぁ」なんて思わないでくださいね!

 先日、何気なくニュースを観ていたら、新潟県中越地震で奇跡の生還を果たしたユウタちゃん救出劇のドキュメンタリーが流れた。最初は休日の寝ぼけ頭でなんの感動もなく眺めていたのだが、東京から派遣されたハイパーレスキューの面々の人間性までえぐった深い内容に、雷に打たれたような衝撃を受けた。「こんなかっこいい人たち、見たことない……」と思い始めたらもう止まらない。俺は「最高だよこの人たち……」とつぶやきながら、いつのまにかポロポロと涙を流していた。余震があれば自分たちの命も危ない、という極限の危険性を誰よりも認識しながら、小さな命を救うために泣きながら土砂を掻き出している隊員たちの姿に、強く強く心を打たれてしまったのだ。ひとりしか助けられなかったことに涙する彼らを見て、「こんな人たちもいるんだ……」と救われた気持ちになった。

 このハイパーレスキューの隊長たち3人が、週刊ポストの連載記事"メタルカラーの時代"に登場した。ノンフィクション作家の山根一眞がホスト役になって、日本の産業を縁の下から支える技術者(メタルカラー。日本の工業力を世界のトップ水準に引き上げた産業界の主役、の意)と対談(鼎談以上になることもあるけど)するページで、俺が週刊ポストの連載記事の中でいちばん好きなコーナーでもある(注・連載はすでに終了しています)。

 本来、このコーナーのテーマは"科学技術"にある。ハイパーレスキューの面々が登場するそもそものきっかけも、ニュース等で話題になった人命検索装置"シリウス"にあった。しかし話題はいつしか人命救助そのものに言及するようになり、隊員たちの苦悩、ジレンマ、喜び、そして悲しみが、山根一眞の見事なハンドリングで彼らの口から語られていく。凄烈にして悲愴。胸が裂けるほどの悲しみを背負った彼らの言葉を読むにつれて、俺はまたまた目頭が熱くなってしまった。

 俺がいちばん心震えたのは以下の部分だ。要約しよう。

 ユウタちゃん救出のとき、誰かが土砂にできた隙間入って、直接彼を抱き上げるしか助ける手段がない、という状況になった。そのとき、隊員のひとりである田端隊員が隊長に向かって「俺に行かせてくれ」と言ったという。しかし、いつ余震が来て土砂で埋まるかわからない穴に、隊員を入れることができるのか。きびしい決断を迫られる隊長に田端隊員は、「行かせてくれ!」と涙ながらに訴える。そして隊長は、「よし、行け!」と田端隊員に命令。それが、あの奇跡の救出劇として日本全国に感動をもたらした。

 そして俺が感動したのは、以下の部分だ。これはコメントをそのまま書いてしまおう。

 巻田隊長「現場で泣いている隊員も多かった。私も掘る途中から気持ちが高ぶり、ユウタちゃんが出てきて涙が出た。でも、そのあとに田端が無事に穴からはい出てきてくれたときに、もっと泣けました」

 その田端隊員も、救出作業を終えて被災地から東京へ帰るときに、別の隊員から手渡された「ユウタちゃん救出」の号外を握りしめてボロボロに泣いていた、という……。

 本当に、この人たちはすばらしい。ただただ、拍手を贈りたい気分だ。最近、物騒でやりきれない事件が続発しているけど、ハイパーレスキューのように、必死になって人を助けようとしている人たちがいるってこともしっかりと覚えておきたい。

 熱い男って、いいなあ。俺もがんばらなくっちゃ。