小説よりもステキな恋の話 | 大塚角満オフィシャルブログ「大塚角満のブログ」Powered by Ameba

小説よりもステキな恋の話

 いまPCの整理をしていて過去に書いた文書ファイルもチェックしておるのですが、その中にここで紹介するエッセイがありました。

 いまでもファミ通.comを掘り進んでいけば発見できるんですけど、ちょっと埋もれさせるのは惜しい! と我がことながら思ってしまったのでここに貼り付けさせてもらいます。

 かつて、モンハンのエッセイを書き始める前に『みんなのGOLF オンライン』というゲームのプレイ日記を書いていたんですけど、その中の1編です。俺のよくわからない恋愛小説の1000倍くらいステキな話ですよ。ところどころ、ゲームの専門用語があってわかりづらいかと思いますが、雰囲気だけでも味わっていただければ。

 エッセイのタイトルは、“ロビーのジューンブライド”--。

◆◆◆

 6月のある日、ステキな結婚式に出席してきた。新郎新婦のおふたりとはそれほど面識があったわけではないのだが、彼らの友だちから"ぜひミドレンジャさん(俺のことね。念のため)に出席してほしい"との要請をいただき、参加させてもらったのだ。僕が"ミドレンジャ"の名前で出席する結婚式……。そう、『みんGOLオンライン』のロビーで、すごくさわやかであったかい結婚式が行われたのだ。

 新郎のDさんと新婦のRさんは、こういってしまうと身も蓋もないかもしれないが、本当にごくふつうの、誰のまわりにも存在するひと組の幸せなカップルである。出会いは、共通の友だちといっしょに行ったカラオケ。このへんも、微笑ましいくらいポピュラーなふたりだ。

 そんな、ある意味どこにでもいそうな(悪い意味じゃなく)彼らに、ほかのカップルとは決定的に違うある特徴があった。

 それはほかの人よりもちょっとだけ、『みんなのGOLF』というゲームが好きなこと--。

 Dさんはシリーズ1作目からの『みんGOL』ファン。そしてRさんも、Dさんの影響で『みんGOL』が好きになり、『3』が発売されたときには毎日のようにふたりで対戦に明け暮れていたそうだ。この『みんGOL』というふたり共通の趣味が、思いも寄らない幸せと感動を運んでくることになる。

 2003年6月12日に発売された『みんなのGOLF オンライン』を先にはじめたのは、新婦のRさんのほうだ。オンラインゲームをプレイするのはこれが初めて。全国津々浦々からいろいろな人が集うという、オンラインゲームならではの特殊な環境に最初のうちはとまどいつつも、明るく、人なつっこい性格のRさんはすぐにたくさんの友だちを作る。「こんなおもしろいゲームがあったんだ」と感激したRさんは、当然のようにDさんに『みんGOLオンライン』を勧めた。そしてDさんがこのゲームにハマるまで、さして時間はかからなかった。

 それから毎日のようにDさんとRさんは『みんGOLオンライン』にログインして、共通の友だちとロビーライフを満喫。そしてそれと平行して、ふたりは将来を約束しあうひと組のカップルとして着実に幸せを育み、ついに正式に結婚することとなった。2004年3月はじめのことだ。

 「正式に結婚することになり、挙式を9月に行うことも決めたんです。そしてこのことを、友だちのGさんに話したことからすべてが始まりました」(Rさん)

 うれしそうに結婚の報告をするDさんとRさんの話を聞いて、Gさんは"自分たち、ネット上の友だちたちで何かお祝いをすることはできないだろうか"と考えた。全国に散らばるネット上の友だちが、この幸せなカップルの結婚式に出席することはほぼ不可能。だったら……。

 そして彼は3月はじめに、『みんなのGOLF』の公式サイト"みんGOL.net"の掲示板につぎのような書き込みをする。

 "SCEさん、お願いです。まだ先の話なのですが、『みんGOL』内での友だちが結婚する事になりました。そこで、ロビーキャラのパーツにウェディングドレスとタキシードがあればいいなと思いまして……。SCEさん、よろしくお願いします。このスレ見た方は、よろしければ署名お願いします!"

 この書き込みは、Gさんが驚くほどの反響を呼んだ。タイミングよく、投稿リアル大会や新ロビーパーツのリクエストが始まった時期でもあったのだが、彼らの友だちはもちろんのこと、まったく知らない人からも「おめでとう!」、「アイテム、導入されるといいね!」といった書き込みが連日のようになされていく。いつのまにか、書き込みは400件を超えた。顔どころか、名前さえも知らない人たちからの祝福と激励の言葉の数々……。「書き込みを見るたびに、Rは涙ぐんでました」とDさんは当時を振り返る。それくらい、うれしかった。

 そして彼らの熱意は、きちんと『みんGOLオンライン』制作チームに伝わった。6月の結婚シーズンにあわせて、ウェディングドレス、タキシード、ブーケといった"結婚式セット"とも言うべきロビーアイテムが配信されることになったのだ。DさんとRさんは、素直に感激した。しかしふたり以上に、アイテム導入に尽力した友だちたちの喜びようはただごとではなかった。彼らは口々に言い合った。"ロビーで結婚式ができる!"と。

 結婚式セット導入の立て役者とも言うべきGさんはすぐに、友だちのMさんに相談した。Gさんの年齢はまだ二十歳。ロビーでの擬似的な結婚式とはいえ、きちんと仕切れる自信がない。そこで、年長者で人望も厚いMさんに、結婚式のプロデュースを任せたい、と思ったのだ。Mさんは快諾した。本当の結婚式には出席できない自分たちだけど、このロビーで、本物のそれに負けないくらい立派な式を挙げてやろう。Mさんを中心に、"結婚式推進プロジェクトチーム"が動き始めた。

 そんなMさんが僕の前に現れたのが、6月のはじめのこと。僕とMさんは以前から面識があり、結婚式を挙行すると決まってすぐに、飛んできてくれたのだ。「6月○日に結婚式を行います」とMさんは言った。「ミドさん、ぜひ出席してください」。

 もちろん、僕は快諾した。どんな式になるのか想像もつかなかったが、ぜひその試みを見届けたいと思ったのだ。

 そして6月某日。ロビーでの結婚式が挙行された。

 指定されたロビーに行ってみると、件のMさんが飛んできて「受付をお願いします^^」と言った。見ると、ここはさくらロビー。ロビーの中央に受付然としたおっさん(コンピューターのキャラ)がいて、いかにもな雰囲気を醸し出している。すでにロビーは参加者でいっぱいで、本当の結婚式場に迷い込んだような気になってしまった。

 おおかたの参加者が集まると、再びロビーを移動。飛んだ先は赤い絨毯が敷いてあるひまわりロビーだ。

 絨毯のまわりに出席者が整列すると、主役である新郎新婦が厳かに入場。ロビーに集まった20人ほどの出席者から万雷の拍手が巻き起こる。拍手のボディーアクションはこの時のために用意されたのでは、と思ってしまったくらい、じつに絵になる光景だった。

 結婚式は、じつに正々堂々とした立派なものだった。まず、来賓である僕が挨拶(非常に僭越でしたが……)し、続いて新郎新婦ととくに関わり深い友人たちによる挨拶。新郎新婦との出会いから、今回の式にいたるまでの道のりがいろいろな人の口から語られた。チャットできちんとした挨拶をすることは、じつに難しい。ふだんキーボードを使って仕事をしている僕でも、テンポよく語るのは骨が折れた。友人代表の人たちの中には、コントローラーでチャットをしている人もいた。そんな彼らが、ゆっくりと、でも一生懸命に、自分たちがどれだけふたりの幸せを願っているのか、そしてどれほどふたりと知り合うことができてうれしいか、ということを語る姿を見て、僕は静かに感動していた。「これは本当の結婚式なんだ」と改めて思い知った。彼らの素朴で暖かいコメントを聞いていた新郎のDさんがふいに「Rが、ボロボロに泣いてる;;」と言った。新郎のそのコメントを見て、僕も画面を直視することができなくなってしまった。ここが会社じゃなければ絶対に泣いてた、と情けないながらも確信した。

 式は滞りなく進行した。ロビーを再び移動し、新郎新婦の衣替え。たんぽぽロビーの、中央にあるピアノのまわりで待機していると、タキシードとウェディングドレスを身に纏った新郎新婦が、巨大化(このロビーではキャラクターを大きくすることができる)して登場した。主役のふたりが際だつ考え抜かれた演出に感心していると、新婦のRさんの口から感謝の言葉があふれ出した。結婚式のきっかけを作ったGさんや、式そのものをプロデュースしたMさん、そして集まってくれた友だちと、残念ながら出席できなかった多くの友人たち……。すべての大切な人たちへむけた言葉の数々の、なんと尊いことか。泣きじゃくりながらキーボードを叩くRさん(後日、そのときのリアルな状況をDさんに聞きました^^)は最後に、晴れやかな笑顔の中でこう言った。

 「幸せになります^^」

 命のようにあたたかい友人たちに祝福されたDさん、Rさんのふたりは、来る9月に(リアルな)結婚式を挙げる。しかし2004年の6月のある日に、顔も本名も知らない、でも本当に心優しい"ロビーの友だち"に挙げてもらったこの式のことは一生忘れないだろう。

 Dさん、Rさん、末永くお幸せに。あなたたちのまわりに集うステキな友人たちとともに、おふたりの幸せを願っています。

◆◆◆

 なんか、自分で書いたくせにいま読んでもちょっと泣ける……。

★★★緊急告知!!★★★

突然ですが、告知です。2011年3月12日、13日に秋葉原でエンターブレインの創立10周年を記念したイベント“eb!フェス2011~10周年感謝祭~” が開催されます。豪華キャスト陣によるステージイベントを中心にさまざまな催しが行われる予定なのですが、ここでワタクシめもちょろちょろと以下の企画を実施させていただくことになりました。

■サイン会
http://www.enterbrain.co.jp/10th/ebfes/sign01.html

3月12日(土)、午前11時~午後1時までサイン会を行います。『逆鱗日和』シリーズを会場で購入していただいた方限定にはなりますが、サインの ほか、『3rd』のギルドカード配布、さらに『逆鱗日和』印の缶バッジセットをプレゼントする予定です。限定100名なので、どうしても参加したい……と いうありがたいお方は、上記のページから“参加権”の入手を! 参加権の応募は3月7日までなのでお早目に……。なお、12日(土)は終日eb!フェスの 会場にいる予定ですので、お気軽に声をかけてくださいね。

■逆鱗日和ライブ
http://www.enterbrain.co.jp/10th/ebfes/satellite.html

イベント中、eb!フェスチャンネルというUstream放送が行われ、我らが『逆鱗日和』も生放送にチャレンジします。午後1時30分~午後3時 まで、トークしたり『3rd』で遊んだり、会場に来られたお客さんと協力プレイをしたりする予定。遠方にお住まいで『逆鱗日和』イベントには行けないとい う方は、この機会にぜひ“動く角満”をお楽しみいただければ……。お近くにお住まいの方で、番組に出て角満といっしょに遊んでやってもいい、というお方は 会場に来てくださいね。番組視聴については、公式サイトを確認してくださいな。