「それでは宜しくお願いします」

「分かりました。一生懸命に努めさせて頂きます」

これはクライアントと契約を締結した際に必ず使う私の言葉だ。

もっとも、この時はあくまで「浮気調査」として一生懸命にやらせて頂く事を申し述べたまでで、この調査が思わぬ展開を見せるなんて考えてもいなかった。

何度も頭を下げ、最後は両の手で握手をしながら河原氏は帰っていった。それは、妻の浮気を危惧するものなのか、それとも自らの会社の事なのか…　

河原氏の帰りを見届けた後、相談室の中には私と狩野省吾弁護士２人だけになる。すると先生はすぐに内線で「コーヒー」を出してもらうように頼んだ。

「梅ちゃん、さぁ、ここからが本題だ」

「あ、先生。とりあえず先日はありがとうございました。本当に楽しかったです。またお願いします」

私は微笑みながら礼を言う。先生は片目を瞑った状態のまま、手を横に振りながら言った。

「なんの。私も久しぶりに楽しんだよ。こちらこそ、これからはお互い暇を見つけてたまに飲もう」

何より嬉しい言葉だった。昔からの念願が叶ったようで否応なしにテンションは上がる。しかし、その言葉と反する様に先生は少し厳しい表情に変わり、語り始める。

「例の情報漏洩の件、梅ちゃんはどう思う？　」

私は少し考えて返事をした。

「正直言って、クライアントの状態を見る限り、思い込みの線も消えないと私は思います」

「う～ん…　」

先生は唸りながら椅子に深く腰掛け直した。

「失礼します…　」

３回ノックの後、珈琲をトレーに乗せた女性が、ドアを開けて入ってくる。手際良く、先に出ていたお茶を下げ、私、そして先生の順にコーヒーを出す。

「何度もすみません。ありがとうございます」

「いえ、どうぞ…　」

すぐに女性は退室し、再び相談室の中には２人の沈黙が流れる。私は沈黙を振り払う様に先生に話しかけた。

「先生がそこまで重要視されているのには何か根拠があるのでしょうか？　」

すると先生は私の方をチラリと見る。

「梅ちゃん、下世話な話だが、河原氏の婚姻期間とLINEの履歴、そして価格被り。この３つは偶然に重なったものだと思うかい？　」

「……　」

「梅ちゃんも気付いているとは思うが、彼が離婚する際にも実は前妻から相談を受けた事があってね」

「前の奥さんからですか？　」

「Aドラッグストアの顧問をしているから自然の流れなのだろうが、いきなり河原氏が離婚を切り出したらしい。今だからこそ言うが、実は前妻にも梅ちゃんの存在は伝えてあったんだ」

「そうだったんですか…　」

「あぁ、最終的には多額の財産分与で決着したから前妻も大人しく引き下がったが、お察しの通り、現在の嫁が原因である事は間違いない。本人はバツが悪くて口には出さないけどね」

「あぁ…はい」

「だから今日、彼を梅ちゃんより先に呼んで今の嫁と出会った経緯を話して欲しいと頼んだんだよ」

「……　」

「河原氏はクラブで知り合ったとか何とか言ってはいるが、まだ私にも何か隠している」

「え！？先生にもですか？？　」

「あぁ…　」

先生はそう言いながらコーヒーカップにそっと口を付けた。

（続く）

㈱OTS探偵社ホームページ

あいざわ調査室ネットショップ

←（騙されたと思って押してみよう）
にほんブログ村

←（もう一度♡）
にほんブログ村

弊社は情報を管理する会社である都合上、上記のお話だけに限らずブログ内、全ての「グダグダ小説」は全て「フィクション」です。実在する人物、団体は、私を含むスタッフ以外、すべて架空の物です。弊社で行われた調査とは一切関係ございませんのでご了承のうえお楽しみ戴ければ幸いです！それからお話の途中で設定が「おかしいな？？」と、感じる部分があっても所詮「ド素人小説」なのでくれぐれも気になさらないように♡読んで頂く皆様の「想像力」が全てです( ´艸｀)

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　株式会社OTS探偵社
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　代表取締役　　　梅木栄二

入梅⑬