私はもう一度改めて佐賀へと向かっていた。

九州自動車道を福岡方面へと進みながら、山の斜面を桜色に染める桜を見ても何だか今年は浮かれた気分にはなれずに、いずれ散ってしまうこの儚い花に一抹の寂しさを感じている。

「人間はいつか死ぬ」

富豪だろうが、私みたいな貧乏人だろうが、誰にでもまんべんなく寿命はある。これだけは例外は存在しない。それは分かっている。だからこそ、木下さんに何とか心残りを置いたまま逝って欲しくない。そんな事を考えながら車を走らせていた。

何故、私は不用意にも彼女にあんな大きな事を言ってしまったのか。勿論、彼女の病状が少しでも好転するように励ます意図があった事は確かだ。同時に、洲本啓二がすぐには来れないと言った事情を捻じ曲げてでも自分の仕事として何とかしたい。そうやって自分自身に発破を掛ける意図が大きいだろう。

無理を押し付ければ洲本啓二がどう考えを翻すか分からない恐怖もある。実際、直接会った時に仕事を押しのけてでも会いたいといった意欲は彼から感じられなかった。だからこそ無理を言わずそっと置きにいった感覚で彼の気持ちを尊重した経緯がある。

最悪、そっとしておけば洲本啓二が木下幸代と面会出来る可能性はあるのかも知れない。いや、そんな悠長な話では無い。誰にも先の見えない葛藤を抱えたまま、私は八女インターチェンジを降りて、県道を急いだ。

洲本啓二が勤めている施設へ到着したのはすっかり陽も暮れた１９時半。勿論、初めて彼を尋ねた時の様に静まり返っている。

つい、この前来たばかりなので少し気おくれする気持ちも無かった訳ではないが、自分がさっきこの目で見たままを必死に彼に伝えようと、熱がこもったままの状態で乗り込んできた訳だから躊躇は無い。

勿論、携帯の番号は知っていたので電話を掛ければ事足りるのだろうが、直接来た事で「誠意」を示したかったのだ。

勝手知ったるでインターフォンを押した。すぐに女性の声が応答する。

「はい？　」

「恐れ入ります。梅木と申しますが洲本啓二さんと面会したくて伺いました」

少しの間を置いて女性は答える。

「洲本主任ならもう上がられましたけど…　」

「……　」

予感もしない訳では無かったが、こうもすぐに会えない「縁」の無さに、嫌な予感がしてしまう。

「分かりました。では携帯にお電話を差し上げてみます」

「お願いします」

そんな声を残してインターフォンは切れた。

上手くやれば洲本啓二の自宅が分かると好機に捉えるのか、それとも、つくずく自分の縁の無さを狼狽してネガティブに捉えるのか、本来の私の性格は後者だ。

「う～ん…仕方ない。やったれ！　」

自分に考える時間を与えず、その場でそのまま携帯電話を取り出し洲本啓二に電話を掛けた。

コールと自分の心臓の鼓動が重なる様だった。１回…２回…

そして５回目が鳴って切ろうかとした時、少し暗い声で洲本啓二は電話に出た。

(続く）

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弊社は情報を管理する会社である都合上、上記のお話だけに限らずブログ内、全ての「グダグダ小説」は全て「フィクション」です。実在する人物、団体は、私を含むスタッフ以外、すべて架空の物です。弊社で行われた調査とは一切関係ございませんのでご了承のうえお楽しみ戴ければ幸いです！それからお話の途中で設定が「おかしいな？？」と、感じる部分があっても所詮「ド素人小説」なのでくれぐれも気になさらないように♡読んで頂く皆様の「想像力」が全てです( ´艸｀)

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桜の花弁が舞い散る頃（54）