この日は、県立病院への予約がとれたとのことで、その受診の連絡や先様に渡すデータと紹介状などを受け取るための診察と聞いていました。

親父さんも一人で病院に行くというので、兄も私も特につきそわなかったのですが、病院側からすると、親父の年齢や状況からして、当然家族がついてくると思ってたらしいんです(;^ω^)

 

またもや仕事中に電話がかかってきました。

「とにかく早く家族の方と話したい言いよるんやけど。時間外でもかまんけんと。」
「は??胃カメラの日(五日後)には行くのに?」
「急ぐみたいなんやが・・・」

 

なんだか電話口の親父さんも途方にくれた様子です。
いまいち要領をえないため、直接病院へ電話をしました。
先生は手術に入っているとかで、看護師の方が応対してくれたのですが・・・。

「今日ご本人さん一人で先生に病状を聞いて、もう手術は望まないといわれるんです。それはご家族でちゃんと相談してほしいということで、先生がもう何時でもいいから来てほしいと。こんなことめったにない話なんですよ。」
「はぁ」

 

ちょっとうまく説明できないのですが、我が家は割と昔からみんなが頑固で個人主義でして、本人の意思が最優先されるべきと思っているため、父が手術を希望しないというのなら、それは家族としても尊重しなければと思うほうなんです。

はてどうしたもんかとぼやっとした相槌を返す私に、むしろ看護師さんの方がヒートアップしてきました。


「手術後の話や、どの程度回復するかなど話をされているうちに不安になられたんだと思いますよ!余命とかも聞かれて。子供たちに迷惑をかけるのは嫌だから、それならもう手術はせずこのままでいいとおっしゃるんです。一人で辛かったんじゃないかと思うんです」

 

うーむ、看護師さんの熱弁を聞きながらも私はついつい感心してしまいました。

なんでこんなに看護師さんが思い入れてくれるんだか。もっと看護師さんとかお医者さんって、クールで淡々としてるんじゃないんかい。公立病院でこれって。いや有り難い。そりゃ有り難いんですけど、ちょっと気持ちがついていかないよぉぉぉぉ。

 

思わず苦笑してしまいました。

手前みそですがなぜかうちの親父さんは、割と誰にでも好かれるキャラクターなんです。

すげー冷たい子供たちの図って感じになってるのかも(;^ω^)

とりあえず週明け三日後には夕刻になるが必ずうかがう旨約束し、実家にて再びの家族会議ですよ。

まぁ、急がないといけない病状なんだろうなぁとは思っていたんですけど、私が思っている以上にほんとに時間との闘いなんだなと。


親父さんが具体的に余命を聞いたところ、今年の秋くらい。早かったらお盆ぐらいとのこと。


しかし、手術したとしても、よくなる確約はなく、後遺症もある。歩けなかったり認知症になるなどして迷惑をかけるくらいならこのまま何もしないで寿命と思う。
自分の生きざまはそういうのだから、納得してほしいと。

 

我が家の直系一族は昔から短命で、親父さんの親兄弟は早くに亡くなっていて、歴代でも一番長生きしたと思うと。後悔もないと言われると、なかなかに複雑です。

私からは、先生とどういう話をしたかわからないが、手術して悪いところをとれば、十分よくなる可能性のある病気。
のどの手術のため、体は元気だから、おそらく早く歩けと言われる。
あなたに関してはこの手術で寝たきりになる可能性は低い。
検査スケジュールが決まっている、転移しているかの結果もまだ、にも関わらず呼び出しがかかるということは、とにかく後は時間との戦いだろう。手術日まで決めたいくらいの感じだと思う。

先生にはある程度の勝算があるんだと私は思ってる。

認知症になるならないは気の持ちよう。とにかくお盆まで持たないかもなんて言われるとこちらも心の準備もできない。迷惑なんておもわない。本意ではないだろうけど、家族にとっちゃあ、寝たきりでも認知でも最後は息してくれてたらそれでいいもんだ。秋の誕生日、来年のお正月は迎えようと、怒涛の説得工作です。

対して兄はやっぱり慎重というか、むしろ懐疑的なくらいでして。

先生と直接話していない上にあまりに私が手術をすすめるので、余計なんだか胡散臭く聞いてしまったのかもしれません。

まずは先生の話を聞いて転移の結果が出てからと態度保留となりました。