その人は・・・
どうみても涼子の年代とはかけ離れている。


最近、
親子でも腕を組む人達はいるなぁ・・・
やっぱりお父さんか?


イヤじっくり見ても
涼子とは似ていない。


オヤジ体型で

頭のハゲたオッサン・・・



涼子はそんなオッサンと

べったり腕を組んで

寄り添っていた。


最初に涼子に出会った時に
一緒にいた店長より

はるかに年配・・・


『あの不倫の

オッサンか?
続いてたんや・・・』


そう親父さんの部下で
奥さんとも面識のある人・・・


それ以外考えられなかった・・・。


『オッサンと不倫旅行、
別れられへんかったんやな・・・

それにしても、
あれだけ身近な人なのに、
よく二人だけで
旅行に行けるなぁ~』


と僕は心で呟いた。



しばらく僕はロビーに居た。


涼子達は売店で物色をしたり、
ソファーで話したりしていた。


涼子は僕を気にしながら
当てつけのように
オッサンにべたべたしていた・・・。

『私は今、

幸せなの・・・』

と言いたげに・・・。


でも何故か涼子の
背中は
寂しそうだった・・・。



頑張って寝て
それでも
寝られなくなった時

やっと起きる事にした。


起きてからも
涼子の事を考えた。


結局
自分の頭では

「家族旅行?」

と言う結論になった。


それから
夕食を食べに食堂に行った。

食事を済ませ
ロビーで延長戦に突入した
春の高校野球を見ていると、

真横を

涼子が

通っていった・・・・


気が付いて声を掛けようと涼子を見ると
振り向いた涼子と目があった。


でも・・・
目は

『声を掛けないで』

と訴えている。

イヤ
目が訴えているのでは無い。

体全体で

訴えていた。


涼子の隣に人が居る。


お父さん??


イヤ
違う・・・


涼子との距離は近い

この距離は
恋人の

距離だ・・・


そこで
涼子が家族旅行という
理由で
この船に乗っていない事を
確信出来た・・・。



船が小樽の港を出て、
港の友人が
見えなくなってから
船室に戻った。


ロビーや廊下で
涼子を探したが、
会う事は無かった・・・。


船が港を出港し
友人達とのお別れをした後、

船室のベットで
寝ようとした・・・


でも中々寝られない・・・


そりゃそうだ
この船に涼子が
乗っている。


その事を考えたら
徹夜をしていて
睡魔が襲うはずなのに
寝られなかった。


『涼子は、
何の為に
この船に
乗って

いるのだろう・・・。』


まだ理由が分からなかった。


しばらく

答えの出ない

自問自答・・・

そんな事をしていると
知らず間に
寝ていた。


それから
何かを取り戻すかのように
一気に寝た。



夢の中で
涼子とデートを

していた。


起きても
二度寝・・・


2回目の夢も
主演は涼子だ・・・


昔の楽しかった頃の夢・・・
幸せな夢を見続けるために
出来るだけ寝た。


頑張って
寝た。