脱9条のススメ    護憲・リベラルのための憲法9条講座 -22ページ目

脱9条のススメ    護憲・リベラルのための憲法9条講座

かつてガチガチの9条平和主義者だった私がその大矛盾に気づいてしまいました。
様々なテーマでリベラルの視点から、具体的・論理的に脱9条論を展開します。


【変な主張18】 
もしも日本が攻撃されたらなどと考えることがそもそも間違っている。そのような最悪の事態を想定するなどということが戦争への道へと繋がるのだ。

【答え】

 

福島の事故のことは勿論知ってますよね。はいもちろん原発の。あの事故の原因が明らかになるにつれ、はっきりしてきたのは、あれが日本ならではの事故だったということです。いえ、津波や地震そのもののことではなく、津波や地震から水素爆発・メルトダウンに至る過程が日本独特であったということです。ええ、同じ規模の地震や津波があったとしても例えばアメリカやフランスでならあんな事にはならなかった。つまり現在の原発の事故防止技術をもってすれば、あんな事にはならなかった。

 


 

ああそうでしたね、あなたも護憲派にして脱原発というお決まりのパターンですからそのへんのことはよくご存知だ。(私のような脱原発・脱9条という人間をあなた達は異星人を見るような目で見る)非常用デイーゼル発電機を高台においておくとか、イソコン(非常用復水器)の操作訓練を日常的にしておくとか、最悪の事態を想定しておけばあんな事にはならなかった。まあそもそも初めから最悪の事態を想定すれば日本に原発なんか一つも作らなかったわけですが。

 


 

ああ、あなたもそう思う。原発に関しては最悪の事態を想定しなければいけなかった、と。でも外国の軍事力については最悪の事態を想定してはいけないというわけですか。私なんかから見ると、原発について最悪の事態を考えなかった“原子力ムラ”の人達と、他国の軍事力について最悪の事態を考えない護憲派の人達はそっくりだと思うんですけどね。さしずめ“九条ムラ”の人々だ。国際的な基準は無視して、ムラの中だけで通じるコトバで会話して。え、原発と軍事力とは違うと。ずいぶんご都合主義ですね。まあいいや。じゃあ軍事力の話だけにします。

 

 

 

あなたの考えでは9条を改正して自衛隊を憲法上合法的な軍隊にすると、たちまちアジア各国の脅威になるってことでしたよね。おまけにアメリカに追従して世界に向けて侵略戦争を仕掛けると。それって考え得る最悪の事態ですよね。

 


 

 日本の軍事力についてはまず最悪の事態がほぼ確実にくる、と。でも外国の軍事力については最悪の事態を考えるのはいけないことだと。つまりあなた言ってる事はこういうことだ。すべての外国の軍隊は決して悪いことはしない。日本の軍隊だけが悪いことをすると。まあこれこそが憲法前文にも明記されている“9条の定理”なんですが。

 


 

 まあはっきり言ってむちゃくちゃの理屈ですね。いやもちろん理屈にも何もなっていない。世界で日本だけが悪い国だというのが護憲派のみなさんの大前提だということですよね、はい。


【変な主張19】 
自衛隊も在日アメリカ軍もいらない。フィリピンではアメリカ軍基地を追い出して跡地に工場を誘致して雇用も生まれ、とてもうまくいっている。

【答え】

一つの独立国に軍事力が全くいらないのかどうかについては他の項で繰り返し論じているので、ここではフィリピンにおけるアメリカ軍基地の話をします。

 

 確かにフィリピンでは幾つもの要因が重なって1992年にアメリカ軍基地がなくなり、両国の軍事同盟も事実上解消されました。その跡地を工業特区とし、米軍基地時代の倍の雇用を生み、この点についてはとてもうまく行ったのは事実のようです。

 


 

 しかし一方で、こうした流れの中で、フィリピンと中国が領有権を主張して、両国が“現状維持”を確認していたはずの南沙諸島の一部を中国があっという間に占領してしまったという事実も存在します。この後フィリピンとアメリカは事実上の軍事同盟を復活させ、合同軍事演習も再開、フィリピン内の空港もアメリカ軍の利用を承認するなど“元のさやに収まった”というところで現在に至っています。

 


 

 まあフィリピンが当面めしのたねにはならない領土を捨てて、雇用の増大という選択を主体的にとったのならそれはそれでいいのです。が、慌てて元の鞘に収まったということは完全に計算違いだったと見るべきでしょう。中国を甘く見ていた。そして在比米軍の存在を軽く見ていた。

 


 

 それにしても気になるのは、このへんの経緯を伝える一部のマスコミの姿勢です。この項で9条さんが主張しているようにアメリカ軍を追い出して治安も良くなり雇用も生まれいいことばかりだったかのように報道していたりする。そして、さあ沖縄も後に続け、とつなげる。あっという間に領土を中国に占領されたことや、結局事実上元の鞘に収まったことなど一言も触れない。

 


 

 9条さんといえば9条に都合の悪い情報は全く耳に入らない、という話は他でも触れましたが、こういう人がジャーナリストを名乗りメディアで情報を流すとこういうことになる。そしてこういうインチキ情報で9条さん達は自説に自信を深めていくというわけです。

 


 

 フィリピンで起こったことは事実を正確に把握して今後の日本にとって大いに参考にしたいものです。がそうするとすぐに、“やはりアメリカ軍には沖縄にいてもらって尖閣や日本を守ってもらわなくては困る、沖縄の人は日本のためにガマンしろ、”っていう話になってしまうのも困ったものです

 


 

が。まあ現実の問題として当面アメリカとの同盟関係は大切にするとしても、“アメリカに守ってもらう”という基本姿勢を変えない限り、日本の内政問題すら日本人が決められない、定期的に日本人少女をイケニエに差し出さなくてはいけない、という状態は変わらないのでしょう。(主張3参照)もちろん自衛隊もアメリカ軍もいらない、などというのは問題外ですが。


【答え】
“9条を改正する”というのは自衛隊を現状のような“憲法違反状態”から開放し合法的な組織にするということです。法治国家における武装組織を合法化する事の必要性については“主張7”で述べているので参照して下さい。


 

 ただどこの国にもある合法的軍事組織の存在と、徴兵制を施行するかどうかは全く別の問題です。世界を見回せば徴兵制を施行している国は確実に減少してきています。ただ、じゃあ今でも徴兵制のある国は遅れている国なのか、軍事政権下にでもあるのかといえば全く違います。それぞれの国にはそれぞれの地理的・歴史的事情と思想がある。

 

  スイスは永世中立国として徴兵制をしきながら150年以上戦争をしていません。  

 教育・福祉先進国として有名な北欧のデンマーク・ノルウェー・フィンランドも徴兵制を敷いている。(スウェーデンは2010年に廃止)

 

 ホラこういう国を挙げれば徴兵制そのものが人権的に不当なもの、侵略戦争をするための“人狩り制度”なんかじゃないことが分かるでしょう。

 

  9条を改正したとしても、徴兵制については主権者である国民が民主的に決めれば良いだけのハナシです。  

 また徴兵制のある国でも“良心的兵役拒否”を認め、社会奉仕作業などで代替出来るのも現在の世界的流れであることも付け加えておきます。

 

 

   もうひとつ9条さんたちが徴兵制について全く理解していない事を述べておきます。  

かつて、まだ日本の近代化・民主化が途上であった頃の徴兵制では、赤紙一枚でかりだされて軍隊で殴られまくってそして戦場で殺し殺されてゆくという一面があったのは一つの事実だったのでしょう。少なくとも多くの庶民にとっては。島国という特性もこの閉鎖性を支えていたのだと思います。

 

  しかし近代化・民主化を経て、また島国とはいえこれほどグローバルな時代の徴兵制を考えてみて下さい。そもそも徴兵制とは一般庶民に銃や武器を持たせることなのです。スイスなど兵役除隊後も各家庭に武器を装備させている状況を考えてみてください。国家の意志と、兵士となった一般庶民の意思とが乖離していたらどうなるのか。  

 

 選挙や議会を無視するような独裁政権が現われたらどうなるのか。一般庶民はたちまち与えられた武器を持って革命軍を形成して政権打倒にかかることになります。少なくとも近代化され民主化され自己を確立した国民が武器を持ち軍事訓練を受けていれば当然そういうことになる。つまり徴兵制を施行するということは国家権力にとっては諸刃の剣であって、国民と信頼関係が存在しない国家権力にとって、もっと言えば国民と一体化していない国家権力にとっては自らを転覆させる制度にしかならないということです。そうした緊張感の中で近代国家における徴兵制は存在してきたということです。  


 

こう考えてくると、徴兵制とは究極の民主主義であるとも言える。一般的な民主主義においては一般国民は選挙権を以って議会に代表を送り込むことが基本です。日本などほぼこれだけだとも言える。これだけでは民意を汲み取れない問題のために、スイスなどでは直接民主制として、個別の問題についての国民投票が大幅に取り入れられている。それでも国家の意志と民意とがかけ離れた時には、国民は武器をとって武力革命を起こす権利まで保持しているということです。もちろん実際にはここまで民主主義が徹底され国民が主役である社会においては武力革命の必要性も無いのでしょうが。

 

 また150年も戦争をしていないということはスイス国民が武力による問題解決をいかに嫌悪しているかを表していると言えます。国内問題にしろ国際問題にしろ、です。そしてそのために強力な軍事力を持ち徴兵制もしく。(主張7、参照)  


 

 とは言うものの、日本の現状を見ると“究極の民主主義としての徴兵制”などとても無理でしょうね。昨今の日本のスポーツ界・教育界における“指導者”による暴力沙汰は何なんだ。ああいう現状を見ると、日本では自己の確立なんかマダマダで、“上”に逆らって革命運動を起こすなんてとんでもないですね。“上”には殴られっぱなしで周りの大人も仲間もその状況を支えるような社会で徴兵制なんか始めたらアブナクッテってしょうがない。まあこんな社会では今のように志願兵だけでいくのが健全というものです。


 追記(2017.3月)


スウェーデンでは7年ぶりに徴兵制が復活されるという。

世界情勢と国内情勢の変化により“優しい社会”を守るための“強い国”であることの“力”が不足してきたということだろう。スゴイ決断である。