イスラム国による人質の解放に日本は身代金を出すべきだったのか・・Ms九条との対話 | 脱9条のススメ    護憲・リベラルのための憲法9条講座

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かつてガチガチの9条平和主義者だった私がその大矛盾に気づいてしまいました。
様々なテーマでリベラルの視点から、具体的・論理的に脱9条論を展開します。

2015.3月   

   イスラム国による日本人誘拐事件をめぐる検証番組

私: まさか九条さんの娘さんにお目にかかれるとは思いませんでしたよ。

九条嬢: 先日は父がお世話になりました。父ったら最後に取り乱してしまって、合わせる顔がないから、今度はお前が話してて来いって。ダンコ論破してこいってハッパ掛けられてきました。(笑)

  【Mr.九条との対話・イスラム国問題とどう向き合うべきか 】参照

私: いえ、取り乱してしまう気持ちはよくわかりますよ。なにしろ九条さんはかつての私自身なんですから。

九条嬢: えっ?

私: いや、それはともかく、今日はどういった話から始めますか。

九条嬢: 先日“報道ステーション”で、例の“イスラム国”による誘拐事件を巡る日本政府の対応を検証する番組をやっていたんだけど見ましたか。

私: ああ、見ましたよ。この時期、改めて経過を検証するのはとてもいい企画だと思いました。

   日本政府は身代金を払うべきだったか

九条嬢: そうですか、それなら話が早いです。番組によれば日本政府は初めっから身代金を払う気はなかったと言うことでしたね。これについてははどう思いますか?

私: うーん、これはですね、なんとも言えませんね。アメリカ・イギリス並みの毅然とした態度でよかったという思いと、金額の交渉ぐらいしてもいいじゃないかという気持ちと半々ってとこですか。

九条嬢: あら、今日はえらく歯切れが悪いですね。やはりあの番組で少しは考えを改めたということですか。

私: 別にそういうわけじゃないです。私だっていくらかのお金で日本人の生命が救えるのならそれに越したことは無いって気持ちは充分にありますよ。

九条嬢: あらそうなんですか。じゃあ日本政府はちゃんと交渉して、一方安倍さんはあの時期に中東なんか行かず、行ったとしてもあんな演説ぶたなければ、後藤さん達は救えたかもしれないですよね。

私: そりゃあ後藤さん・湯川さん二人だけの命だけ救えればいいんだったら、それがベストですよ。

九条嬢: ええ、ベストですよね?え、なんですかその“だけ”ってのは。

私: いや、身代金を日本政府が出して二人を救出すれば、これは間違いなく“日本人を誘拐すればカネになる”っていうメッセージになるわけでしょう。対“イスラム国”に限らず他のテロリストや一般のプロの誘拐犯に対しても。
てことはこれから先も日本人は誘拐の危険にさらされるわけで、たとえあの二人の命だけ救えたとしても喜んでばかりはいられないってことですよ。
一方でアメリカ人やイギリス人は誘拐しても絶対カネにはならないというメッセージがイスラム国には確実に伝わっているわけで、まあ個人で出せる範囲の身代金なら別ですが。

九条嬢: しかし“報道ステーション”でも言っていたじゃないですか、フランスだって、公式には認めていないけど18億ドルもの身代金を払って人質をとりもどしたって。あなたの好きな“テロとの戦い”で先頭に立っているフランスだって、人質を巡る交渉では人命第一で妥協だってするってことですよね。フランスにできて日本に出来ないって事はないでしょう?

  フランスはテロと闘いつつ身代金も払っている

私: まさにフランスとの違いはそこですよ。

九条嬢: え?

私: フランスはホントにテロと戦ってますからね。“イスラム国”の支配地域をぼかぼか空爆してる。その上で、自国民が人質に取られたら開放交渉だってするってことです。いわば普通の誘拐事件に例えれば、犯人と身代金交渉もするし人命第一でお金も用意するけど、一方で警察も動いて犯人逮捕に全力を尽くすってことです。

九条嬢: それは普通そうしますね。

私: でも日本が“イスラム国”相手に身代金交渉するって事は、警察は何も動かずに身代金だけ渡すって事になってしまう。まさに再犯の勧め、誘拐の推奨になってしまうんですよ。

九条嬢: じゃあ日本も空爆しろっていうんですか。

私: いやそれは出来ないし、今すべきでもないと私も思います。

九条嬢: じゃあ、どうすればいいっっていうんですか、あなたは。

私: だから身代金交渉は一切しないって選択も正しいと思うし、もし身代金交渉するんだったら、せめて空爆とかして現実にテロと戦っている国に支持の表明ぐらいはしなきゃって事ですよ。いわば一般の誘拐事件で自国の警察動かせないんだったら、せめて他国の警察の応援ぐらいはしなきゃってこと。口先だけでも。

九条嬢: それじゃ前回の父との対談のフリダシに戻ってしまうじゃないですか。結局“イスラム国”と戦う国を支援するって安倍さんの演説はそれで良かったって。

私: そうですよ。私は何も変わっていない。

九条嬢: でも“報道ステーション”の検証は良かったって言ったじゃないですか。

私: ええ、この時期ちゃんと経過を検証したのはとても良かった。私が知らなかった事実もいくつか教えてくれたし。

九条嬢: “報道ステーション”の検証が良かったと認めるのなら、日本も身代金払って二人を開放させるべきだったって結論になるじゃないですか。

   報道ステーションのモンダイ点


私: そこが“報道ステーション”のモンダイ点なんですよ。フランスのやり方の一面だけを取り上げて、さあ日本も見習えばよかったって。さっきも言ったように一方でフランスは空爆をしている。空爆と身代金の支払いはセットで成り立っているんです。あなたの言うように“テロとの戦い”からは逃げておいて、身代金だけ払っていたら、日本は完全に“イスラム国”の“お得意さん”になってしまう。世界中のテロ組織やプロの誘拐犯の草刈り場・資金源になってしまうじゃないですか。

九条嬢: “報道ステーション”が間違っていると言うんですか。

私: 間違っているというより、事実の半分しか伝えていない。本来セットである、あるいは事実の光と影の両面のうち、光の面しか伝えていない。フランスの人命第一の人質開放が上手くいったっていう光の一方で、影には空爆があるってことをね。勿論フランス人はそんな事“影”だなんて思っていないだろうけど。

九条嬢: ・・・・・・。

私: “報道ステーション”って、そういうの多いんですよ。以前に長野智子だったかがレポートした特集で、フィリピンの米軍基地が撤去されて、跡地に工業団地作って雇用も二倍になって米兵犯罪も無くなって、めでたしめでたし、ってのがったんです。

九条氏: ああ、それは私も覚えてます。フィリピンに出来るのだから日本にだって、特に沖縄にだって出来るじゃないか、後に続け、と思ったもんです。

私: それがまさに事実の光の面だけだっていうんですよ。その後フィリピンで何がおこったかといえば、中国と領有権を争っていた南沙諸島をあっという間に中国に取られてしまった。フィリピンは慌てて一般空港の使用を米軍に認めたり、更にアメリカとの軍事同盟を再締結したりしたけど後の祭り。今や南沙諸島はどんどん埋め立てが進んで空港まで作られてしまった。いくらアメリカだって中国と戦争してまで一旦実効支配されてしまった同盟国の領土まで取り返してはくれませんからね。“報道ステーション”の特集じゃそんな事一切触れませんでしたけどね。

(追記・その後、フィリピンは“外国軍の基地は置かない”と定めた憲法を改正。米軍基地が復活した)

九条嬢: いや、南沙諸島に中国が空港作ってたのは“報道ステーション”でもやってましたよ。

私: まあ一般ニュースではね。ただ米軍基地の撤退とは関連付けていなかったし、もちろん以前の“特集”のめでたしめでたしの成れの果てがこうなんだって言う視点は全くなかった。
同じようにフランスが“イスラム国”を空爆してるニュースはやるけど、人質開放の身代金支払いとは全く無関連のニュースなわけ。普通に考えればこの2つはセットなんですよ。  

九条嬢: でも、でも、極端な話、ちっちゃい島の一つや2つ取られたって、米軍基地が無くなって、米兵犯罪も無くなって、基地じゃなく工場で働けたらそのほうがずっといいじゃないですか。戦争にもならなかったんだし。  

私: フィリピンの人達がホントにそう考えて選択したんならそれはそれでいいですよ。でもあわててアメリカに空港を提供して軍事同盟再締結したってことは、フィリピン政府も完全に読み違えていたってことでしょう。中国を甘く見ていた。米軍基地の持つ抑止力を軽く見ていた。

九条嬢: ・・・・・・・。

   九条嬢“安倍がイスラム国を敵視したから後藤さん達は殺されたんで         しょう?”

私: ああ失礼、話がそれましたね。今日のテーマはイスラム国への日本の対応、フランスを見習うべきか、でしたね。

九条嬢: 私はやっぱりフランスみたいにちゃんと交渉して身代金払ってでも後藤さんたちを取り戻すべきだったと思う。

私: だからそこは私も反対しませんて。ただあなた達が言うように“イスラム国”を敵視したから後藤さん達が殺されたっていうのは違うと。フランスみたいにモロ敵視して空爆までして、その上で“敵”と交渉して取り戻すのはアリだってことです。

九条嬢: でも“イスラム国”の声明では“日本がイスラム国と戦う国に支援すると言ったから後藤さんたちを人質にした、身代金払え”ってハッキリ言っていたじゃないですか。

私: そりゃ彼らは何とでもいいますよ。そんな言い分いちいち聞いてどうするんですか。テレビでサッカー見てただけで殺された少年たちは、少年たちが悪いんですか、エジプトのコプト教の人たちが殺されたのは彼らがコプト教であることが悪かったんですか。世界的文化遺産をぶち壊していくのはそんな“偶像”を崇拝するのが悪いんですか。“イスラム国”の言い分ではそういうことになるんですよ。

九条嬢: でも後藤さんは“イスラム国”の敵では無いでしょう?後藤さんのお母様だって“健二はイスラム国の敵ではありません”て言ってたし。

私: “イスラム国”にとっては味方でなければ敵か金づるのどちらかでしょう。まさか後藤さん、“イスラム国”の味方になりに行ったわけじゃないだろうから、敵じゃないと見なされれば金づると見なされたってわけでしょう。

九条嬢: そんなんで殺されちゃったんじゃあんまりヒドすぎるじゃないですか。

私: そうですよヒドすぎるんですよ、“イスラム国”は。だから世界中が“イスラム国”と戦っていたり少なくとも戦っている国を支援支持しているんじゃないですか。親米国も反米国もね。それをあなた達は日本だけは“イスラム国”を敵視しちゃイカンという。

九条嬢: だって安倍が敵視したから後藤さん達は殺されたんじゃないですか。

私: だからそうじゃないって、話が前に進まねえなあ。

   九条嬢 “もっと話しあえばいいんです”

九条嬢: だって現に後藤さん達は殺されたじゃないですか。で、あなたはフランスの空爆も正当化する。そうやって憎悪の連鎖、復習の連鎖が止まらない。戦争にのお決まりのパターンだってわからないんですか。こんな戦争もう終わりにしなきゃいけないんです。

私: あのねえ、じゃあどうしたら良いと九条さんはお考えですか。

九条嬢: “イスラム国”の人達とももっと話しあえばいいんです。

私: その議題は?

九条嬢: “イスラム国”の人達だって理由があってあんなことをしてるんだから、その要求にも耳を傾けるべきです。

私:彼らの要求ははっきりしてますよ。全人類がイスラム教に、それも彼らが掲げる“歪んだひとりよがりのイスラム教”に改宗することです。その要求を呑むんですか。

九条嬢: そんな要求は飲めないけれど話しあえばきっと妥協点はみつかります。そうすればこんな殺し合いを止められるわけだから。

私: どんな妥協点?全人類はかんべんしてもらって、せめて半分ぐらいが“イスラム国”に編入することで許してもらいますか。

九条嬢: そんな、ふざけないで下さい。例えば今の現状を認めていわばその地域をシェアして停戦ラインを引く、とか。

私: え、じゃあ、武力とテロによって国境線を変更させる事を認めるってことですか。

九条嬢: そうじゃないけどこれ以上テロや空爆っていう戦争で殺し合いが続くよりいいじゃないですか。

私: 冗談じゃない、そんなもの国際社会が認めたら、世界中にもっとテロと戦争がはびこってしまうじゃないですか。何しろやったもん勝ち、取ったもん勝ちを認めてしまうんだから。

九条嬢: じゃあどうしたらいいんですか。

私: あのねえ、

こういう問題には予め用意された正解なんて無いんですよ。

目の前の課題に対しひとつひとつその時ベストと思われることを各国が連携を取りながら自分の国にあったやり方で行動してゆくしか無いんです。現場のまっただ中のクルド人部隊は地上戦で“イスラム国”と戦い、フランスやアメリカ、いくつかの周辺のイスラム圏の国は空爆で食い止め、日本は難民支援等で“イスラム国”と戦う国を支援する、一方全ての国が“イスラム国”に加わろうとする者を出国時に食い止める、それでダメならまた考え次の行動を起こす。勿論この間あなたの言う“話し合い”による解決を模索する動きもあって良いし。

九条嬢: あ、話し合いもアリなんですか。

私: そりゃ、現状の“領土”は認められないけど、例えば“イスラム国”を解散すれば幹部の命は保証するとかそういう話はあってもいいでしょうね。アメリカとかは認めないだろうけど

九条嬢: あ、それ、いいじゃないですか、話し合いによる解決、大賛成です。

私: ただそんな話し合いのテーブルにつかせるためには“イスラム国”を相当軍事的に追い詰めないといけないでしょうね。

九条嬢: それじゃいつまでたっても争いは終わらないじゃないですか。

私: そうだね、そうなるかもしれない。

九条嬢: それにいくら空爆を繰り返しても“イスラム国”を潰滅は出来ないって人もいますよ。

私: そうだね、私もそう思う。世界の何処かで形を変えて生き続けると思う。


九条嬢: じゃあ、いくら空爆したって意味無いじゃないですか。


私: あのねえ、たとえば国内の事件で一生懸命犯人を追っているおまわりさんに“そんなことして犯罪が無くせると思ってるんですか”ってあなた聞きますか。


九条嬢: …・・・いえ。

私: でしょう?テロだろうが犯罪だろうが永遠に無くならなくたって、目の前の悪や不合理はひとつひとつ取り除いていくしか無いんですよ。もちろんその一方でテロや犯罪がおこらない社会作りは進めていかなくては行けないけど。

九条嬢: じゃあいったいこれから何人殺し合えば気がすむんですか!

私: 気がすむとかじゃなくてー。あの、あなた達ってこの地球上に本来あるべき“地上の楽園”があって現実世界がこれと違うって嘆いているだけに見えるんだよね。

九条嬢: 理想を描いて何が悪いんですか。

私: 理想を描くのは悪くないさ。ただその理想に向けて目の前で起こっていることをしっかり捉えてひとつひとつ解決していくしか無いじゃないか。100点満点の解決法なんて無いんだから、それが上手く行くときもあるし失敗することもあるけど。

九条嬢: ほらまたそうやって空爆を正当化する。戦争を正当化する。また戦争が繰り返される。
罪のない人が殺されてゆく。うううっ。

私: え、な、泣いているの?

九条嬢: 泣いてなんかいません!あなた達みたいに理想も持たず、現状追認の屁理屈ばかりが上手な戦争好きの人達がいる限り、私は決して泣きません。

私: そこにテイッシュあるけど・・・・。

九条嬢: この世に戦争がなくなった時こそ私は喜びの涙を流します!ぐしゅっ、帰ります!

私: あ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。