今考えるとそういう運命だったとしか思いようがないが、弟の亡くなる1か月前に、久しぶりの家族旅行をした。本当に、数年ぶりといった感じだ。弟の住む名古屋に集合し、名古屋観光をしようと思っていた。言い出したのは母だったか。泊まり先は私が決め、レンタカーの手配は弟がしてくれた。弟が家族のために動いてくれたのも珍しい。場所は名古屋の犬山というところだった。弟の運転に乗ったのも初めてで、母はハイテンションだった。夏の名古屋はとても暑く、観光したのだが暑さでやられてしまって、早々にホテルに引き返し、夕方からビールを飲んだ。ビールを買いに行く途中、弟と彼女について話したのだが、彼女と別れてしまったことを悲しそうに語っていた。私は万引きのことは知らないことになっていたので、理由を尋ねたが、それだけは言えないとの返事であった。よっぽどショックなことだったのだろう。満腹になった私たちは部屋で速攻眠ってしまった。暑さにすっかりやられていたのだろう。
翌日はももたろう神社なるあやしいホテルの近くの観光名所を訪ねた。そして、焼き物で有名な街に行き、名古屋に戻り、ひつまぶしを食べた。夜はまた居酒屋に行き、私が奢った。弟の家の近くの居酒屋だった。居酒屋を出る時、上機嫌だった弟はカラオケに行こう、もう一軒行こうと私たちを誘った。翌日は弟は仕事、私たちは名古屋城観光になっていたし、私もかなり酔っ払っていたので断ってしまった。結局両親のホテルに4人で行き、うだうだ話してから、私と弟が部屋を出ると言う形だった。弟と、エレベーター前で別れた。それが、生きた弟を見た最後だ。やっぱり彼女のことを話していた。復縁するために頑張っているので、できればいいなぁという話だったと思う。もっと話を聞けばよかった。わかってやればよかった。二軒目付き合ってやればよかった。なのに、私は男女問題でうだうだ悩んでいる弟のことがどうも許せなかったのかもしれない。だから、あまり相手にしなかった。男らしく立ち直って欲しかった。前に自殺未遂をしたことなんて忘れていた。甘かった。
翌日、名古屋城観光を楽しんで、私たちは家に帰った。本当に楽しい家族旅行だった。