2021年3月31日(水)日経朝刊3面(総合2)に「スエズ再開 通航2倍に まず半日で113隻、正常化急ぐ」との記事が、5面(経済)に「海上輸送頼る日本に教訓 スエズ座礁、背景に大型船増加 地政学リスクも高まる」との記事あり。

座礁した大型コンテナ船の「脱出」に成功し、29日に通航を再開したエジプトのスエズ運河では30日、足止めされていたコンテナ船やばら積み船が次々に運河を通過していった。

一時は400隻超が滞留していたが、スエズ運河庁は通航量を通常の2倍超に引き上げて運航の正常化を急ぐ。

運河庁のラビア長官は29日夜の記者会見で、足止めされていた422隻が3日~3日半で通過し終えると表明。

 

「昼夜を分かたず」に渋滞解消を急ぐ姿勢を強調し、半日あまりで113隻を通過させるとした。

コンテナ船世界最大手のAPモラー・マースク(デンマーク)によると、同運河の平時の通航は1日50~85隻で、かなりペースを上げている。

コンテナ船世界2位のMSC(スイス)は「すべて解消するには10日以上かかる」とみる。

運河の再開後に貨物需要が急増し、日本の港湾でも大混雑が予想される。

同社は当面日本などへの週1寄港のスケジュールを保てず、5月にかけてコンテナを載せるスペースの奪い合いで運賃が高騰する可能性があるという。

座礁事故は欧州とアジアを結ぶ海運の要衝の脆弱さを浮き彫りにした。

ただ長期の遮断が避けられたことで、海運各社はスエズ運河の利用を続ける見通し。

MSCも「短期的にはルートの変更はしない」と説明する。

日本郵船、商船三井、川崎汽船のコンテナ船事業を統合した定期コンテナ船会社「オーシャン・ネットワーク・エクスプレス(ONE)」も足止めされていたコンテナ船2隻が30日までに運河を通過した。

今後も運河利用の基本方針は変わらないという。

東京や横浜からロッテルダムへの航海日数はコンテナ船の場合、スエズ経由だと約23日、喜望峰回りの迂回ルートだと約30日と、1週間程度余計にかかる。

スエズ経由の速達性は揺るがない。

どちらのルートでもコストに差が出ないこともスエズ利用の優位が続く背景にある。

座礁した「エバーギブン」の通航料は約8000万円とみられている。

大型コンテナ船の場合、1日の運航でチャーター料や燃料代が数千万円発生する。

基本的に通航料はこうしたコストと大きく変わらないように設定されている。

エバーギブンは運河中央にある湖で停泊中。

コンテナ船を所有する正栄汽船(愛媛県今治市)によると船体や機器などに損傷がないか点検を受ける。

問題がなければ検査は31日にも終わる。

満載に近い約1万8千個のコンテナを積んでいるが「船の修理が必要になるとしても船底。コンテナを降ろす必要はない」(幹部)。

検査に合格し、運河庁の許可が下りれば出航できるが、地中海に出るまでには再び運河の細いルートを通過する必要がある。

エジプトのスエズ運河で座礁したコンテナ船「エバーギブン」の離礁が成功し、29日夕(日本時間30日未明)に運河の通航が再開した。

全長400メートルという超大型船が欧州と日本、中国などのアジア地域を結ぶ欧州航路の要衝を遮断した事故は大きな教訓を残した。

輸出入の大半を海上輸送に頼る日本にとって、物流をまひさせるリスクは多くの場所に潜んでいる。

座礁したコンテナ船を所有する正栄汽船(愛媛県今治市)は事故後「(17万トンに達する)船の重さが復旧作業を困難にしている」と話した。

今世紀に入って中国を中心とした新興国経済が台頭し、世界各国がサプライチェーンで結ばれる姿ができあがった。

世界の港湾で扱うコンテナは標準的な長さ20フィート(約6メートル)サイズ(TEU)に換算して2018年には8億個に迫り、2000年の3.6倍に増えた。

なかでも中国や東南アジアなどのアジア地域は3.7億個(日本を除く)と4.6倍に急拡大した。

アジアに運ばれるエネルギーや金属資源の量も飛躍的に増加した。

中国が資源などの「爆食」を始めた2000~05年は7000~8000個積みで「メガコンテナ」と呼ばれたが、今やその3倍近い大きさとなっている。

コンテナ船だけでなく、鉄鉱石や石炭を運ぶばら積み船、液化天然ガス(LNG)船でも従来の常識を超える超大型船が次々と建造された。

世界的な運河もできるだけ大きな船が通れるようにスエズが15年、パナマも16年に拡張された。

大型船ほど輸送効率が優れるとはいえ、運河で座礁事故が起きれば事態収拾に手間取るほか、一度に多くの船が押しかければ渋滞する。

昨冬もアジア地域を見舞った寒波でLNGの需要が急増し、米国のメキシコ湾岸から太平洋に抜けるパナマ運河で多くの船が滞留した。

海上輸送を円滑に進めるための「チョークポイント(航路の要衝)」は運河だけではない。

中東情勢が緊迫するたびに危機が指摘されるホルムズ海峡の奥にはペルシャ湾岸にサウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、カタールといった産油・産ガス国の積み出し港が並ぶ。

海峡には国際海事機関(IMO)が片側2カイリ(約3.7キロメートル)ずつの航路を定めている。

海運関係者によれば幅2カイリの航路は、運航するタンカーがほぼ直角に曲がらなければならない難所だ。

ペルシャ湾へ向かう航路は長さ8カイリ(航行時間で通常約30分)、ペルシャ湾から出る航路は6カイリ(同25分)という。

その間にミサイル攻撃にさらされたり、そこに機雷が敷設されたりすれば、16年で日量1850万バレルの原油や石油製品が行き来する「世界でもっとも重要なチョークポイント」(米エネルギー省)が遮断される可能性がある。

日本が調達する原油は8割以上がホルムズ海峡を通る。

日本や中国、インドネシアなどのアジア各国にとってマラッカ海峡も海上輸送の要だ。

同海峡の通行量は原油・石油製品だけで日量1600万バレルとホルムズ海峡に迫る。

米エネルギー省は「海峡の狭さから衝突や座礁、油流出などのリスクが高く、近年は海賊による襲撃の脅威にもさらされている」と指摘する。

日本船主協会も「ホルムズは地政学的な問題を抱え、マラッカは気象や地理的な問題から難しい操船が迫られる」と話す。

日本は米国よりはるかに高い比率で原油やLNGを海上輸送で調達し、自動車なども船舶で輸出する。

地政学リスクが高まる中でいかに海上輸送の要を守り、船舶を安全に運航させるかは日本の存続に関わる課題といっても過言ではない。