2021年4月1日(木)日経朝刊17面(企業2)に「脱炭素圧力、LNGにも 中国電・JFE、発電所断念」との記事あり。

脱炭素の圧力が石炭と比べ環境負荷が低い液化天然ガス(LNG)発電でも高まってきた

中国電力とJFEスチールは31日、千葉市でのLNG発電所の建設を断念すると発表した

原子力発電所の再稼働が進まずに主力電源のLNG発電所の操業も難しくなれば、再生可能エネルギーの開発を急ぐ必要性が一層高まる。

JFEは同日「卸電力のスポット価格の低迷など事業環境を総合的に踏まえて判断した」とコメント。

中国電力も環境対策設備なども含めた投資額を考慮すると「十分な事業性が見込めなくなったため」と理由を説明した。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の荻野零児氏も「経済合理性に加え、脱炭素の流れが決断の背景にあると思われる」と指摘する。

中国電力とJFEが建設を断念するのは、JFEの東日本製鉄所千葉地区(千葉市)内での発電所だ。

当初、2024年の稼働を目指して出力約107万キロワットの石炭火力発電所の建設を計画していた。

18年に事業性が見込めないとの理由から燃料を天然ガスへ切り替えて検討を続けると発表していた。

計画そのものを断念したのは、このままでは投資回収できないリスクが大きくなったからだ。

背景の一つには脱炭素社会への移行が本格化していることがある。

発電所の新設には国などの環境影響評価(環境アセスメント)の審査を受け、認可を受ける必要がある。

この審査に最低1年はかかる

 

アセス後も建設には2~3年かかるため、いまからアセスなどに乗り出しても稼働には早くて5~6年かかる

両社が計画していた発電所の稼働時期は最短でも2026年ごろとなるもよう。

火力発電の初期投資の回収には最低20年以上稼働する必要がある

一方、50年までの温暖化ガス排出「実質ゼロ」を目指す日本政府を含め、世界的に脱炭素の流れは強まっている。

民間企業でもセブン&アイ・ホールディングスが首都圏の一部店舗で使う電力を全て再生可能エネルギーとする方針だ。

LNG発電所の場合、100万キロワット級で1基1200億円程度かかるとされる

電力の需要家から再生可能エネルギーを求める動きが続けば、投資回収が難しくなる恐れがある。

さらに火力発電を続けていること自体が投資家からのダイベストメント(投資撤退)の対象となるリスクも高まっている。

中国電力のほかにも、北海道電力は2月に北海道小樽市で計画するLNG火力の石狩湾新港発電所2、3号機の稼働を延期すると発表。

LNGと水素やアンモニアを混焼し、環境負荷を減らすなど技術開発の期間にあてる。

中国電力とJFEの撤回は、他の火力発電所の計画にも影響する可能性がある。

実際に欧州では火力からの撤退の動きも出始めている。

独電力大手のRWEは火力事業の段階的な廃止を宣言

19年末に同業の独エーオンから再生可能エネルギー事業を買収した。

仏電力大手のエンジーもLNG事業を売却し再生エネ企業への衣替えを狙う

原発の再稼働が進まない日本でも再生エネの導入は進む。

ただ日本では再生エネの開発は途上で、安定した電源として心もとない。

日本の発電事業者は50年までの「中継ぎ」として、LNGを基幹電源に据えようとしてきた。

そのため日本の火力発電への依存度は東日本大震災前の10年時点での6割台から、LNGを中心に足元では8割にまで高まった。

さらに東京ガスと九州電力による千葉県での出力200万キロワットのLNG発電所など新設計画はある。

こうした発電所の建設も難しくなれば、改めて再生エネの利用拡大に向けた規制緩和などを官民で話し合う必要が高まる。