2021年3月30日(火)日経朝刊17面(企業2)に「疑似量子計算機、クラウド不要 東芝が試験販売」との記事あり。

東芝は「疑似量子計算機」と呼ばれる高速計算機で、インターネットにつながずに使えるシステムの試験販売を始めたと発表した

クラウド上で計算処理しないため作業時間を縮められる。

金融取引など機密保持が求められる分野で使いやすいという。

研究用途で使う企業や大学向けにまず販売し普及につなげる。

東芝は疑似量子計算機の2021年度中の事業化を目指している

同計算機は、量子力学の原理を応用して計算能力を高めながらも、量子コンピューターとは違って専用のハードウエアや冷却器などを必要としない

既存のコンピューターでは時間のかかる特殊な計算に特化する。

具体的には、膨大な組み合わせのパターンから最適なものを選ぶ「組み合わせ最適化問題」に強い

東芝が3月1日から試験販売を始めたシステムでは、市販の半導体「FPGA」を使う。

東芝が提供するデータを書き込むことで、疑似量子計算機として機能させる。

新たな製品は、クラウド上にデータを入出力する通信時間などが無くなり、機密性も保ちやすい。

金融取引ではわずかな時間差でも損益に影響が出やすいが、状況に合わせて収益性が高くなる投資先の組み合わせをすぐに選べるようになる。

高速で動くドローン(小型無人機)複数機の最適な航路の選定などの用途も想定している。

東芝は、ネットを経由で処理するクラウド版の疑似量子計算機を20年9月から試験販売している。

ネット上のデータを取り扱えるため、ビッグデータなどの大規模計算には向くが、一定の通信時間がかかるという。

今回の計算機には東芝が2月に発表した新たな計算手法も採り入れた。

量子力学の現象を疑似的に発生させる新たなアルゴリズムなどにより、計算速度が従来比約10倍となり、世界最速級としている。

通常の計算機だと約1年2カ月かかる計算を約30分で処理できる。

次世代計算機を巡っては、米グーグルの参入によって量子コンピューターの開発競争が過熱しているが、本格的な実用化にはまだ時間がかかるとみられている

一方で疑似量子計算機は、組み合わせ最適化問題として解ける特定の領域に計算できる対象が絞られるものの、大がかりな装置を必要としない手軽さなどから先行して事業化に向けた動きが進んでいる

日立製作所は20年10月から、独自の疑似量子計算機を使って、必要な人数などから最適な勤務シフトを作成するサービス提供を始めた

富士通も創薬領域での疑似量子計算機活用を進めている

 

創薬スタートアップのペプチドリームと組み、新型コロナウイルス感染症の治療薬開発で材料を絞り込むのに活用している。