2021年2月8日(月)日経朝刊9面(科学技術)に「アンモニア製造も脱炭素 再生エネ活用、原料は空気と水 秋田・ラオスで実証へ」との記事あり。

世界で広く使われるアンモニアを、二酸化炭素(CO2)を出さずに造る技術が開発された

化石燃料を使わず、再生可能エネルギーを用い空気と水から合成する。

約100年も続く現在の製法は大量のエネルギーが必要で、CO2の排出量も膨大

アンモニアは燃やしてもCO2が出ない燃料としても使え、脱炭素社会の実現のカギを握ると期待を集める。

世界のアンモニア生産量は年間約1億8千万トンに上る。

基礎化学原料エチレンなどと並び需要が多い化学品。

合成繊維や化学肥料などの原料として広く使われている。

近年注目されているのが燃料電池に用いる水素を簡単に取り出せる点。

水素よりも簡単に液化でき、運搬も容易。

 

アンモニアは石油や石炭に代わる発電用燃料として、政府がまとめた「グリーン成長戦略」にも導入目標が盛り込まれた。

アンモニア生産は「ハーバー・ボッシュ法」と呼ぶ20世紀初めに開発された技術を今も使っている。

天然ガスなどから水素を取り出し、空気中の窒素と反応させる。

 

セ氏400~600度、100~300気圧という高い温度と圧力が必要。

水素を天然ガスなどの化石燃料から取り出す際に大量のエネルギーを使用する。

アンモニア生産は世界のエネルギー消費の約1%を占めるとの試算もある。

CO2排出も大量で、CO2全排出量の3%を超えるという。

CO2を減らすために水素を水の電気分解から得る「グリーンアンモニア」を実現する取り組みが活発化している。

少ないエネルギーで効率的に製造する技術が開発され、再生可能エネルギーを用いてもコスト競争力のあるグリーンアンモニアの実現が見えてきた。

鍵となるのが低温や低圧でアンモニアを合成できる触媒。

東京工業大学の原亨和教授はカルシウムや貴金属のルテニウムなどからなり、50度未満でアンモニアを合成できる触媒を開発した。

同大の細野秀雄栄誉教授もセメントの構成成分からなり、低温・低圧で合成できる「エレクトライド」という触媒技術を持つ。

グリーンアンモニアに着目した秋田県大潟村は2022年以降、再エネを使ってアンモニアを試験製造する計画。

村内にある大規模な太陽光発電設備や近隣の風力発電設備で電気をまかなう。

秋田県や企業などと協力し、生産したグリーンアンモニアを農業などに用いる取り組みも始める。

秋田県立大学や東京農業大学と連携しアンモニアをそのまま肥料として使う栽培法の確立も目指す。

大潟村の高橋浩人村長は「村内には有機栽培を手がける農家が多い。

 

グリーンアンモニアを活用すれば、環境に配慮した農業をさらにアピールできる」と語る。

実証実験がうまくいけば各地に技術を移転する計画。

味の素や東工大などが設立したつばめBHB(東京・中央)は、ラオスで水力発電の余った電力を使ったアンモニアの生産に乗り出す。

細野栄誉教授が開発した触媒を使う予定。

国際協力機構(JICA)などと協力し21年4月から事業化に向けた調査を始める。

ラオスは水力発電の適地が多く、隣国に輸出している。だが送電網の整備が遅れており、余った電力を十分に活用できない恐れもあった。

こうした電力からアンモニアを造って肥料を生産し、輸出産業を育てる狙い。

現在のアンモニア製造設備が巨大なのに対し、新技術は小規模装置で製造できる。

水力発電所などの近くでアンモニアを合成し、同じ場所で肥料を造ることを想定する。

アンモニアの輸送の費用やCO2排出を減らす利点もある。

米ミネソタ州立大学の調査をもとに東工大の原教授が試算したところ、グリーンアンモニア生産は合成に必要なエネルギー消費は少し増えるが輸送費が減るため、アンモニアの価格は3~4割下がるという。

海外では大手肥料メーカーの米CFインダストリーズやノルウェーのヤラ・インターナショナルが水の電気分解で得られた水素を使ったアンモニア製造を計画している。

20年代半ばにかけて水素の製造設備を導入する。

ただ合成には大きな電力を使う。天候により発電量が変動しやすい再エネを用いるためにも省エネ型技術が欠かせない。