2020年12月29日(火)日経朝刊2面(総合1)真相深層に「米政府機関に攻撃、ロシア関与か サイバー防衛抑止効かず 次期政権との取引材料に」との記事あり。

米国の政府機関や企業を狙った大規模なサイバー攻撃が今月、明るみに出た。

多くの機密情報を扱う国土安全保障省や財務省、エネルギー省のネットワークまで侵された。

米当局はロシアが関与したハッキングとみている。

米政府機関や企業が多く使っているネットワーク管理ソフト大手の米ソーラーウインズ社の更新プログラムに埋め込んだウイルスを通じてシステムに侵入する高度な仕掛けだった。

同社は3月と6月にこのソフトを更新した顧客は1万8000以下と報告した。

米マイクロソフトの調査によれば、攻撃対象は米国が約8割を占め、カナダや欧州にも広がっている。

米サイバー当局が攻撃を見過ごし、政府機関が広く侵入を許した衝撃は大きい。

工作は半年以上も続いており、米大統領選への介入阻止を重視していた米当局のすきを突いた活動だった可能性が指摘されている。

米国防総省は2018年、平時から敵のサイバー空間に侵入し、先制攻撃も辞さない「Defend Forward(前方防衛)」という方針を打ち出した。

これは反撃の脅威を示して、相手に攻撃を思いとどまらせる「抑止戦略」の一環だった。

米当局はロシアのSVR(対外情報局)が企てたとみており、ポンペオ国務長官は18日、「この活動を行ったのはロシア人だと明確に言えると思う」と発言した。

サイバー戦は開かれた民主国家よりも強権国家に有利といわれる。

サイバー空間での活動についても説明責任を問われる民主国家に対し、ロシアや中国の秘密工作に国内で縛りはない。

国境もルールもなく、世界のどこでも経由し、攻撃への関与を否認できる。