2020年10月21日(水)日経夕刊7面(マーケット・投資)十字路に「天然ガス戦略を磨くとき」との記事あり。

欧州のガスパイプラインの大動脈はロシアからウクライナ経由で欧州連合(EU)に流れるルート。ところが2019年、ロシアはウクライナとのガス通過契約量を大幅に削減。これに代わるルートとして、バルト海を経てドイツにつながる「ノルドストリーム2」を計画した。ドイツも脱原発、脱石炭のエネルギー政策から計画に乗った。

ところが昨年12月に、米国がノルドストリーム2のパイプライン敷設を担うスイス企業に対して制裁を発動、完工まで残り6%のところで工事を事実上停止させてしまう。ドイツも、ロシアの反体制派指導者の毒殺未遂事件をめぐる同国政府の対応を受け制裁を否定しきれない。

米側には安全保障だけでなく、シェールガスを活用した液化天然ガス(LNG)産業を育てる狙いがある。米国のシェールガス由来のLNG輸出は16年から本格化して、19年には約3700万トンと早くも世界シェアの1割を占めた。

ロシアは欧州ガス需要の35%を握るが、反ロシアのウクライナやポーランドにも米国がLNG供給を進める中で安穏とはしていられない。

一方、世界3位のガス消費国である中国はロシアにパイプラインを建設させ、昨年12月から30年間にわたる輸入を始めた。また米国からは17年に約210万トンを輸入して喜ばせたが、19年は割増関税を避けるため他国に転売して輸入を14万トンに減らした。

世界最大のLNG輸入国である日本も輸入元を広げるため、ガス生産量で世界1位の米国からは19年、前の年の2倍の約400万トンのLNGを輸入した。

2位ロシアからはサハリンに加え、23年以降は北極海ルートで新たな輸入を始める。

新型コロナウイルスの流行でガス需要が落ち込んでいる今こそ、日本は大国間の駆け引きの渦中にある天然ガス戦略を磨く時だろう。