「オレンジジュース飲みながら先生の話聞いてね。

ごくごく飲まずに、ゆっくり飲んでね。」

 

「いただきます。」

 

「あら、お行儀いいわね。

大事なことね。

素敵なことだわ。」

 

先生はそう言ってから

こう続けた。

 

 

「進ちゃん

 

和音って言葉を聞いたことある?」

 

「うん、あるよ。

ドミソとかシレソとか。」

 

 

「じゃあ、メロディーって聞いたことある?」

 

「うん、あるよ。バイエルの右手で弾くんだよ。」

 

「そう、そうね。

 

 

「じゃあ進ちゃんが今

ジュースを飲んでいます。

 

美味しそうに飲んでくれています。

 

これは

メロディー

 

ハーモニーどっちかしら?」

 

「ううん、ううん、メロディー」

 

「そうね。じゃあ

和音。

ハーモニーとも言えるかな。

 

これは

どういうことになるかしら?」

「ううん、ううん、わかりません。」

 

「先生がお盆を持って

コップにジュースを入れました。

そこに氷を入れました。

 

そして

あなたの目の前にコップをおきました。


 

コップの下にはコースターがあるでしょ?

よく触ってご覧。

 

そしてコップもよく触ってご覧。

 

お盆も

コースターも

コップもおしゃれなものです。

素敵なものなの。

 

これは和音。ハーモニーなのよ。

 

 

そして

あなたは今

ジュースをゆっくり飲んでくれている。

 

ゆっくり

ごくんと

飲んでいる。

 

これはリズムって言うの。

 

そして先生は

美味しいジュースを

あなたに飲んで欲しいと

思って

 

おしゃれなお盆と

コースターとコップを用意しました。

 

これは

 

音楽をやる時にとても大切な

心というものなの。

 

 

音楽というのは

ピアノを弾いている時だけではないの。

 

進ちゃんが

生きていることが

音楽なのよ。

 

嬉しいことも

楽しいことも

 

悲しいことも

辛いことも

 

みんな

素敵な

音楽になる。

 

どう?

おもしろいでしょ?

 

学校で嫌なことがあっても

それも音楽。

どう?おもしろいでしょ?」

 

 

「うん、おもしろい。」