「世界のおわりを見届けるために
 最後のふたつぶになろう

 ひっくり返されたときにはさ
 ぼくらがアダムとイブだ」
灰をかぶったぼくは
おじいさんになった

灰色でまっしろで
よぼよぼでしわくちゃで
みすぼらしいっていうんだ


死ぬと魂とからだが分離するっていう
今のぼくは
魂が残されたからだのようで
からだが別れた魂のようで
そのちぐはぐ具合が
年老いた自分を愛おしくさせる

ぼくはおもわず
自分をいいこいいこした

誰にも向かなくなった愛を
誰でもない自分に向ける

かぶった灰ごと
優しく執拗にいいこいいこ

ぼくのからだが
灰を受け入れようと呼吸する

むせかえることさえ拒む
目に涙が浮かぶほどいいこいいこ


いつかの日にも
こんなふうにしてくれた人がいた

そのなれた手にぼくは身をまかせ
若いつもりでいた


おじいさんになって気付いたのは
自分の手が
ずいぶんと心地いいこと

ぼくは灰を散らしながら
長い間そうしていた
無知既知の集合体

先入観から浸る生水


(生水にこだわりはない)
熟睡手足ぱたぱたすっ

両の手におさまったものが手荷物
海の中のプールの中にふんわり

換言のち換言
要するにおんなじ
私は私っていうあれとおんなじだから
気分でいいの

もっともっと
欲深くなってしまうけれど
それだけの広さがあるのよ

時間とおんなじ次元
感情だって選べるのだから
そりゃあ人一倍頭をつかわなくちゃだめだ