私は現代人のうつ病とは、「疲労が蓄積した状態である」と説明している。
学術的な見解というよりも、そのように認識した方が良い対処ができるし、楽になるという、実際的な観点からの提案だ。

「疲労」と「自責の念」と「自信」のなさと「不安」の四つが重なると、いわゆるうつ状態になっていくと思って欲しい。

この四つが揃いやすいのがゆっくりと疲労が蓄積していくケース。
ゆっくりとした疲労はなかなか疲労の自覚がないが、やる気が低下し、物事に過敏に反応し、周囲に警戒をしてしまう。そんな自分に対して自信のなさや自責、不安が生じてくるのだ。

さて、この蓄積疲労(うつ状態)が進みつつある時、他の疾患になどによって身体症状が崩れると、うつ状態が急に悪化することがある。

病気と戦うためにエネルギーを急激に使うし、病気になった原因を自分に求める(自責)し、重病になって死んでしまうかもしれないという不安や、体力に対する自信の低下などが加わるからだ。

さらに運悪くその状態がある程度長引くと、蓄積疲労が第3段階に至ることがある。
第3段階になると、そこで経験したことが意識、無意識的のうち「記憶」に残ってしまう。

すると、病気や怪我が治っても、蓄積疲労が回復しても、体がその時の反応を覚えてしまって、つらい身体症状や精神症状がしばらく続くことがあるのだ。


いわゆるコロナの後遺症などというのも、このケースだと思っている。

うつの治療中は、このような一時的な身体病の悪化が、案外大きなダメージになることがあるということを覚えておいてほしい。

そのことを知らないと、後遺症が長引き治療も効果が薄いことで、不安になり、自分を責め、自信を失う。その思い煩いが蓄積疲労からの回復を遅らせる。

そのような辛い症状の本質は、記憶なのだ。だから治療の効果が薄い。

 

このつらさ(記憶)は、「安全な時間」が続くことによってしか薄れていかないと理解しよう。
辛い後遺症が残っている、あるいは反応が残っている事を、あまり不安に思わず、自分を責めてもいけない。
じっくりと時間薬が効くのを待とう。

 

<お知らせ>

感ケア入門講座が4月14日(日)に開催されます。

三笠書房が発売されます。