日本人は反省好きです。
十分努力しなかった、十分配慮しなかった、私が気が付くべきだった、準備が足りなかった、私がもっと能力をつけるべきだった…。

この過剰な反省癖はどこからきているのでしょう。

一般的に人は、何かが終わった時、特にそれがうまくいかなかったとき、反省をします。何が悪かったか、どうすればよかったか。この分析は、次にそのようなつらい体験をしないために、重要な作業です。

一方人は、怠惰で、かつのど元過ぎれば辛さも忘れてしまう傾向があります。

そこで、小さいころから、何かが終わったら、すぐきちんと反省し、悪い部分を修正して次に望むことがしつけられてきました。


ただ、このしつけの過程で、私たちの反省は、過剰に「自分のせいにしがち」になっている部分があるのです。


結果が悪くても、本当は単に運が悪かっただけ、あるいはほかの人が悪かっただけというケースが結構あるはずです。それでも、運が悪かった、相手が悪かったと結論付けると、自分へのフィードバックがなくなり、それが自分の成長を妨げる、と教わりました。また、確かに、自分では努力をしなくても済むので、安易に他責や運のせいに考えがちだという傾向もあるでしょう。

だから、どんなときでも自分がダメだったところを見つけ、反省するスタンスが、良い子のスタイルとして刷り込まれてしまっている場合が多いのです。「人のせいにするな!」とか「いいわけをするな!」「屁理屈を言うな!」とよく怒られたものです。

先日、8冠を達成した藤井聡太さんのインタビューで、ちょっとびっくりするような発言がありました。快挙を達成した藤井八冠が、自身へのご褒美を聞かれると…

「勝ったときに何かご褒美をというのはあまり考えていなくて、勝った時も負けた時も変わらずモチベーションを保つことが大事なので、負けた時にどう気分を良くするかということを意識している」と答えたのです。

負けたときこそ、大反省大会。これが凡人の考えです。ところが、達人は、もっと冷静に、どこを修正するべきかを分析しているのです。次の戦いのために修正しなければならないのは、小手先の一手の修正ではなく、自分の頭脳の疲労をとり、感情をケアすることなのです。

では、細かい部分の反省はと言うと、「この王座戦をしっかり振り返って、前に進めたらと思っています」と、むしろ勝ったときにこそ反省だそうです。

私も、常々、反省のタイミングは重要だと指導しています。普通は失敗した時に反省。上手く行ったらご褒美。

しかし、感情の機能の面から言うと、失敗した時は、嫌でも自責の感情が発動しやすいので、反省好きの日本人は、自分中心の偏った反省大会になりがちなのです。反省するにしても、すぐ反省するのではなくしばらく時間をおいて、感情が落ち着いてからの冷静な分析が有効です。

そして、藤井8冠が言うとおり、失敗した時、つまりストレスが大きいときはむしろ、刺激から離れ、体力を戻すというストレス対処の原則に従い、まずは、反省よりご褒美のタイミングなのでしょう。