2018年8月24日公開の映画『検察側の罪人』の予習のため、原作を読んだ。
木村拓哉さん、嵐の二宮和也さんの初共演作ということで、期待しております。
公式ホームページに、役名は出ていなかったのですが、
おそらく、特報動画のセリフからして
木村拓哉さんは、最上 毅(もがみ たけし)を演じられ、
二宮和也さんは、沖野 啓一郎(おきの けいいちろう)を演じられると思われます。
※かなりネタバレしていますので、ご承知おきくださいませ。
嫌な方は避けてください。すみません。
検事に任官して5年目の沖野啓一郎は、東京地検の刑事部に配属されることになった。
同じ刑事部には、以前から尊敬している司法修習生の時、教官だった最上毅が所属している。
最上は、刑事部の中でも、特に殺人事件などの凶悪犯罪が発生した際、捜査本部が立つのだが、そのような事件を担当する本部係検事とよばれる仕事についていた。
この本部係は、副部長クラスに近いキャリアを持った有能なベテラン検事が任される。
沖野は刑事部に配属されるのであれば、この本部係検事の仕事にかかわってみたいと思っていた。
また、最上も優秀で正義感にあふれる沖野に期待しているようだった。
蒲田で殺人事件発生
大田区で2名の遺体が発見される。蒲田で、老夫婦が刺し殺されたのだ。
その殺人事件の現場検証、司法解剖、捜査会議の初動の立会いを最上が担当することになった。最上は、犯人の目星がつけば沖野に引き継ぐ予定でいた。最上はさっそく沖野を連れて捜査本部へと向かった。
殺された老夫婦は死後3日程度の状態で妹夫婦に発見された。
老夫婦は、近くに古いアパートや借家を持っていて、また何人かの知り合いにお金を貸していた。凶器は、小さめの文化包丁で、犯行時に刄が折れたみたいで、奥さんの背中に突き刺さったままで、柄の方は見つかっておらず、犯人が持って逃げたようだった。
被害者2名の殺人事件、計画的犯行、金銭がらみということになれば、まず求刑での死刑は動かせない凶悪犯罪である。沖野は、体の芯が冷ややかに引き締まるような思いを持った。
聞き込み情報では、夕方4時半ごろ、二軒隣に住む主婦が、かすかな悲鳴らしき声を耳にしたという話が上がっていた。
また、殺された夫は、競馬場や競輪場に足しげく通っていて、金を貸していた相手もそういう場所で知り合ったギャンブル仲間だとみられた。
警察は、金庫にあったお金の借用書に名前が残っている人間を第一の捜査対象にして一人一人アリバイを洗い始めていた。
金庫は指紋がふきとられた形跡があり、夫婦の指紋も残っていなかった。決め手になる証拠が少ない。
犯人は、指紋をふきとる程度の証拠隠滅を図っており、それなりに小賢しく頭も働く人間だ。
沖野は、この借金が動機としても、犯人の借用書は、犯人自身が現場から持ち去り、現場には残っていないのではないかと考えた。
最上は、現場の金庫に残されていた借用書のリストに目を通した。リストには11人の名前が載っていた。
そして、最上は、その名前を発見した。
松倉重生(まつくら しげお)、63歳。
根津の女子中学生殺人事件
今から23年前のことだ。
最上が学生時代に世話になった根津にある学生寮の管理人である久住夫妻の一人娘で、最上が妹のようにかわいがっていた、久住由季。彼女が、何者かに絞殺された。当時中学2年生。
事件現場となった由季の部屋には、犯人が特定される証拠が残されていなかったが、寮の住民の同僚で、よく遊びに来ていた松倉重生が最重要人物として捜査線上に浮上した。
決め手の証拠がないだけに、松倉の自供を得るため、任意で幾度か取り調べを重ねたが、結局自供を得ることができず、警察もついに逮捕状を取ることができなかった。事件は当然のごとく迷宮入りすることとなってしまった。
今度の蒲田の事件に、松倉が関わっているのかどうかはまだわからない。
最上は、どんな事件であれ、犯人が特定の誰かであってほしいなどと考えて捜査に当たったことなどなかった。
しかし、これまでとは違う感覚の中にいた。
今のところ蒲田の凶悪事件の犯人と目されるような人間は挙がっていない中、松倉が犯人である可能性は十分あるという、その一点にかける気持ちがあった。
真犯人が、松倉であってほしい。
今、殺人事件のような凶悪犯罪には、時効がない。15年が25年と延び、時効は撤廃された。しかし、そんな中で取り残されたのは、改正法前に時効が成立してしまった過去の事件だ。由季の事件のような。
犯人は逃げきってしまった。
松倉重生、今、彼が過去の罪を認めたとしても、もう誰も彼を裁くことができない。だが、彼が今度の蒲田の事件の犯人であれば、由季の事件で裁かれなかったツケが今につながっている。今度こそ、落とし前をつけさせなければならない、そう考えていたのだ。
そして、松倉重生の任意聴取が始まった。