最近、会社の若者たちの間で、ちょっとした「節約ブーム」が起きている。

きっかけは……たぶん、会社の雲行きの怪しさだ。

 

 

「この会社、大丈夫ですかね?」

 

お昼休みの休憩室で、そんな会話がぽつぽつと聞こえるようになったのは、ここ数ヶ月のことだ。

社内に漂う“なんとなくの不安”。

そんな空気を感じ取ってか、若手たちが少しずつ行動を変え始めている。

 

 

そして先日、私は驚いた。

若手の一人が、私のお茶漬けランチを真似し始めたのだ。

 

私は、相変わらずスープジャーを使ったズボラお茶漬けランチを続けている。

 

 

 

「〇〇さんのランチ、いいっすね」ある日、お湯を注いでいる私の横で、彼がそう言った。

 

見ると、彼の手にもサーモスのスープジャー。
中には白いご飯。

「お茶漬けにするんすよ。これ、ゆままさんの真似っす」

そう言って、にやりと笑った。

 

 

正直、ちょっと笑ってしまった。

だって、私のお昼ごはんなんて、ただのズボラランチだから。

サーモスに白米を入れて、会社でお湯を注いで、お茶漬けの素を入れるだけ。

 

それを「いいっすね」と言われるとは思わなかった。

あまり性別を言ってはいけないのかもしれないが、男の子だ。

 

 

でも、彼の話を聞いているうちに、ちょっと胸が詰まるような気持ちになった。

 

「最近、節約しようと思ってるんすよ」

「昼にコンビニ行くと千円すぐ飛ぶじゃないですか。お茶漬けなら100円以下で済むし。」

 

彼は明るく笑っていたけれど、その奥にある“現実的な理由”は、私にもすぐわかった。

 

 

この半年、会社の状況は決してよくない。

人が辞めたり、出張が減ったり、経費の承認がなかなか降りなかったり。

 

口には出さないけれど、みんな少しずつ察している。

「もしかして、うち、危ないのかも?」

そんな思いが、社内のあちこちで静かに広がっている。

 

 

だから、若者が節約を始めたのも、驚くことではないのかもしれない。

でも、私が驚いたのは、その“節約方法”がまさかの私の真似だったこと。

 

 

「お茶漬けっすよ。最高っす。」

そう言って、サーモスを抱えてニコニコしている彼。

しかも、私のよりも一回り大きい「男子!」という感じのスープジャーだ。

 

 

 

 

 

「お湯だけあればいいし、腹もふくれるし、地味にハマりますね。」

そう言いながら、まるで新しい流行を発見したような顔をしている。

 

 

 

私は笑いながらも、少しだけ切ない気持ちになった。

彼の節約の理由が、“将来のための貯金”ではなく、“会社がつぶれたときの備え”かもしれないと思ったからだ。

 

 

 

思えば私がこのお茶漬けランチを始めたのは、二つ理由がある
「お金を使いたくなかったから」

「お昼を考えるのが面倒」

だった。

 

 

そして今、会社の若者がお金を使いたくない気持ちも想像できる。

不安な時期ほど、財布のひもをきゅっと締めたくなる。

節約というより、“心の防御”に近い。

 

 

昼食をコンビニで買っていた頃は、コーヒーやデザートも一緒に買ってしまい、
あっという間に1,000円。

「お茶漬けなら100円以内」
そう思うだけで、なんだか安心できるのだろう。

 

 

「会社がどうなるかわかんないっすけど、節約しとけば、まぁ何とかなるかなって。」

彼がそう言ったとき、笑っていたけれど、その声のトーンに少しだけ“本音”が混ざっていた。

 

不安の中でも、笑って過ごすのが社会人の知恵だ。

彼らは彼らなりに、現実を受け止めて、前を向こうとしている。

それが、なんだか頼もしくもあり、少し切なくもある。

 

 

それにしても、まさか私のズボラランチが、“節約のアイコン”になるとは思わなかった。

まるで会社の“生き抜き術”のように、お茶漬けが受け継がれていく。

 

 

節約には、いろんな理由がある。

将来のため、家族のため、夢のため。

 

でも今の会社の若者たちは、「生き延びるため」の節約をしているのかもしれない。

それでも、明るく笑いながらお茶漬けをすする姿を見ると、まだ大丈夫かもしれない、と思えてくる。

 

 

 

 

 

私も、彼らに負けずに節約を続けよう。

そして、
いつか笑って言いたい。

「お茶漬けで乗り越えたね、あの時」って。

 

 

今日もサーモスに白米を詰めて、会社へ向かう。

 

 

さて。どうする。私。