【以下ニュースソース引用】

意外と知らない、いつの間にか日本は「自己愛過剰社会」になっていたという「深刻な現実」

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現代ビジネス

〔PHOTO〕iStock

 

根性論を押しつける、相手を見下す、責任をなすりつける、足を引っ張る、人によって態度を変える、自己保身しか頭にない……どの職場にも必ずいるかれらはいったい何を考えているのか。

 

5万部突破ベストセラー『職場を腐らせる人たち』では、これまで7000人以上診察してきた精神科医が豊富な臨床例から明かす。

 

  【写真】知ったら全員驚愕…職場をダメにする人の「ヤバい実態」

「自己愛過剰社会」

写真:現代ビジネス

 

現在の日本社会では、「自己愛過剰社会」と呼べるほど強い自己愛の持ち主が増えていることも大きい。 

 

もちろん、これは日本だけの現象ではない。

 

むしろ、アメリカのほうが強い自己愛の持ち主が多い。

 

そのためか、強すぎる自己愛はアメリカの宿痾と指摘する声もあり、『自己愛過剰社会』という本が出版されているほどだ。 

 

アメリカがこのような社会になったのは、「自尊心をもち、自己表現や『自分を好きになること』ができる社会を築こうとするうちに、アメリカ人はうかつにも大勢のナルシシストを生み、さらに誰もが彼らに似た振る舞いをする文化を築いてしまった」からである(『自己愛過剰社会』)。 

 

これは他人事ではない。

 

アメリカをお手本に自由で民主的な消費社会を築こうとした日本にもそのまま当てはまる。

 

自尊心も、自己表現も、「自分を好きになること」も、日本の教育が現在目指しているものにほかならない。

 

そういう教育がアメリカと同様に大勢のナルシシストを生み出す結果を招いても、不思議ではない。

 

 現在の教育において何が一番問題かといえば、「甘やかし、褒めすぎる親たち」が多いことだろう。

 

子どもの欲求を最優先するあまり、子どもがほしがるものを何でも与えるようになった。

 

また、褒めて育てることが推奨されているのは、「褒めてやれば自尊心が高くなり、ひいては成功につながると信じている。

 

また、褒めれば成績が上がる、褒めれば褒めるほど能力が伸びると思い込んでいる」からだろう(同書)。 

 

もちろん、子どもの頑張りを認めず、叱ってばかりいるのがいいとは思わない。

 

だが、実際にはできていないのに、それをきちんと指摘せず、褒めてばかりいるのは、いかがなものか。

 

このような教育は、実際には大したことがなく、むしろ本当はダメなのに自分をすばらしいとかすごいとか思い込むナルシシストを生み出しやすい。

 

その典型のように見えるのが、『職場を腐らせる人たち』第1章事例8で紹介した20代の男性行員で、高学歴なのに仕事ができず、承認欲求をこじらせているため、常に「自分はこんなにすごいんだぞ」とアピールし、相手を見下さずにはいられない。

 

 このタイプは、うまくいかないことがあっても、自分がダメだからとは決して思わない。

 

いや、思いたくない。なぜかといえば、自己愛が傷つくからだ。

 

そこで、他人に責任転嫁して、被害者面をする。あるいは、うまくいっている人を見ると強い羨望を覚え、誹謗中傷したり、引きずりおろそうとしたりする。

 

 しかも、強い自己愛の持ち主ほど、自分は特別扱いされて当然と思い込む。

 

つまり、特権意識が強くなるわけで、これはさまざまな形で表れる。

 

たとえば、職場に対しては、「仕事量は少なく報酬は多く」という希望を抱く(同書)。

 

 同じような希望を誰でも抱くはずだが、同時にそんなことが許されるはずがないことも社会人であればわかっている。

 

いや、わかっていないと困る。

 

誰かが特別扱いされて仕事量が減れば、その分、仕事量も労働時間も増えて不当な目に遭う人が必ずいるのだから。

 

ところが、特権意識が強いと、自分だけは「我慢も努力もお断わり」と言っても許されると勘違いする(同書)。

 

 その典型が、『職場を腐らせる人たち』第1章事例3で紹介した言われたことしかしない若手社員だろう。

 

彼らはコスパ意識が高く、"働き損"を極力回避しようとするが、その根底には「我慢も努力もお断わり」という姿勢が潜んでいるように見える。

 

まさに「自己愛過剰社会」の申し子といえる。

 

 こういう姿勢を周囲が大目に見て許してくれるとは到底思えない。

 

本人が経営者の親族とか、よほど経営に余裕があるとかいう特殊な事情があれば別だが、普通は許されない。

 

もし、そんな姿勢を許していたら、多くの企業は早晩つぶれるだろう。

 

 しかし、「自己愛過剰社会」で育ち、自身を過大評価していると、自分の認識が周囲とずれていても気づかない。

 

むしろ、「自分の希望を認めてくれない周囲のほうが悪い」と思い込みやすく、強い怒りを覚える。

 

その怒りから生まれた復讐願望が職場を腐らせる言動につながることも少なくない。

 

 このように、職場を腐らせる人を変えるのは至難の業であり、しかもその背景に潜む構造的要因が拍車をかけている。

 

だから、自分が他人を傷つけたり、周囲に迷惑をかけたりしているという自覚が本人にないこともままある。

 

 私がメンタルヘルスの相談に乗っている企業では、だいたい全員と面談するのだが、周囲から「あの人のことで困っているんです」「あの人どうにかできないでしょうか」といった相談を持ちかけられる人に限って、当の本人は「何にも問題はありません」「悩んでいることはありません」などと答えることが多く、唖然とする。

 

 そもそも、「三つ子の魂百まで」ということわざもあるように、人間の性格は遅くとも18歳を過ぎると本質的には変わらない。

 

精神科医としての長年の臨床経験から私は、17世紀のフランスの名門貴族、ラ・ロシュフコーの「狂気を癒す方法は見つかるが、根性曲がりを矯正する方法はまったく見つからない」という言葉を座右の銘にしている。

 

 ただ、21世紀の現在、さまざまな「狂気を癒す」薬が開発・販売されているとはいえ、当の本人に病識がなければ服薬には至らない。

 

当然、効果は期待できない。このことを読者の方も肝に銘じておくべきだろう。

 

何よりも自分の身を守るために。

 

 つづく「どの会社にもいる「他人を見下し、自己保身に走る」職場を腐らせる人たちの正体」では、「最も多い悩みは職場の人間関係に関するもので、だいたい職場を腐らせる人がらみ」「職場を腐らせる人が一人でもいると、腐ったミカンと同様に職場全体に腐敗が広がっていく」という著者が問題をシャープに語る。

 

片田 珠美(精神科医)

 

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