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のび太とドラえもん、AI時代に成功するのはどっち…和田秀樹「男性社会の発想が残る組織は衰退あるのみ」
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※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Supatman
AI時代に組織やビジネスパーソンにはどんな能力が必要か。
医師の和田秀樹さんは「AI時代、問題発見できるかどうかがより重要になる。
その意味で成功するのは『あなたの夢、叶えます』を生業にしているドラえもん型ではなく『あったらいいな~』と問題発見するのび太型になる。
『まずはのび太が考えて、あとはドラえもんにお任せ』にならって、『まずは人間が考えて、あとはAIにお任せ』くらいの感覚で、発想を楽しめばいい」という――。
※本稿は、和田秀樹『60歳からは勉強するのをやめなさい』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。
■問題発見能力を磨くために必要な“12文字の言葉”
先の記事で『ドラえもん』の世界を貫く「こんなのあったらいいな~」の自由な発想力について取り上げたのを覚えているでしょうか。
問題発見能力を磨くには、まさに「こんなのあったらいいな~」のレベルから始めればいいのです。
みなさんは、当たり前に感じている日常生活のなかに、不便を感じることはありませんか?
そこにはどんな問題がありますか? こんなことはもっとラクにやりたいと思うことはありませんか?
自分の身のまわりでどのような「こんなのあったらいいな~」を見つけることができますか?
2015年にCEATEC JAPAN(IT技術およびエレクトロニクスの国際展示会)で発表され、世界中で話題を呼んだ全自動衣類折りたたみ機「ランドロイド」のニュースを覚えておられるでしょうか。
投入された衣類をAIで認識し、たたんで所定の位置に仕分けするというものです。
まだ衣類を洗って乾燥させるという機能は付帯していませんが、将来的には洗濯から収納までを可能にすることを目指しているそうです。
「人手をかけずに、衣類をたためたらいいな~」「ついでに洗濯から仕分けまで全部してくれればいいな~」という、「あったらいいな~」的発想に基づいて開発が進められた典型と言えるでしょう。
■手抜き願望が大きな発展につながることもある
たとえば、こんなものはどうでしょうか。
キッチンの冷蔵庫はうっかりしていると、いつ買ったものかわからない食材や、いつ開封したのかわからず、ふたが固まってしまった瓶詰調味料などがいくつも増えてしまいます。
それなら購入した食材を収納する際に、冷蔵庫自体が食材についているコードを読み取って購入日を記録したり、開封日を記録して液晶に表示する。
これならお金も食材も無駄にすることなく、使いきることができるようになるかもしれません。
さらに発展的に考えて、遠い土地で独り暮らしをする老親宅の冷蔵庫と子世帯の端末とでデータを共有し、食材購入サポートや健康管理につなげるということもあり得るかもしれません。
あるいは、スマホ・ガラケー一体型端末。
いつもスマホを使っていて思うのは、電話やメール機能の使い勝手は、いわゆるガラケーのほうがいい。
何でもスマホ1台に詰め込むから、トラブルの原因になるのではないか。
大事なときに、本来の機能である通話やメールがうまくできないことは誰もが経験したことがあるでしょう。
そんなところからあれこれ考え始め、オモテ面はスマホ、ウラ面はガラケーのような一体型のものを誰かつくってくれないかなぁというところに行きついたのですが、いかがでしょうか。
仲間内では結構、受けがいいアイデアなのですが。
いま例に挙げた「あったらいいな~」は、一見すると、手抜きの願望とか荒唐無稽な空想に思えるかもしれません。
しかし、思考を発展させるためには、むしろ手抜き願望でも何でもいいから、とにかく考えてみるという姿勢をバカにしないことです。
■のび太とドラえもん、AI時代に成功するのはどっち?
『ドラえもん』のなかで、のび太はつねに「こんなのあったらいいな~」「この難題を切り抜けるために、あんなのあったらいいな~」と考えています。
つまりのび太は問題発見者であり、要求をドラえもんに発注するクライアント。
対するドラえもんは、要求に応え、問題解決を担う技術者という位置づけになります。
さて、これからの時代、成功するのはのび太型とドラえもん型、どちらでしょうか。
ぱっと見は、四次元ポケットから次々に品を出す、ドラえもんのように思えるかもしれません。
しかし、優位に立つのはのび太型です。
ドラえもんは言わば「あなたの夢、叶えます」を生業にしているわけですが、そもそも「あなたの夢」がなければ失職してしまう。
このことからもわかるように、ものごとを生み出す源泉となる「わたしの夢」を見出せるかどうか、つまり問題発見できるかどうかは大きな問題です。
かつては日本は技術大国を名乗り、技術者視点でものを考える国でした。
ですから他国より技術力は優っていましたが、発想力では劣るということがよくありました。
あるいは、仮にいくらユニークな発想をしても、現代に比べれば実現する技術がまだ乏しく、結局、既存の技術で実現可能な発想にとどまることも多かったのです。
■「あったらいいな~」をどんどん形にしやすい時代
しかし、いまはAIの時代。人工知能はわたしたちが考える以上に、さまざまなことに対応し、人の発想を実現していきます。
そういう意味で、かつては技術者に相談しても、「そんなの無理」と却下されていたような「あったらいいな~」を、どんどん形にしやすい時代になりつつあるとも言えるのです。
言い換えると、発想と技術のギャップが相当に縮まってきているのです。
「まずはのび太が考えて、あとはドラえもんにお任せ」にならって、「まずは人間が考えて、あとはAIにお任せ」。
そのくらいの感覚で、発想を楽しめばいいとわたしは思います。
スティーブ・ジョブズという経営者は、こういうのび太型経営者の第1号と言えるかもしれません。
■顧客目線の「あったらいいな~」で成功したアート引越センター
実在の人物のなかで、「あったらいいな~」を次々と実現し、事業を拡大してきた方をひとり挙げるとすると、アート引越センター創業者の寺田千代乃さんが真っ先に浮かびます。
寺田さんは20代の初めに運輸業を営むご主人と結婚されました。
その運輸会社を母体として、1970年代半ばに、わが国の専業の引っ越し取り扱いサービス業の第1号であるアート引越センターを設立します。
このとき寺田さんの発想のもとになったのが、折しもオイルショックで仕事が激減していた状況下で、「自分たちにある車と運輸業の人材を活用してできることは何か?」ということでした。
実際、業務を始めてみると、寺田さんには引っ越し業がとても面白かったのだそうです。
アート引越センターでは、さまざまなお客さん目線のサービスを提案し続けてきました。
たとえば、利用者の年齢や生活形態ごとに特化した引っ越しパック、新居に運び入れる家具のクリーニング、それまで業者が土足で新居に入っていたのを改め、靴下を着用して行う作業スタイル。
こうしたものをはじめ、じつに細やかな発想で、お客さんが「こんな引っ越し業者さんだったらいいな」「こんなサービスがあったら助かるな」と思うものを次々に実現してきました。
それはまさに引っ越し取り扱いサービス業のフロンティアと言えるものでした。
■既存の知識にとらわれず、日常の問題から着想を得る
寺田さんは高校も大学も出ていません。
しかも、引っ越し業に関してはまったくの素人でした。
しかし、こうした経歴であったからこそ、既存の知識にとらわれずに、自らの日常感覚を大変有効に生かして考えることができた、と言えるのかもしれません。
さて、わたしも含め、男性は寺田さんから何を学ぶべきなのでしょうか。
たとえば、先ほど触れた清潔な靴下着用のサービス「クリーンソックスサービス」にしても、それまで完全な男性社会であった引っ越し業界では、土足に何の問題も感じていなかった。
そこへ寺田さんという女性が登場し、また、利用者に単身女性も増えてきたこともあって、「何で真っ新な新居に土足で上がるのかしら。
汚れるのはいい気持ちはしないし、床掃除の手間がまた増える」という問題が顕在化する。
そこで「じゃあ、きれいな靴下をはいて作業しましょうよ」と寺田さんは考える。
こうして、そこにある問題を発見し、利用者の「あったらいいな~」に共感し、形になったわけです。
男性なら、「引っ越し作業で新居が汚れても、そんなこと、しょうがないだろ」で終わっていたはずです。
■素直な願望で「消費を増やす発想のできる人」になれるか
わたしは常々、女性には男性がかなわない、独特の柔軟な発想力があると感じています。
また、「こうなりたい」「こんなものが欲しい」「こういうふうにラクをしたい」といった、素直な願望を抱くことができます。
こうした特性があるからこそ、消費社会の牽引役として、男性よりも重宝されるわけです。
男性はどうしてもものの見方、考え方が硬直しがちです。
多かれ少なかれ、男性は従来型の男性中心社会の発想が染みついています。
また、過去の知識の枠組みや前例に縛られがちです。
だからこそ、女性の発想に触れ、刺激をもらうことも、ときに必要だとわたしは思うのです。
ひとつ言えることは、男性社会的発想は、これからの時代、あまり役に立たなくなる可能性が高いのではないかということです。
少なくとも消費不足を解消するための消費を刺激するようなアイデアは、女性の感性と発想力なくしては、発展は望めないと言えるくらいです。
昔から、男性は生産する人、女性は消費する人だったわけですが、いまは消費が足りなくて生産があまっているのですから、生産性を上げるより、消費を増やす発想のできる人のほうが役に立つのです。
旧態依然の男性的発想に凝り固まっている組織(こういう組織は生産性を上げることばかり考えて、女性の消費者の視点をあまりもち合わせていません)は、衰退を免れないと考えるのが妥当でしょう。
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和田 秀樹(わだ・ひでき) 精神科医 1960年、大阪市生まれ。精神科医。東京大学医学部卒。ルネクリニック東京院院長、一橋大学経済学部・東京医科歯科大学非常勤講師。2022年3月発売の『80歳の壁』が2022年トーハン・日販年間総合ベストセラー1位に。メルマガ 和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」
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精神科医 和田 秀樹
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