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褒められて「いえいえ私など」と謙遜する人は要注意…管理職に抜擢されてメンタル不調に陥りやすい人の特徴

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プレジデントオンライン

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/simpson33

 

管理職になりメンタル不調に陥る女性には、どんな傾向があるのか。

 

精神科医で産業医の井上智介さんは「自己評価が低く、周りから評価されても『本当は能力が低いのに、周りをだましてしまっているのではないか』と罪悪感を持ったり、『いずれ能力不足であることがバレるのではないか』と不安にかられたりしてしまう『インポスター症候群』に陥るのは女性の方が多い。

 

そしてこうした人が、管理職になったことで大きなストレスを抱えるようになり、うつ症状を発症することがある」という――。 

 

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■管理職になったばかりの女性が陥るメンタル不調 

 

 毎年、ちょうど今ごろの7月、8月や、年末から年明けごろ、慢性的な疲労感や不眠、食欲不振などのうつ症状を訴える女性が目立つようになります。

 

話をよく聞くと、春の異動や秋の異動で初めて管理職になったというケースが少なくありません。

 

  「大した能力があるわけでもないのに、周りから過大評価されて管理職になってしまった」「周りからの期待に応えられていない気がする」「管理職としてチームを引っ張っていく自信がない」など、与えられたポストに自分の能力が追い付いていないのではないかという不安感が強く、それが大きなストレスとなって、うつ症状につながっているのです。

 

  周囲からの期待をプラスに受け止められれば、成長につなげられますが、マイナスに受け止めると、不安が大きくなります。

 

そもそも能力があるから抜擢されたわけですから、はたから見れば「その波にのって活躍したらいいのに」と思うのですが、周りの評価と自分自身の評価にギャップを感じて、不安が大きくなってしまうわけです。

 

 ■周りの評価を素直に信じられない  本当は高い能力を持っているのに、自己評価が低いために、周りから評価をされても素直に信じることができず、「本当は能力が低いのに、周りをだましてしまっているのではないか」と罪悪感を持ったり、「いずれ能力不足であることがバレるのではないか」と不安にかられたりしてしまう。

 

こうした、能力や実力があるにもかかわらず、自分を過小評価してしまう心理傾向は「インポスター症候群」と呼ばれており、周りをだましているという意識を持つので、「詐欺師」を意味する「インポスター」という名前がついています。

 

 インポスター症候群になりやすい人の特徴は、大きく2つあります。

 

  1つ目は、空気を読む能力が高い人です。周りをよく見ている分、周りによくできる人がいることも知っているので、自分が評価されても「もっとすごい人はいっぱいいる」と思ってしまいます。

 

本当は高い力を持っていても、視野が広いがために、比較する対象のレベルも高くなり、「自分なんてせいぜい並のレベルだ」と思ってしまうのです。

 

  2つ目は、完璧主義な人です。自分に求めるレベルが高く、完璧でないと気が済まない。求めるもののレベルが高く、いくら頑張っても満足できません。

 

周りから見ると、だからこそ高い成果を挙げていることも多いのですが、本人の自己評価は高くありません。

 

  謙虚でまじめな人が多く、「周りの期待に応えなくては」という意識も強いので、努力も厭いません。

 

ですから、周りからの評価を糧にして成長につなげることができれば、インポスター症候群もプラスに働くでしょう。

 

しかし、「せっかく持っている能力やポテンシャルを生かして、もう少し責任あるポストを担ったらどうか」と言われても、遠慮して断ってしまったり、周りからの期待に押しつぶされ、メンタルヘルスを損なったりすることもあります。

 

 ■「ジェンダーバイアス」や「企業文化」も関係する

 

  インポスター症候群は、女性が陥りやすいといわれています。

 

例えば男性が昇進した場合は「自分に能力があったからだ」と受け止めることが多いのに対し、女性の場合は「運がよかったから」「周りのサポートがあったから」と考える人が多い傾向があります。

 

  なぜなら、インポスター症候群は、本人の性格だけが生み出すものではなく、「ジェンダーバイアス」や「企業文化」も大きく関係するからです。

 

  「リーダーシップを発揮する役割は、男性が担うもの」「女性は、補佐的な役割を担うもの」というバイアス(偏った考え方や思い込み)はまだまだ根強く、それは男性だけでなく女性の中にも残っています。

 

今はさすがに、自己主張をしたり、自分に自信を持っている様子を見せる女性が、表立って批判されるようなことは減っていますが、それでも、女性がこうした様子を見せることに対する、ネガティブな反応はなくなっていません。

 

女性のインポスター症候群は、社会のジェンダーバイアスが生み出したものでもあるのです。

 

  こうしたジェンダーバイアスをなくすための取り組みは、広がってきてはいますが、企業によっては、色濃く残っているところもあります。

 

年功序列や長時間労働が当たり前になっていて、管理職も年次が上の男性ばかりだったり、女性や若手の意見を吸い上げようという空気がなく、「出る杭は打たれる」という雰囲気の会社では、インポスター症候群が生まれやすくなります。

 

■褒められたら感謝で返す

 

  インポスター症候群の人は、目立つことや自己主張をすることが苦手なことも少なくありませんが、管理職など責任のあるポストに就く場合は、避けられない部分があります。

 

ですから、私はこうした人たちには、2つのアドバイスをしています。

 

  まず、褒められたら感謝の言葉を返すことです。

 

  インポスター症候群の人は、目立つことが苦手なためか、褒められるのが苦手です。

 

褒められると真剣に謙遜するので、謙遜するのをやめるところから始めましょうと伝えています。

 

  褒められた時にあまり強く謙遜すると、褒めた側にしてみれば否定されているように感じて、不快になることもあります。

 

ですから、褒められたら「ありがとうございます」と感謝し、評価してもらったことを素直に受け入れる練習をするのです。

 

 ■自己主張する練習をする

 

  2つ目は、自己主張をする練習をすることです。

 

  これは、経験を積むしかありません。

 

最初は、会議や打ち合わせで意見を述べるところから始めましょう。

 

  自分の意見や質問を、必ず1つは述べることを目標に会議に臨みます。

 

どうしても難しい場合は、誰かほかの人が出した意見について深堀りする質問をしたり、今話題になっていることを確認する質問をしたりします。

 

  たとえば「このプロジェクトの進行状況を、もう少し具体的に教えていただけますか」など、今議題に上がっているテーマについて確認したり、深堀りしたりする質問であれば、それほど難しくはなく、ほかの参加者にも有用な情報になるはずです。

 

  口頭で意見や質問を述べるのは、緊張してしまってハードルが高いという人は、事前にメールなどで提案しておいてもいいでしょう。

 

例えば、「次回の定例ミーティングでは、こんな議題を取り上げてほしい」などの提案を、事前に送っておくなどです。

 

  ポイントは、「自分から発信する」ということです。

 

誰かから「次回の定例ミーティングの議題を送っておいて」と指示を受けて発信したり、質問されたことへの回答を発信するのでは、自己主張の練習にはなりません。

 

自分から引き金を引いて発信する機会を増やして慣れていくことで、人前で発言することに慣れていきます。

 

  こうして、自己主張をして周りから受け入れられるという小さな経験を重ねてみてください。

 

■自己主張の練習を支援する

 

  部下に、インポスター症候群の傾向がある場合は、どう対応したらよいのでしょうか。

 

  周りの人、特に上司は、以下の点に気を配るとよいでしょう。

 

  まず、支援的かつ肯定的な声掛けをしてあげてください。

 

そして、自己主張をする練習ができるよう、促してほしいと思います。

 

  例えば、会議などでは、もちろん本人が自分から手を挙げるのが理想ですが、最初のうちは、「○○さん、意見/質問はありますか?」などと、パスを出してあげましょう。

 

そして、そこで挙がった意見や質問に対して、支援的で肯定的な声掛けをすると、自己主張をすることに対する安心感や自信につながるはずです。

 

 ■相談の機会を作り、自分の体験談を話す

 

  2点目は、1on1を設定するなど、相談の機会を多く持つことです。

 

  インポスター症候群の女性は、自分から相談を持ち掛けることが苦手な人が多いです。

 

相手の時間を自分のために割いてもらうのは申し訳ないと遠慮してしまっていたり、相談することは自分の力不足を露見することになり、期待を裏切ってしまうのではないかと考えていたりするためです。 

 

 ですから、最初のうちは、上司のほうから1on1の時間と場所を決めるなどして、相談にのるようにします。たとえば、「毎週水曜日の3時からは進捗状況を聞かせて」などです。

 

  3点目は、上司自身が管理職になったばかりのときにどうたったかという、体験談を話すことです。

 

  インポスター症候群の人は、周りの人と自分を比べて、自分の足りない部分にばかり目を向けてしまう傾向があります。

 

管理職10年目の上司と、今の自分を比べて、「私はあの上司のようにはできない」と、自信をなくしてしまったりするのです。

 

上司の方は、管理職としての経験が10年もあるわけですから、本当は比べても意味はないわけですが、なかなかそこには気付きません。

 

  だからこそ上司は、自分が管理職になったばかりのときは、どんな失敗をしていたか、どんなことに悩んだり不安を持っていたか、といった話をしてあげてください。

 

そうすることで、「上司にもそういうときがあったのか」「最初から完璧にやる必要はないんだ」と思えるようになると思います。

 

 ■「インポスター症候群」は会社の損失

 

  こうした上司や周りの人たちのサポートに加え、会社の社風を変えていくことも求められます。

 

  せっかく能力が高く、ポテンシャルが高いのに、インポスター症候群のせいで活かせていない人材があるとすれば、会社にとっても損失です。

 

  女性でも男性でも、能力のある人が評価されて昇進する。

 

性別や年齢、バックグラウンドに関わらず、良い意見をどんどん吸い上げていく。

 

ミスをしても一人で背負う必要がなく、普段からみんなでサポートし合う雰囲気がある。

 

こうした社風が広がれば、インポスター症候群で昇進を辞退したり、メンタルヘルスを損なったりする人も減っていくはずです。

 

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 井上 智介(いのうえ・ともすけ) 産業医・精神科医 産業医・精神科医・健診医として活動中。産業医としては毎月30社以上を訪問し、精神科医としては外来でうつ病をはじめとする精神疾患の治療にあたっている。ブログやTwitterでも積極的に情報発信している。「プレジデントオンライン」で連載中。

 

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産業医・精神科医 井上 智介 構成=池田純子

 

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