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なぜ一言目に「でも」と言ってしまうのか…話し相手をイラっとさせる人の「脳の問題点」
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※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu
人間関係を円滑に続けるにはどうすればいいか。
精神科医の伊藤拓さんは「無意識に余計な一言を言って相手を傷つけたり、イラつかせたりすることがある。
そういうときは、前頭前野の働きが低下しているので、まず、思ったことをすぐに口にしないことが重要だ」という――。
※本稿は、伊藤拓『精神科医だけが知っている ネガティブ感情の整理術』(ハーパーコリンズ・ジャパン)の一部を再編集したものです。
■ネガティブ感情を生む口グセ「6D3S」
誰かと会話をしている時に、相手の話し方のクセに気づいたことはありませんか。
「やっぱり○○だよね」「実は○○なんだ」「ええと、なんだっけ」など、本人は無意識に使っているので気づいていませんが、同じ言葉が頻繁に口から出てくる人は多いと思います。
もしかしたら私自身も、気づいていないだけでよく使っている言葉があるかもしれません。
こうした口グセとして、次のようなネガティブな言葉をよく口にする方もいます。
そうすると、考え方や行動もネガティブなほうに引っ張られていきがちです。
よく言われるネガティブな口グセが、次の「6D3S」です。
6D:「どうせ」「でも」「だって」「ダメだ」「どうしよう」「できない」
3S:「しょせん」「すべき」「しなければならない」
どの言葉も、その後に続くのは大抵ネガティブな言葉です。
会話の中でこの6D3Sを選んでいる時点で、ネガティブな会話のスパイラルに入ってしまっているわけです。
■ポジティブな言葉で思考も行動も前向きに
口グセは日々の習慣の中で身についていくものです。
そのことに気づけば、できるだけ使わないようにしてクセを直していくことは可能です。
「どうせ私にはできない」のような、自分自身を低く評価するような言葉をやめて、「きっとできる」「大丈夫、うまくいく」「なんとかなるよ」と、自分を励ますような言葉をかけてあげましょう。
ポジティブな言葉を口にすれば、次にくる言葉もポジティブなものが増え、思考や行動も前向きになっていきます。
一度ついてしまったクセは、すぐには直らないかもしれませんが、少しずつでも変えていこうと意識すれば、ポジティブな言葉が自然と出てくるようになっていくでしょう。
■「まだ半分もある」か「もう半分しかない」か
もし、友達から大好きなお菓子をプレゼントされて、半分食べたとします。
その状況を、あなたならどう表現するでしょうか。
「半分も残っている。まだまだ楽しめるな!」とワクワクする。
「もう半分しか残っていない。すぐなくなってしまうな……」とガッカリする。
同じ状況でも、ポジティブにとらえる人もいれば、ネガティブにとらえる人もいます。
人によって感じ方は様々ですよね。 こうした考え方の傾向は、選ぶ言葉にも影響されるようです。
すでに紹介した6D3S(どうせ・でも・だって・ダメだ・どうしよう・できない・しょせん・すべき・しなければならない)のネガティブな口グセ以外にも、生活の中のありとあらゆるシーンにネガティブな言葉は存在します。
それらを使うことで、脳をよりネガティブな思考にしやすくしているのです。
■他人への言葉も「自分の事」と考えてしまう
しかも、その言葉が他の誰かに向けられた言葉だとしても、脳は同様に反応します。
「そんなことをしてはダメだよ」 「ちゃんとできてないよね」 「あの人、嫌な人だよね」
など、誰かとの会話の中で出てきた言葉であっても、口から発した言葉は耳を介して自分の脳に届き、自分に言われた言葉だと認識して反応します。
それが自分自身の感情にも影響を与えてしまうのです。
ネガティブな言葉は誰かに対して発しても、自分に対して発しても、いいことはないのです。
ただ、この脳の反応にはメリットもあります。
ネガティブな言葉が脳に伝わってしまうように、ポジティブな言葉も同じように脳に伝わります。
つまり、できるだけポジティブな言葉を使うことで、ポジティブな感情を引き出していくこともできるのです。
ネガティブな言葉をポジティブな言葉に変えていくために、ここでは5つのポイントをご紹介しましょう。
■「人は人、自分は自分」と切り離す
➀ 人と比べない
「あの人のほうが……」と人と比べようとした時点で、「それに比べて私は……」と思考がネガティブな方向に向きがちです。誰かと比べようとしている自分に気づいたら、「人は人、自分は自分」と切り離して考えるようにしましょう。
➁ 過去を引きずらない
うまくいかないことがあった時、以前の失敗した記憶などと結びつけて考えないようにしましょう。
「前も失敗したから、今回も失敗するかも」「結局、いつもうまくいかないよね」と、最初から諦めてしまう必要はありません。
前回失敗したからこそ、今回は失敗を回避できるかもしれないですよね。
「たくさん練習したのだから大丈夫」「今を楽しんでいこう」と気持ちを切り替えていきましょう。
■仕事の失敗を教訓にする思考法
➂ 受け身で考えない
自分に自信がなく、自己肯定感の低い人は、物事に対して受け身になりがちです。
相手の態度が気になって「嫌われたらどうしよう」「うまくいかなかったら困る」とネガティブな方向に考えてしまうことが多いと思います。
それが言葉にも表れてしまうのです。
人に「嫌われたくない」というのは、「相手といい関係を築きたい」ということでもあります。
「嫌われないように」ではなく「もっといい関係になろう」というポジティブな言葉で考えてみてください。
④ いいところに目を向ける
冒頭の「お菓子がまだ半分ある」と「お菓子はもう半分しかない」の違いのように、何事も考えようです。
つまり、誰でも目の前の出来事をポジティブにとらえることはできるのです。
たとえば仕事でミスをしても、「今気づけてよかった」「こういう落とし穴もあるとわかった。次回から気をつけよう」と考えれば、失敗も教訓になります。
友達と喧嘩をしたことも「本音で話し合うことができた」と思えば友達との絆が強くなりますし、「私のことをそんなに考えてくれていたのだ」と、感謝の気持ちも出てくるでしょう。
ネガティブに自分を追い詰めていくよりも、いいところを探して目を向けたほうが状況を楽しむことができるのではないでしょうか。
■日本人は「ありがとう」を口グセにすべき
⑤ 感謝する
「ありがとう」と言われて嫌な気持ちになる人はいないでしょう。
そして、うれしそうな相手を見れば、自分自身もうれしくなるものです。
ささいなことにも感謝の気持ちを持ち、「ありがとう」としっかり伝えることで、人間関係がスムーズになってポジティブな気持ちになれると思います。
英語圏の人たちは「サンクス(ありがとう)」とよく口にしますが、日本人ももっと「ありがとう」を言葉にして伝えてもいいかもしれません。
いかがでしたか。
物事のとらえ方は1つではありません。
少し角度を変えれば、ネガティブなこともポジティブにとらえることができます。
何気ない日常にも、ポジティブな言葉を使う機会はたくさんあります。
言い換えの練習をしていくうちに、だんだん脳がポジティブな思考をするように切り替わっていくでしょう。
■なぜ、怒りを買う人は常に一言多いのか
相手を傷つけるつもりではないのに、つい余計なことを言ってしまう。
思ったことが口に出てしまい「なんで、あんなことを言ってしまったんだろう」と後で落ち込んでしまう。
そんな経験がある人も少なくないと思います。
悪気があったわけではなくても、言われた相手は腹を立て、その後の付き合いがぎくしゃくしてしまうこともあります。
余計な言葉が口から出てしまうのは、前頭前野の働きが低下していて、扁桃体の抑制が甘くなっているからです。
前頭前野は、脳の中でも社会性やモラル、相手の感情理解などと関係の深い部位です。
本来であれば「ちょっと待て」と扁桃体の暴走を抑えてくれるはずですが、そのコトンロールが利かない状態になると、扁桃体で生まれた感情のままに、パッと言葉が出てきてしまうのです。
自分が人から言われて面白くないことは、相手にとっても不快でしょう。たとえば、次のような言葉を無意識に使っていないでしょうか。
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・だから言ったでしょ。
・こんなことは言いたくないけれど……。
・いつもそうだよね。
・~だね。でも……。
・大丈夫?
・頑張って!
・はいはい、ごめんごめん。(同じ言葉を繰り返す)
・思ったより~だね。
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など、シチュエーションによってもさまざまな言葉があります。
■思ったことはすぐに口にしない、が鉄則
特に「大丈夫?」や「頑張って!」は、その時の状況によって相手の受け取り方にも違いがあります。
自分としては相手をねぎらい、応援するつもりでかけた言葉でも、相手が目一杯頑張っているような状況では、「こんなに頑張っているのに、信用してもらえないの?」「もっと頑張らないといけないの?」とストレスを感じさせることもあります。
言葉というのは難しいものですね。
人の怒りを買うような状況を回避するためには、まず、思ったことをすぐに口にしないこと。
「こう言ったら相手はどう思うだろう」と、相手の気持ちに思いを馳せることで、余計な一言を言わずにすみます。
そして、言うか言わないかをジャッジできるよう、ゆっくり話すようにするといいでしょう。
また、同時に扁桃体が勝手に走り出していかないように、前頭前野の働きを整えることも大事です。
前頭前野のコントロールが利かないのは、セロトニンが不足しているせいだと考えられます。
脳内のセロトニンは、ストレスを受けているとどんどん消費されてしまいますし、ストレス以前に体内で作られるセロトニンの量が少ない可能性もあります。
どちらの場合でも、食事や運動、日光浴などでセロトニンの量を増やすように心がけることが大切です。
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伊藤 拓(いとう・たく) 精神科医 東京都西東京市出身。東京大学理科二類(薬学部)を卒業したのち、医師を目指して横浜市立大学医学部に再入学。卒業後、平成5年に医師免許、平成10年に精神保健指定医資格を取得。現在は東京都足立区の大内病院勤務。これまでに精神科医としてのべ10万人以上を診てきた。著作に『精神科医が教える後悔しない怒り方』(ダイヤモンド社)、『精神科医だけが知っている ネガティブ感情の整理術』(ハーパーコリンズ・ジャパン)がある。
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精神科医 伊藤 拓
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