【以下ニュースソース引用】

NHK受信料を「当確速報」のために使い込む…「投票日だけ本気を出す」マスコミの選挙報道に抱く強烈な違和感

 

プレジデントオンライン

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/segawa7

 

選挙の際によく見るのが、新聞・テレビの「当選確実」という速報だ。

 

メディアコンサルタントの境治さんは「速報のスピードを競い合うマスコミの選挙報道は時代遅れだ。例えば、NHKは速報をいち早く流すために、なけなしの受信料をつぎ込んでいる。

 

大事なのは、『当確』を速報することよりも、投票日前に候補者の主張や人となりを伝えることではないか」という――。 

 

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■「当確」の根拠はメディアの独自情報

 

  東京都知事選挙の投開票日を迎えた。夜の速報番組ではいつも通り、大手メディアが「当確」と報じて候補者がバンザイするのだろう。

 

過去の選挙でも、20時の投票締め切りと同時に「当確」となった候補者が、支援者たちと喜ぶ姿が報道されてきた。

 

  しかし、まだ開票作業が終わっていないのに、「当確」が出たらテレビで候補者がバンザイするというお定まりの光景は、よく考えたらおかしくないだろうか。

 

  そもそもこの「当確」は、各メディアが独自に得た情報を基に出す(当確を打つ、ともいう)もので、公式なものではない。

 

だから、過去にも「当確」が出た候補が落選したという「誤報」も各社が出している。

 

  最近も、共同通信が6月16日の沖縄県議会議員選挙で完全に誤った「当確」速報を出したと問題になった。

 

「米軍基地の辺野古移設反対派の過半数議席獲得が確実になった」と報じたのだが、実際の結果は賛成派と同数だった。

 

確実になったと報じた内容が不確実だった。

 

  ネットで怪しい勢力によるフェイクニュースが問題になっているのに、立派な報道機関である共同通信が誤報を出すとは情けない話だ。通信社の誤報は各新聞に掲載される。

 

この時も約20紙が掲載したという。

 

  誤報だったことの「おわび」も掲載されたが、今後どう改善していくのか、共同通信として今後も当確報道をしていくのか、説明しなくていいのだろうか。その信頼はかなり失われたと思うのだが。

 

 ■誤報を出すなら判定自体をやめたほうがいい

 

  全国紙や通信社が当確判定をする対象は主に衆院選・参院選・全国の知事選だが、今回の沖縄県議選のように、重要な争点を抱えた地方選挙では当確判定を行うことがある。

 

  筆者が得た情報によると、今回の共同通信の誤報は、開票所で候補者の票をスマホで打ち込む際に、間違って別の候補者の枠に入力してしまったことが原因だった。

 

スマホで打ち込むんかい!

 

 それは間違いも起こるだろう。ふだんの記事ではダブルチェックがあるはずだが、このやり方では、現場の担当者が打ち間違ったらそのまま誤報になってしまうではないか。

 

  こんな大雑把なやり方で出した「当確」記事が数多くの新聞に掲載される。

 

このやり方を見直せないなら、共同通信は当確判定をやらないほうがいいと思う。

 

共同通信の「当確」は、もう信じられない。

 

■アメリカ大統領選をめぐる歴史的大誤報

 

  共同通信だけでなく、当確報道の誤報は過去に例が限りなくある。

 

大きなところでは、2000年のアメリカ大統領選で起きた誤報がある。民主党のアル・ゴア氏と共和党のジョージ・W・ブッシュ氏がギリギリまで競り合った。

 

最後にフロリダ州の結果でどちらが勝つか決まるという時、アメリカの複数のメディアがゴア氏に当確を出したのだ。

 

  この時のことは覚えているが、ゴア氏が大喜びしてブッシュ氏に電話したことも伝えられた。

 

それが間違いだったと知った時、この時間は何だったんだ?

 

 と日本の視聴者としても困惑した。

 

  もちろん、報道機関が事前の各候補者の情勢予測を報じることは、有権者にとっても有益だ。

 

投票の判断材料になる。だが当確判定を各メディアが競うように報じるのはどうかと思う。

 

あくまで予測の範疇なので、100%はないはずだ。

 

だがあたかも間違いないように報じている。

 

「当選確実」とメディアが報道するのはどこか間違っていないだろうか。

 

 ■判断材料を集めるには莫大な労力がかかる

 

  そして、当確判定を出すためには大変なエネルギーと予算をかけて情報を収集する必要がある。

 

各メディアの経営が厳しくなっているこの時代に、莫大な労力をかけてそれぞれ当確判定をする必要がどれだけあるだろうか。

 

  筆者は「NHKの当確判定手法」について情報を得た。当然ながら、当確を出すためにはいくつもの情報が必要になる。

 

NHKの場合、過去の得票データ、予想投票率、各陣営への情勢取材、街頭アンケート、期日前投票出口調査、投票当日出口調査が元データになる。

 

  選挙当日にはこれらを統計的に処理し、選挙の専門部隊が協議した上で明らかな差があれば、開票速報番組やテロップで20時に「当確」を出す。

 

ここまではいいとして、その先には問題を感じる。差が出ていなければ、開票所での票を読むことになる。

 

  双眼鏡で票の仕分け作業を目視して数える「手元票カウント」(通称バードウォッチング)、選挙管理委員会(選管)が公式発表する前に開票所で確認できる「ウラ票」、さらには選管幹部との事前の関係構築によりリークされる「ウラウラ票」などを積み上げて判断する。

 

■前時代的な取材に受信料が使われている

 

  なんとも莫大なエネルギーをかけていることがわかる。

 

そしてイメージより非科学的に思える。もちろん独特のノウハウが継承されてきたのだろうけれども、前時代的だ。私には20世紀のノウハウに思える。

 

やっているみなさんからすると「いやいや、かくかくしかじかの確証があって当確を出してます!」と言いたいだろうが、なんともご苦労さまなことだ。

 

  ほとんどの選挙が、翌日には選管が発表した公式な「開票結果」が出るのに、選挙特番のためにこれだけの労力を注ぎ、私たちの受信料を使っていると思うと、悲しくなる。

 

  実は、NHKは前田会長時代に効率化を図るべく、某メディアグループと出口調査の一本化などコスト削減策を協議し、ほぼ合意に達していたらしい。

 

稲葉会長に代わり上層部が一新された際、なぜか新執行部はこの合意に激怒し白紙に戻ったという。

 

  その後、NHKは当面赤字が続き1000億円支出を削減する経営計画を発表したのに、もったいないことをしたものだ。

 

現執行部が時代についていけてないことの証にもなる話だ。当確報道に血道を上げるのはもう時代遅れなのに。

 

 ■非公式情報で「当選した」と喜ぶ候補者もおかしい

 

  そして筆者が疑問なのが、大手メディアが「当確」を打つと、候補者がバンザイすることだ。

 

これはまったくもっておかしなことだと思う。

 

  各メディアが勝手に「当確」を打つのは、まあいい。

 

それは「私どものメディアは、この候補者が確実に当選すると判断しました」ということだろう。

 

なぜそれを以ってして、当選したことになっているのか。

 

当選したかを判断するのは、最後まで開票したか、特定の候補者の得票が残りの票が全部別の候補の得票だとしても十分多いと言える時で、いずれも選管が判断することだ。

 

  選管の発表を基に各メディアが報道するのが正しいのではないか。

 

私が言っているのは現実見てない「正論」ではない。

 

 

民主主義のシステムとして、行政機関ではないメディアが出した当確を「当選」と同等に扱うのはおかしい、ということだ。

 

  開票結果が出る前に勝手に「当確」を出した候補者に「当選したお気持ちをお聞かせください」とマイクを向けるのは、メディアの役割として間違っていると言いたいのだ。

 

■国民にとって本当に大事な情報を届けてほしい 

 

 共同通信だけでなく、NHKもここで当確報道を見直さないだろうか?

 

 1000億円も支出を削減するのに、選挙のたびに莫大な費用をかけて当確打ちを行うというのか?

 

 一晩国民をお祭り気分で盛り上げるための選挙報道を変わらず続けるのだろうか。

 

  民放のみなさんも当確打ちをいつまで続けるのだろう。

 

経営的にどんどん厳しくなっているご時世に、翌日になれば公式にわかることを、経費をかけて双眼鏡で知ろうとする意味は何なのか、かけた経費分視聴率が高くなるのか、考え時ではないだろうか。

 

  選挙報道で大事なのは「開票祭り」より、投票日前の各候補の主張や人となりを伝えることではないか。

 

以前はテレビで候補者の討論をやっていたが、最近はなくなった。

 

放送法を盾に「公平性」を問われ、最近は各党が候補者の出る時間を測って放送後にクレームをつけることもあるという。

 

だからめんどくさくなったのだ。

 

  クレームなど気にせず、投票日までに国民に十分情報を伝えるのがメディアの役割だと思う。当選かどうかの判定は選管に任せて、事前の報道に力を注いでほしいものだ。

 

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 境 治(さかい・おさむ) メディアコンサルタント 1962年福岡市生まれ。東京大学文学部卒。I&S、フリーランス、ロボット、ビデオプロモーションなどを経て、2013年から再びフリーランス。有料マガジン「MediaBorder」発行人。著書に『拡張するテレビ』(宣伝会議)、『爆発的ヒットは“想い”から生まれる』(大和書房)など。

 

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メディアコンサルタント 境 治

 

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