【以下ニュースソース引用】
精神科医が教える<そのままの自分>を生きるために大切なこと。幼少期に川崎病に罹患「みんなと違う」ことが嫌だった
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厚生労働省の「令和4年 労働安全衛生調査」によると、仕事や職業生活で強い不安やストレスを感じると答えた人の割合は82.2%で、前回の調査から約3割も増加したそう。
悩める社会人が増えているなか、精神科医の藤野智哉先生は「『がんばらないと』と思う前に、いちばん大切にしなければならないのは自分」と話します。
そこで今回は、藤野先生の著書『「そのままの自分」を生きてみる 精神科医が教える心がラクになるコツ』から、心がラクになるメッセージを一部お届けします。
【書影】ちょっとだけ「そのままの自分」を生きるための、45のメッセージ『「そのままの自分」を生きてみる 精神科医が教える心がラクになるコツ』
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◆「変わろう」という気持ちの言葉
精神科医として働いたり、SNSや講演で多くの人とかかわったりするなかで、こうした言葉をよく聞きます。
「このままじゃダメ」「変わらなきゃ」「もっとがんばらないと」「成長しなきゃ」といった「変わろう」という気持ちの言葉です。
たとえば、仕事で失敗をしたときに「このままじゃダメ。がんばらないと」とか、人間関係で悩んだときに「いいかげん変わらなきゃ」みたいな思いをもってしまう人がいます。
あるいは、子育てが思いどおりにいかないときに「ちゃんとした親にならなきゃ」みたいなあせりを抱えてしまう人です。
自分の至らない点を改善しようとすることや、少し背伸びをして努力すること、成長しようとがんばることもたしかに大事だとは思います。
だけど、自分につらい、しんどい思いをさせて、自分をすりへらしてまで本当にすべきことでしょうか。
僕らは日々の中で「当たり前」とか「普通」「常識」という言葉で表されるルールや価値観に必死で合わせようとして生活しているところがあります。
もちろん社会の一員として守らなきゃいけないルールはあるけれども、誰がつくったかわからない謎なルールや枠組みが多すぎますよね。
そんな謎でいびつな枠組みにでも、なんとなく「無理してでもはまらなきゃ」と思ってやっている人も少なくないと思うんです。
でもね、そこに無理してはまろうと思ったら、自分が歪んでしまうんですよね。
もちろん柔軟性のある人もいるかもしれないけど、そんな人は多くない。
だから、無理してはまろうとするより「そのままの自分」を大切にすることも考えてみてほしいのです。
◆環境が変われば、しんどくなるのは当たり前
つい人と比べてしまって「あの人みたいに、いつも明るく穏やかに仕事できたらいいのにな」なんて落ち込む人、SNSの発信ですごい人を見ては、「こんな私のままじゃダメだ……」とため息をついてしまう人もいます。
今って、SNSを開けばすぐに他人と比べることができるうえ、昔から変わらず、あれこれよけいなお世話を言ってくる人たちもいて。
「自分は自分でいい」という気持ちが揺らぎやすかったりします。
そんななかで「そのままの自分では生きられない」というのもわかります。
でも、「自分らしさ」をなくしてまで、自分の本当の気持ちや、本来の特性を置き去りにしてまで、変わったりしなくていいのではないでしょうか。
他人を目指した先に理想の自分はいません。 転職や異動など職場の変化、出産や引っ越し、別れなど生活環境や人間関係の変化があって、「新しいところで適応しなきゃ」みたいに感じる人も少なくないと思います。
「新しい職場に早く慣れて、仕事も覚えなきゃ」「仕事も育児もちゃんと両立して、迷惑かけないようにしないと」などとがんばって、まわりに合わせよう、状況に適応しようとする人たちです。
職場や周囲の環境に合わせよう、なじもうとすることも大事だと思いますが、そんなときは「変わらなきゃ」とあせらないで、まずは疲れたり、しんどくなっている体や気持ちのケアのほうを先にしてみてほしいのです。
大好きな人との結婚や望んだ会社への転職、昇進など、うれしいことやおめでたいことであっても、環境変化はストレスになったりするものです。
ましてや望んだ場所ではなかったり、苦手なタイプの人が上司になったりした場合、親しい人とのお別れなどで大きく環境が変化した場合は、さらにストレスの負荷が大きくなったりします。
今までとは大きく環境や状況が変わるのですから、心も体もしんどくなって当たり前なんですよ。
心身のケアができて、落ち着いたときに、それでもあらためて「変わろう」と思えたのなら、変わればいいんじゃないでしょうか。
「自分を変えよう」とすることも大事だけど、「自分をケアする、いたわる」ことも大事にしてみてほしいなと思います。
◆「変わる」ことはとても大変
そもそも「変わる」ってけっこう大変です。
慣れている仕事をするより新しい仕事をするほうが疲れたり、いつもの道を歩くより新しい街を歩くときのほうが緊張したりします。
「変わる」ってとてもエネルギーがいるし、疲れることなのです。
それにね、「変わらなきゃ」とか「このままじゃダメ」って感じるときは、その言葉の裏には、こんな気持ちが含まれていたりします。
・今の自分が嫌い
・今の自分は正しくない
・今の自分は何かが足りない
自分を否定する気持ちがあるんですね。
だから「変わりたい」と思えば思うほど、自分の否定につながってしまって、なんだか苦しくなってしまうってこともあったりするのです。
僕は「無理して変わろうとしなくていいよ」って伝えたいです。
無理して変わろうとするよりも、弱い自分、つらい自分、しんどい自分、できない自分、ポンコツな自分、すぐ弱音を吐く自分、そのまま全部ひっくるめて「そのままの自分を大切にする」ことを意識してみてほしいなと思うのです。
◆「変わりたい」という気持ちも大切
一方で「変わりたい」という気持ちも、もちろん大切です。
今がうまくいっていなかったり、不足していると感じる部分があって、変わることでうまくいくようになるのならうれしいことですよね。
もしも今、ちょっとだけでも変わりたいな、前に進みたいと思うなら……やっぱり「今の自分」をめちゃくちゃ大切にしてください。
失敗したり、うまくいかないことがあっても、「自分が自分のいちばんの味方でいてほしい」って思います。
自分の心も体もケアして、いたわって、大切にしてあげてほしいのです。
そのうえで、心身ともに整ってフラットな状況になったら、「うまくいかない自分」や「うまくいくためには何が大切か」に向き合ってみればいいのではないでしょうか。
そんなときに、自然と無理なく変わっていけたりするものですよ。
実は、こんなことを話す僕自身にも、覚えがあるのです。
僕は幼いころに川崎病という病にかかり、その後遺症で心臓にこぶができて、激しい運動ができずにいました。
小学生のときにプールに入ったり、サッカーをしたり、長距離走ができなかったのです。
そのころは、とにかく「みんなと違う」ことがイヤで、「そのままの自分」を受け入れられずに悲しい思いもしました。
けれども、「こんな自分はダメなんだ」と自己否定にならなかったのは、「できないのは『僕のせい』ではなくて、『病気のせい』なんだ」ときちんと原因と向き合ってきたからだと思います。
「なんとなく自分のせい」にせず、あせらずに原因と向き合って、「できない自分」を受け入れてきたからだと思います。
だから、別に泳げなくても浮輪を使えばいいし、そもそもやりたくもない長距離走まで他人と同じを目指さなくていい、と思える自分に出会えました。もちろん時間はかかりましたが。
◆「そのままの自分」を生きるためには
「そのままの自分を生きる」ためには、あまり気合を入れすぎずに、あせらずにゆるりと肩の力を抜くことも大切じゃないかなと思います。
いきなり「そのままの自分を生きよう」と言われても、全部の自分をありのまま、そのままさらけ出すっていうのは怖いし、どうしたらいいのかわからないという人もいるでしょう。その気持ちもわかります。
だから、「ちょっとだけ、そのままの自分を生きること」「そのままの自分を生きてみること」というのをまずは提案したいな、と思いました。
「変わらなきゃ」って思ったときは、「このままじゃダメ」って思ったときは、ちょっと落ち着いて。
ベッドでもソファでも、ごろんと横になってみて。
少しだけ「そのままの自分」を見せちゃダメかを考えてみてください。
そのままの自分で生きられない場面やタイミングもあると思います。
時にはまわりに合わせたり、会社や世間のルールを守りながら、常識や普通を気にしながら生きなければいけないこともあると思います。
でも、やっぱり弱い自分やポンコツな自分、できない自分、凹む自分、そんな自分を「これも自分だなぁ」とありのままそのまま受け止めて、「そのままの自分」を生きることも大切にしてみてほしいなと思うのです。
※本稿は、『「そのままの自分」を生きてみる 精神科医が教える心がラクになるコツ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。
藤野智哉
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